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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第72回「旅立ち前の酒もまた美味し~新橋&蒲田編」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第72回「旅立ち前の酒もまた美味し~新橋&蒲田編」である。


はじめに

東京は、ひとり旅への中継点だ。寝台特急に乗ったり、早朝出発に備えて前泊したりと、立ち寄る機会が圧倒的に多い。旅先へ向かうほんのちょっとの時間・・・それは飲み歩きタイムとなる。ささやかな旅の「前祝い」といったところか。

今回は2カ所紹介しよう。一つは2010年にサンライズ瀬戸号に乗るために立ち寄った新橋、もう一つは2012年に羽田空港最寄りの蒲田で泊まった時の夜酒。いずれ劣らぬ東京のディープタウン。どっぷり腰を落ち着けたいけど、前祝いだからなあ(苦笑)

飲み過ぎに注意しながら、出向くとするか。

新橋駅前ビル「圭」~美人店員についつい?

四国への旅行で久々に寝台特急サンライズ瀬戸号に乗る。東京駅は午後10時発。タイムリミットまではまだ余裕がある。乗る前にちょいと一杯といきたいところ。せっかくだから2駅先の新橋へ繰り出そう。

新橋駅前ビルの立ち飲み「圭」。ここにしよう。

実はビルに来る前、近くの銭湯「金春湯」でひと風呂浴びてきている。寝台特急に乗るので、先に風呂に入っておきたかったからだ。それゆえ、口開けには何を置いてもビール。風呂上がりからは少々時間が経っていても、一口目はやはり美味い。

肴にはオニオンスライス、アジフライ。これもまたビールに合う。前金のキャッシュオンデリバリーなので、安心して飲んでいられる。おまけに女性店員がとびきりの美人というのも、いいじゃないか。

美人店員につられたわけではないけど、追加で相良平六という芋焼酎とマグロのユッケを注文。ついつい長居をしたくなってしまいがちだが、あまり店員をジロジロ見るのも感じが悪いし、飲み過ぎるのはもっとマズい。
引き上げるとするか。

新橋駅前ビル「圭の家」~オリンピックで盛り上がり

もう一軒、続いても立ち飲み「圭の店」に行く。先ほど寄った「圭」と関係がある店らしいが、詳しくは分からない。一人で切り盛りしているママさんに聞けば分かるのだろうが、一見の通りすがりなので、どっちでもいいや。

というわけで、ハイボールと宇和島ちくわの天ぷらを注文し、ミニテーブルの一角に陣取ってしばし飲む。オープンスペースなので客同士の距離も近いうえに、バンクーバー五輪のフィギュアスケート中継を放送しており、話題には事欠かない。

五輪談議に花が咲いているうちに、芋焼酎2杯もおかわりしていた。

タイムリミットが迫ってきた。せっかく話が盛り上がっているのに、去るのは惜しい。でも、四国が待っているじゃないか。後ろ髪をひかれる思いで店を後にするのだった。
(新橋編おわり)

京急蒲田「にこまる」~3種類のお通しから選べる店

続いては蒲田での前泊飲み歩きを書こう。

この時は北海道へのひとり旅で、羽田空港から朝一番の飛行機に乗るため、蒲田に宿を取った。アクセスに京浜急行を利用するので、京急蒲田駅近くのビジネスホテルに泊まった。当然、飲み歩くのも京急蒲田界隈となる。

この界隈、一昔前はディープゾーンだったと言われている。その名残りのような小さい酒場が軒を連ねるエリアがあった。すでに営業している店もある。まるで掘っ立て小屋っぽい超地元御用達かつ超ディープな酒場だ。

外から見ただけだが、カウンター席に座ると背中は壁に引っ付いてしまうほどの狭さ。しかも、すでに地元客で満席っぽい。こりゃあ、さすがに一見ではムリだぞ。

というわけで、一見でもスッと入れる店にしよう。

立ち飲み「にこまる」というあか抜けた感じの酒場をチョイス。若い兄さん店員で活気がある。ビールを注文すると、お通しは3種類から選べるという楽しい趣向。ならば、ナスのヒスイ揚げをいただこう。

おや、珍しい「沢蟹の唐揚げ」がある。これは注文するしかない。すると兄さんは、活きた沢蟹に衣を絡め、そのまま油に放り込んだ。これは豪快。カリッと揚がった沢蟹は野趣あふれていて美味い。

おかわりをいただこう。「梅ちゃんサワー」が面白そうだ。当時放送していたNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」がネーミングの由来。梅リキュールの酸っぱさがいい。串もののタン、鳥皮、テッポウと一緒にいただいた。

京急蒲田「権兵衛」~ディープでも居心地いい酒場

続いては外見からして、いかにもディープな酒場をチョイスする。「権兵衛」という大衆酒場である。百戦錬磨の私でも入るのには一瞬ひるむ。ただ、吉田類さんが訪れた店という事前情報があり、それなら大丈夫だろう。

開き戸をガラガラ・・・目の前には雑然とした店内。

どこがどうと表現するのは難しいのだが、つまり食材から何から置きっぱなしの店なんだな。ひょっとすると、かなり手ごわい店かもしれない。

身構えていても仕方がないので、まずはホッピーをいただこう。ナカ、つまり焼酎が氷ギシギシのコップになみなみと入っており、ホッピーを入れるスペースが無いほど。下町の大衆酒場らしいぞ。名物の煮込みを頂戴しながら、しばし店の雰囲気に身を任すか。

ご常連はほぼ一人酒で、思い思いに飲みながら、客同士、さらには店の女将さんや姉さんと駄法螺(だぼら)を吹いている。おそらく、みんなが常連の顔なじみなのだろう。ひょっとすると一見客は私一人かもしれないな。

ナカを追加したついでに、冷奴もお願いした。すると姉さん、パックの豆腐を目の前で切り出すではないか。おいおい、せめて客に見えないところでやってほしいなあ。まあ、それもまたディープ酒場っぽくていいのかな。

ホッピーをしこたま飲んで酔っ払った。そろそろお勘定とするか。明日の起床は早いし、旅行はまだ始まってもいない。前夜酒はホドホドにしておくのがよさそうだ。
(蒲田編おわり)

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2010年2月&2013年6月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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