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超重要インフラの社会課題を解決する「戦略的M&A」とは

2024年3月末現在、マイスターエンジニアリングの事業規模は従業員約3000名、売上規模は約350億円、グループ会社は18社です。

社会インフラの中でも特に重要と言われる鉄道、プラント、電気、水道などを支える点検保全、メンテナンス更新といった業務と、産業機器に係るフィールドエンジニアリングや設計メンテナンス業務、事業に係る派遣請負業務をおこなっています。

今回のnoteでは弊社の常務取締役であり、ファシリティ事業部管掌/経営企画部長を務める小田真一朗が、弊社が重要戦略としているM&A社会的意義、業務における課題、面白さと魅力について紹介します。


社会貢献に繋がるM&A

弊社におけるM&Aは、非線形の成長をするための最重要戦略という位置づけです。既存事業のオーガニック成長では達成できない目標を、グループ会社の従業員、経営者とともに目指しています。

現在の日本において、私たちの日々の暮らしは1960年〜90年代にかけてつくられた社会インフラに大きく依存して成り立っています。しかし、コンクリートの寿命は60〜80年、長くても100年。水道管なども含め、深刻な老朽化が進んでいる状態です。生産年齢人口が減少する中、人や資本が限られているなかで、どんどん新しいものを作り続けるわけにはいきません。メンテナンスと更新を組み合わせながら、古いものをいかにうまく、長く使っていくかが重要です。

しかし、現在の日本では、それらをきちんと保全・修繕できる技術者が極めて不足しています。中でも若者はオフィスでのデスクワークを中心とした、いわゆるホワイトカラーの仕事を志望する場合が多く、現場を支える技術者は今後さらに減っていくと考えられます。

メンテナンスが必要な設備は増えるが、技術者は減っている

このまま技術者が減っていくと、社会の基盤であるインフラが維持できなくなってしまいます。一例を挙げると、地下鉄は常に高圧の電気が流れている設備ですが、長年の経年劣化や地震等様々な影響で機能や能率が低下したり、万が一が起こったときに電気が切れる仕組み「絶縁」が正しく働かなかったりした場合、単に故障で電車が止まると言った事故に留まらず、火災や重大な波及事故にもつながり得ます。地下鉄の保守・点検業務を担っている方が減れば、地下鉄を安全に運行できません。

社会にとって重要な技術を持つ企業は減少傾向にあり、M&Aによって弊社のグループ会社に入っていなければ存続が不可能だった企業も少なくなく、M&Aを通して社会インフラの維持に大きく貢献していると言えるでしょう。

優れた技術を持ちながら存続が難しい理由としては、技術者の高齢化による人材不足が挙げられます。インフラのメンテナンス領域では、事業会社で技術を磨いた方が独立して会社をつくるケースが主流で、事業規模もそれほど大きくないため売り手市場の現在において若手の採用はハードルが高いです。また、親方肌の職人さんがたくさんいらっしゃる会社では若い方を丁寧に育成していく文化がなく、せっかく入社しても定着せず、一人前の技術者になる前に離職してしまうケースも残念ながら珍しくないのです。結果として会社を立ち上げた当時のメンバーだけでの経営となり、技術者の高齢化が加速します。

弊社グループに入っていただいている会社は専門特化型が多く、平たく言えばマイナーな業種が多いため、求職者に知ってもらう機会にも恵まれていません。しかし、裏を返すと担い手が少ないため、一般的に知られているような技術系の業種より給与水準も高く、手に職をつけられるので、生涯に渡って安定した収入を得られます。「技術的な職に就いて自分の将来を切り拓いていこう」と考える方に認知さえ広がれば、魅力を感じる若者が多いと考えています。

我々は「現状を改善し、事業を継続させて社会を支えていきたい」という志を持った会社に対してM&Aをおこない、若手の採用・定着・育成という課題の解決を促すことを含む経営基盤の強化に取り組み、技術継承、会社の存続と事業成長に向けたサポートをすることで、社会インフラを間接的に支えています。

社会的意義の深い業務内容

私が入社した直接的なきっかけは、前職のコンサルティング会社で一緒だった代表の平野から声をかけられたことです。もともと業務や経営の改善、会社の課題解決に大変興味があり、業務内容を聞いて、社会的意義の深い、胸を張れる仕事だと感じて入社しました。

やっていて気持ち良い仕事だろうなと思ったんです。また、自らが手を動かして経営の中枢に携わる仕事ができる点にも、非常に魅力を感じました。

M&Aの業務においても、その後の“経営基盤の強化に向けた取り組み”においても、大前提としてあるのは「社員のみなさんと経営者がもっとハッピーに働くために、我々は何をすべきか」という視点です。先ほども申し上げましたが、我々がM&Aで取り組んでいる領域は、事業会社で技術を身につけた方が独立して設立した会社がほとんどなので、自立心旺盛な社長が多くいらっしゃいます。

