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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第68回「京橋、天満の昼酒で定番酒場を外してみた」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第68回「京橋、天満の昼酒で定番酒場を外してみた」である。


はじめに

第63回で、鶴橋と上本町にあるパンチの効いた酒場で飲み歩いた話を書いた。飲み過ぎでアルコールが残っていたのに加え、鉄道バーでのタイカレー缶とダメ押しにホテルで食べたアイスクリームが胃にダメージを与え、朝から不調のまま。

午前中はおとなしく、大阪市内の歴史探訪に費やす。大河ドラマ「真田丸」の主役・真田幸村ゆかりの地を歩きながら、だんだんと体調も回復してきた。お昼も近づくと、体調が絶好調になってくるのが、なんとも酒飲みオヤジらしい。

ならば繰り出そう、いざ大阪で昼酒、出陣じゃ!

天満「銀座屋」~手抜かりだらけでも常連は気にせず

昼酒に繰り出す場所として天満を選んだのだが、いつものように大阪環状線の天満駅からではなく、初めて地下鉄堺筋線の扇町駅からやって来た。地上部に出ると、天神橋筋商店街の真っ只中で、人混みもあって方向がわからない。

すると、女性が近づいてきて「あの~天満駅はどっちですか?」と尋ねてきた。それはこっちのセリフだよ。思わず「私も探しています」と間抜けな返事をする羽目に。ウロウロした挙句、ようやく駅を見つけて安堵。女性は無事、駅に到着しただろうか?

これで一安心。まずは邪魔なリュックを駅のコインロッカーに預け、昼酒態勢を整える。さあ口開けはどうするか。天満なら「酒の奥田」という手もあるな。が、駅のすぐ近くに以前から気になっていた立ち飲み酒場がある。そこにしよう。

「銀座屋」というおしゃれな屋号とは裏腹のディープさ漂いまくる酒場。

店内はボチボチといった入り。席は空いているのだが、前の客の皿などが置きっぱなし。大将と若い店員がいるが、大将は客の注文受けや料理で大わらわ。一方の店員はボーっとしたまま。おいおい兄さん、せめて片付けぐらいしてくれよな(苦笑)

仕方なく自分で片付けてからやっと注文へ。小ビールとカツオのたたき、それから湯豆腐を頼む。ようやく人心地つき、カツオを食いながらしばし時を過ごす。

ほどなくして、隣のおっちゃんが「ビール、まだ?」と催促をしだす。そればかりか、ほかの客からもあれこれと催促の声が飛び交う。万事、手抜かりだらけの店・・・でも怒り出す客はいない。常連さんは銀座屋のペースをよく知っているのだろうな。

手抜かりと言えば、私の頼んだ湯豆腐もすっかり忘れ去られていた。ならいいや。もとより腰を据えて飲む酒場じゃないからな。私も怒っちゃいないよ。あれこれ書かせてもらっちゃったけど、決して悪い店じゃないことだけは付け加えておこう。

京橋「京橋丸徳」~座ってゆっくり落ち着いて

天満駅から大阪環状線で京橋駅へと向かう。言わずと知れた立ち飲み激戦区のあるエリア。定番の岡室酒店直売所や串カツまついもあるが、できれば初来店の酒場にしよう。まずは偵察がてら界隈をぶらついてみる。

京橋のディープ酒場として情報誌などによく登場する有名立ち飲み店に行ってみた。立ち飲み激戦区から少し離れた場所にあるが、開店前なのに10人以上の行列。並んでまで飲みたいとは思わないので、スルーするよ。

実は本日、旅行3日目で疲労が蓄積気味。ここは立ち飲みではなく、座って飲める店に入りたい。ということで、居酒屋「京橋丸徳」に入ろう。京橋界隈としては落ち着いた雰囲気の居酒屋で、お客さんもゆったりと酒をたしなんでいる。

カウンターには大皿料理が並び、魚類も美味そうだ。

こういう店は日本酒がいい。1合ならシングル、2合ならダブルと言って頼むらしい。はしご酒なので自重してシングルをお願いし、あてにはボタンエビの刺身、おでんの大根、コロ。コロはクジラの皮下脂肪を鯨油で揚げたもの。関西ではおなじみの食材。

座って飲むのは楽だ。店内が落ち着いているだけに、ゆったりとした気分になる。家族経営っぽい感じで、いい酒場を見つけたなと一人ほくそ笑む。

京橋丸徳で飲んだ後、再び立ち飲み激戦区を歩いてみた。岡室酒店は相変わらずの大繁盛で、本日は店の外にまで客があふれている。その道向かいには、いつの間にか東京から「新橋へそ」が進出していた。さあ、この激戦区を東京酒場が勝ち残れるのか?

天満「但馬屋」~変わり種メニューと付き出し

京橋から天満へと戻ってきた。帰りの列車までにはもう少しだけ時間がある。飲み足りないわけではないが、飲まない手もないな。本日はずっと初来訪酒場で通してきた。酒の奥田も捨てがたかったが、近くにある大衆酒場「但馬屋」へ寄ろう。

ズラリと長いカウンターテーブルがあり、ど真ん中付近に陣取る。壁には品書きの短冊がベタベタと張りまくられている。さすが大衆酒場。まずはハイボールを頂戴し、あてには店の名物のスタミナ焼をいただこう。

カルビっぽい肉にニラ、玉ネギ、もやしを炒めた料理で、いい意味で脂ぎっていて美味い。昨夜に続き、ガツンとした料理は疲労回復にもなる。

短冊にはイヤリング、フェイス、エチオピアといった正体不明の料理名が書かれている。その正体を知りたい方は但馬屋で飲むことをお勧めしたい。それ以上に「キムチの天ぷら」が大いに気になったが、さすがに腹具合も十分ゆえ注文は断念した。

但馬屋は、大阪の酒場では珍しく「付き出し」があり、小皿に乗った枝豆が出てきた。客が少ない時間帯で店員が雑談をしており、ちょうど付き出しのことが話題になっていた。「あそこの店は〇〇円も取っている」とかいう感じ。

「大阪の酒場で付き出しはヤボだな」。

これは私の心の声。別に付き出しの有る無しをどうこう言うつもりはない。ゆえに、店員の雑談に口を挟もうとも思わない。ちなみに今日の枝豆、口直しにはちょうどよくて、ありがたかったよ。

天満、京橋の見知らぬ店・・・まだまだ、開拓の余地はたっぷりありそうだ。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2016年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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