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エアスイミング稽古レポート② 2023/08/14

一姫「どうせ汗でドロドロになるし。メイクとかしても意味ない」
愛美「ないない。ファンデーションとかムダ」

小野寺愛美と服部一姫

稽古場はそんな話題で盛り上がっている。
今年は札幌も暑い。もちろん稽古場も。
サーキュレーターの顔がこちらを向いた時だけ辛うじて涼しい風を味わえる。

岩崎「北海道新聞の取材行ってきたよ。
   道新の近くに時計台あるじゃない?俺今初めて観光しているなーって
   ソフトクリームが美味しいね!」

演出家は相当カンヅメらしい

岩崎「シーン12がね、この芝居のクライマックスだってことがわかっちゃった」
一姫・愛美「えええええ」
岩崎「でも12からやるのはしんどいな!」
一姫・愛美「(笑笑笑笑)」

岩崎「シーン12と14にどう進むか。って感じでシーン2からやってみようか」

シーン2。二人の登場シーンだ。
目的を明確にして稽古が始まる。

岩崎「おままごとみたいにやってみよう」
  「コントだと思ってさ」
  「なぐさめるっていうよりは、またかよ!みたいな」
  「最近コントとか何見てるの?」
愛美「シソンヌとか?」
岩崎「シソンヌねー!ちょっと今youtube見れる?」

皆でシソンヌのyoutubeチャンネルを見る。
テンポいいセリフに忍ばされたボケとツッコミに時折笑いながら見ている一姫と、
不条理に翻弄される切実な登場人物に感情移入して悲しい顔で見ている愛美。
対照的な二人。

岩崎「一姫がボケね。だから(愛美が)ツッコミだな」
愛美「今回一番の課題だ(笑)」

試練と実験。

ポルフ(一姫)が興奮気味で、ドルフ(愛美)はやや引き気味だ。
岩崎「愛美さんもっと息吸おう!一姫さんの呼吸に合わせてみよう」

興奮している側の息の量に合わす。
息の交換。

二人のシーンを楽しんでいるOrgofA代表・飛世早哉香

セリフの語順について。
翻訳劇の難しさ。日本人の馴染みある語順じゃない。

岩崎「(脚本が)縛ってくるんだよ!!
   縛られることを楽しめばいいんだよ」

演出がコント論になってくる。

岩崎「あっちへ行って、こっちへ行って、下に行って」
一姫「どっちだよっ」
岩崎「そうそう!」

岩崎「あとはヒゲだな。自分にヒゲなのか、ドルフにヒゲなのか」
  「これ後で誰になってくんだっけ?トルコ人?
   ”トルコ人、ヒゲ"で検索したら出てこない?」
  「おおおートルコ人のヒゲすごいな」

イギリスとトルコ。文化圏の違いがちょっとしたジョークにも含まれてる。

岩崎「このシーンを遊び切れたら、次なんかイケるよ。さぁどうぞ!」

シーンがどんどんハネてきた。
二人の間に通うものが、セリフだけじゃなくなってくる。
聞いている側が有機的になってくる。

ポルフ「とくに女の子にとってみれば」
岩崎「うん、女の子、って言葉は大事にしたいな。女の子4人の芝居だから」
  「クリケットって何?」

みんなでクリケットの動画を見る時間。

岩崎「普通の芝居だったら情報多いって事になるけど、
   ここはいいんじゃないかな。(クリケットの)投げ方やってみれば??」

シーンがさらに躍動していく。二人の熱量が上がってくる。何より楽しそうだ。
ポルフがまくしたてる。ドルフがたまにコメント(ツッコミ?)する。
これは、、、確かにコントですね(笑)
一気に愉快なシーンになった。

ツッコミの練習をする愛美?

セリフを解読していくと不自然な点が。
シーン1では1924年と語り、シーン2で登場する生地は1950年台に登場しているようだ。時代設定が合わない。
ちなみに「エアスイミング」の初版が発売されたのは1997年。

岩崎さんが斬新な仮説を語る。それはここでは記さずにおこう。
観た方たちがどう感じるかに委ねたい。

「もう1時間やってるぜ?休憩しようか」

息詰まる濃密な時間に一区切り。


〜〜〜〜 休 憩 〜〜〜〜


シーン2の稽古が再開される。
くだらなさが増している!(笑) とは言え軽薄ではない。むしろ濃厚だ。
二人はじゃれてるようにも、ふざけているようにも見えるが、登場するワードは耳馴染みがない。突如として吐かれる言葉は、そのほとんどが人物にとって馴染みある場合が多いはずだ。
どこからその言葉が出てくるのか。皆で紐解く。

岩崎「イケてないセリフがイケてないって聞こえてくるの!」
愛美「不器用」
岩崎「不器用じゃない。正直って言うの。もう一回いこうか」
一姫「どこから行きましょ」
岩崎「そりゃあ歌からでしょ」