そういった会社に対して「マイスターエンジニアリングのやり方に従え」のようなハゲタカ的M&Aを実行すると反発が生まれますし、技術のある社員さんはいくらでも転職先があるので辞めてしまいます。その領域で「会社の個性や自律性なんて、完全に無視して進められるらしい」なんて悪評が立ってしまえば、マイスターエンジニアリンググループの経営にも影響する可能性があります。

一般にM&A後に取り組むとされるPMIは​​ポスト・マージャー・インテグレーションの略ですが、我々のグループに加わる企業は継続して、独立した経営を行うためマージャーもインテグレーションもしません。そのためM&A後のプロセスを、「オンボーディング」という言い方をしています。いきなりクビにしたり、現場の事情も考慮せずに就業規則を刷新したりするようなことは、基本的にしません。もちろん、元の状態があまりにも歪んでいたらやらざるを得ないケースもありますが、社員を置き去りにした方法で効率を上げていくのではなく、会社を助けることを通じて、会社ひいては社会に価値を創出するところにフォーカスする考えは、事業全体で一貫しています。

社会的義務のある、本当に優れた会社にグループ会社として加わっていただき、オンボーディングを通じて自立し、自走し、成長し続けるためのバックアップをおこなうことが、我々の掲げる基本コンセプトです。

グループ拡大を支える構造

オンボーディングのプロセス

オンボーディングのプロセスで一番重視しているのは、人材を育成する環境の醸成です。人材の育成・定着は会社が成長していくための基礎となるので、採用と育成が第一の課題になります。

どの会社にも歴史があり、それに基づいた就業規則や労働環境、そして売上、給料という全体の体系があります。我々としても事業成長を目指してM&A投資をしているわけですから、これらへの配慮をしながらも改善していかなくてはなりません。

どうやったら若い方が興味を持って応募してくれて、気持ちよくジョインし、ここで成長していこうと考えて定着してもらえるのか。経営者だけではなく技術者のみなさんとも議論をしながら進めていきます。

第二の課題となるのが、管理部門の機能引き継ぎです。よくあるパターンですが、売上10億ほどの規模の企業であったとしても、社長が一人親方で、経理関係と管理部門は社長の奥様が担当しているケースも少なくありません。M&A後は売主である社長とともに奥様も退任するので、経理部門と管理部門をどうやって、誰が引き継いでいくかが重要な課題になります。

中には就業規則が30年ほどアップデートされず、現在では労働基準法に抵触しかねない働き方が当たり前になっている会社もあります。働き方は採用の部分にも繋がってくるので、早急な改善が必要です。

そして第三の課題となるのが、採用・育成課題と管理部門引き継ぎ課題の両方に関わってくるコンプライアンスに関する課題です。約1年ほどで3つの課題がすべて解決された状況を目指します。

解決した後は、航空機で言うところの離陸準備が整った状態なので、次は定常飛行のフェーズに移ります。安定した定常飛行に向けておこなうのは、会社の常勤の役員で回していく仕組みづくりです。最初の1年目でまず喫緊の課題に取り組みながら定常化に向けたプランニングをおこない、長期目線での社員育成計画や組織構成、新規営業先の選定や経営戦略について議論します。定常飛行に移るまでの支援、定常飛行後の仕組みづくりのふたつのプロセスが、オンボーディングになります。経営企画部門の担当がべったり張り付いていなくても、未来ある経営を継続できるように、会社がしっかり自走していくための支援です。

後継者がいない場合、経営企画のメンバーが一時的に社長に就任するケースもありますが、現場の社員さんからすれば、天下りでよく知らない社長がやってくるよりも、長年一緒に働いてきた信用できる仲間が社長になったほうが受け入れやすいでしょう。そこで、新しい経営者の育成もオンボーディングにおける大きな課題として取り組んでいます。

オンボーディングにおける課題事例

オンボーディングの段階で、これまでの働き方や文化を適切に見直していく、ということが重要になることも多いです。非常に具体的な例ですが、例えば現場への移動の際、車内での喫煙を認めるか、認めないかという課題がありました。昨今では喫煙者の割合も減っていますが、年配の職人さんの喫煙率は依然として高いです。時代の流れとして作業現場でも全面禁煙のところが増えているため、「着いたらしばらく吸えないから、移動中に吸っておきたい」という主張が発生します。

とはいえ、移動にかかる1時間ほどの間、狭い車内で煙草を吸われてしまうのは、若い人に多い非喫煙者にとっては辛い状態です。些細なことのように聞こえるかもしれませんが、毎日一緒に仕事をするとなれば、かなり大きなウエイトを占める問題になります。こういった細かい課題が新旧対立を生むため、見過ごせません。

