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蝿たたき

「お母さん、変な虫がいる!」

長女の言葉に頭を上げると、リビングの蛍光灯の近くに何かいる。
眼鏡をかけ、よく見ると蝿だった。

『どこから入ったんだろう?』

そんなことを思いながら見ていたら、前足を擦り合わせているのが見えた。


見えたと同時に、小さい頃、道端のう○ちの上で、前足を擦り合わせていた蝿の姿が思い出された。


『いかん、これは成敗せねば!』


ハエたたきの代わりになるものを探すも適当なものがなく、次男は長女が作った短刀、私は薄い雑誌を半分に折り曲げ、テーブルの椅子に乗って挟み打ち状態で構える。


パシッ
バシッ

思い切り叩くもすばしっこくて、なかなか当たらない。



次男の方に向かっていったら、「いやいやいやいや」と言って逃げている。
「キモい」と言って、叩けないのだ。

『嘘でしょ!』


田舎育ちで、ハエたたきは一家の必需品。
祖父母宅では、ハエとりリボンにくっついている蝿を見て育った私には、逃げ惑う子ども達が理解できない。


「これだから、都会育ちは!」
などと問題発言を発しながら、無事仕留めた。

「いや〜」と言いながら、近くまで覗きにくる子ども達。

壁にへばりついたので、要らない布でそこを綺麗にしていると、これまたギャーギャー騒いでいる。



『そう言えば、横浜に越してきてから、蝿を見ることって余りないな〜。
子ども達の反応も当然か…』

そう思いながらも、
『こんなんでいいのかな?蝿ごときに逃げ惑うなんて…』
と思わずにはいられない私だった。