歌う一姫。エアスイミングでは歌が重要な役割を果たす

ドリス・デイのケセラセラ。

それまでポルフにツッこんでいたドルフが、ある一点については素直に同意する。
面白い。会話は微妙に散らかっているように感じる。
だが二人の間では会話は成り立っている。
繰り返し見ていると、キーになる言葉があるようだ。
例えば”魔女”は二人にとって強烈な言葉らしい。
その言葉をきっかけに、会話がまたハネはじめる。

そういう言葉を一つ一つ丁寧に拾い上げて、噛み砕いていく。
演出と俳優とシーンが同じ歩調で進んでいく。

岩崎「さぁ。いっちょ最初っからやってみようか」

約2時間で積み上げたものが、さぁどうなるか。


シーン2。ドルフとポルフの登場シーン。
始まってすぐに意味不明な怒涛の展開。
ここで置いてけぼりくらうお客さんがいてもおかしくない。
いわゆる翻訳劇、みたいにやられたら開始早々僕はもう飽きているだろう。

しかし、いやいや、こいつは面白い。

色々わからない。初耳の言葉もいくつか出てくる。
でも二人は普通に会話している。感情的だし、楽しそうだし、うんざりもする。
なんだろう、まるで専門家同士が大好きな分野をワイワイ話しているような、
友達同士が、互いにしかわからない造語なんかを使いながらクスクス笑いあってるような、そんな愉快さ。
この芝居の楽しみ方がわかってきた。


シーン4の稽古。

セリフ・アクションの種のイメージを具体化していく。
ドルフのセリフ。かなりキツい内容。さぁ、どう言うか。

岩崎「できるだけ現実に向き合いたくないって思ってる4人なんだよね?これ」
  「どれだけ笑顔で言ったとしても、、、伝わるんじゃないだろうか」
  「毎日9時間稽古やってんじゃん。
   ホントに面白いって思ってるけど、体力的には厳しいよね。
   そんな俺が 稽古タノシー!!って言ったら、嘘になるじゃん」
愛美「かわいそうって思っちゃう」
全員「(爆笑)」

改めてシーン4。
ドルフのセリフは本音かもしれない。が、言い方は裏腹にカラッと明るい。
ポルフの「全然楽しそうじゃないわ」が余計刺さる。

岩崎「ここさ。役者同士のプレゼント交換みたいになったら面白いんじゃない?」

ヘンな演出(笑)
そしてこれによって前後のギャップが効いてきた。
リアクションがどんどん豊かになっていく。

不思議だ。
セリフは同じなのに、二人の関係性や”今以前”が見えてくる。
具体的な事は一言も言ってないのに。
これこそが演技の醍醐味だと思う。

シーン4の締めくくりのやりとり。

「寝た?」
「ああ、寝たよ」
「今すぐあなたに聞かなきゃならないことがあるの」

どうやら二人は互いに互いの秘密を知っていて、それはとても大切な事らしい。

岩崎「最初はバカやってるけど、コイツら意外と信頼関係あるな。と思わせたい」

簡単な作品じゃない。脚本を読んでもそう思う。
でも目の前の愛美と一姫のシーンは、ただただ面白くて興味深い。
それが演出家と俳優とスタッフワークの成せる技であるのは言うまでもない。
イギリスの戯曲だ、とか、自由を奪われた女性たちの物語だ、とか、確かに重要な要素ではあるが、どうやら余計な事を考えず、リラックスして観ればいいんじゃないだろうか。
語弊を恐れず言うが、コメディだと思って観に来たっていいのかもしれない。
もちろんここからの半月でどう変わっていくのかわからないが、
我々から遠い、難解な舞台にならないことは間違いなさそうだ。

飛世早哉香と宮村耳々さんが出てるシーンが早く見たい。
超難解で???ってなったらどうしよう(笑)
この座組でそんな心配は杞憂だけれど。


稽古の最後にラスト直前、シーン14の本読み。
岩崎「ハイ、ここから早回しで読んでみよう」
  「ヒステリックにやってみようか」

結末に向けて言葉がぶつかり加速していく。
命のやりとりになっていくのか。

OrgofA「エアスイミング」
著作/シャーロット・ジョーンズ
翻訳/小川公代
演出/岩崎正裕(劇団太陽族)
出演/飛世早哉香 ​宮村耳々 ​服部一姫(札幌表現舎) 小野寺愛美(EGG)
[日 程] 2023年8月31日(木)〜9月3日(日)
[会 場] ターミナルプラザことにパトス
[住 所] 北海道札幌市西区琴似1条4丁目B2F ※地下鉄 東西線「琴似」駅直通
https://dtagmd.wixsite.com/orgofa/airswimming-2023august

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