できるだけ喫煙者同士、非喫煙者同士で車を分けるなどのルールづくりをするべきですが、そこで親会社である我々が積極的に絡んで議論するのではなく、社員同士でしっかり議論をして新しいルール、新しい働き方を決めたほうが、納得感も高く定着しやすいと考えています。しかし、社員同士で話し合いができる環境づくり、コミュニケーションの基盤づくりに時間がかかる場合もあるため、最初はある程度の介入が必要です。

受け継いでいくべき会社の文化や、先輩としてどう振る舞うかの心構え、教育担当として教えるべきこと、それらを既存の社員さんにきちんと定着させておかないと、体裁だけ整えてもうまくいかないことは、これまでの経験から実感を伴って理解しています。

もちろん就業規則やお給料といった問題も働き方に関わるので、当該企業や協力会社と相談しながら、受け入れ側の環境づくりと併せての改善が必要です。

例えば年間休日を10日増やすにはスケジュールを見直して、午前と午後で違う現場に行くチームを再構成して移動時間を省いて無駄を削減するなど、どうしたら売り上げを下げずに生産性を上げていけるかを議論していかなければ、物事は前に進みません。

現場で発生し続ける小さな問題を解決しながら、ときには従業員のみなさん、他の協力会社の皆さんも巻き込みながら物事を回していくことが、弊社のオンボーディングであり、本当の意味での物事を進めることだと考えています。

我々の仕事はコンサルタントと混同されることがありますが、一般的にコンサルタントは、現場で実行フェーズに移していくときの課題には触れません。絵に描いた餅ではなく、実際に現場で考えて動きます。コンサルタントとはまったく違うと考えていますし、運転席に座って物事を動かしていく立場の魅力を感じています。

挑戦の余剰、新規領域の可能性

弊社はもともと土木業界は手がけていませんでしたが、電線の無電柱化などの電気工事に絡む土木工事をおこなう企業に対してM&Aをおこない、グループ会社として加わりました。創業者の後を継ぐ経営者の方とお話をしていると、土木業界においても技術者不足によって更新工事が十分におこなわれていないこと、優れた技術で知られた企業でも経理や採用に課題を抱えているケースが多いことがわかりました。

土木業界は我々にとって少し遠い領域でチャレンジ案件ではありましたが、一番最初にグループ化した企業の社長を中心に、現在までに4社のロールアップをおこない、土木カンパニーを構成しています。4社で相互に人材を融通したり、採用で協力したり、どんな戦略を打ち立て、どう運営していくのかを議論しています。

最初の1社をM&Aした段階では、ここまでの構想はなかったのですが、業界の状況や苦境を知ると「じゃあ、こういうふうに展開したら面白いんじゃないか」とアイデアがどんどん展開していき、新たな経営戦略が見えてきて、そこからは自然とボールが転がっていくんです。

未知の領域にも打てるボールが転がっているケースがあり、現在はそういったボールをプラント領域でも転がしていますし、今後は電気の領域でも広げていきたいと考えています。新たな領域の会社を軸に新たな展開が生まれ、事業が広がっていく。大変やりがいがありますし、私自身もすごく面白いと思って取り組んでいます。

今後、さらに事業展開していくにあたり、課題となるのが管理部門の規模です。現在、管理部門は約50名体制ですが、「スタック・イン・ザ・ミドル」に陥っている傾向にあります。規模をもうちょっと小さく、もしくはもうちょっと大きくしないといけない、ちょうど経営効率の悪いところにハマってしまっている状態です。相対的に大きい事業規模を貫き、役割を果たしていくには、もっと成長していく必要があると自覚しています。今後は150〜120名規模ぐらいの体制に変え、さらにコストをかけてデジタル投資などもおこなっていきたいと考えています。

正直に申し上げて、弊社はまだまだやりきれてないことがたくさんあります。裏を返すと、今から加わっていただく方にとっては、今後のチャレンジがかなり残っている状態です。「規模の経済」が享受できる規模を目指して成長する過程のなかで、グループ会社の支援をおこない、うまく両輪を回しながら、自社の成長とグループ会社の成長を実現していきたいと考えています。また、その先には魂を失わず、グループ会社支援を効率化、組織化していく取組みも必要になるでしょう。

技術を軸に広がるグループ

マインドとスキル、求める人材像

実現のために、管理部門が求めているのは、現場へのリスペクトと問題解決能力を併せ持つ人材です。いわゆるブルーカラーの方、作業服を着て一日中、油まみれになりながらお仕事をされている方々に対してのリスペクトが、まず前提として必要だと思います。

心の中ではブルーカラーの方を若干見下してるような方は、残念ながら存在します。そういう方が表面だけ取り繕っても、やはり相手には見透かされてしまいますし、当然うまくいきません。技術者の意見を尊重しながらも、現実的な問題解決、現場での実行力が求められます。自ら手を動かして、自ら話を聞いて、解決しようと動く力が、とても重要です。

その上で必要になってくるのが、コミュニケーション能力です。「決めたから従ってください」と押し付けるのではなく、現場の皆さんに対して、施策の意図や期待できる効果などを、わかりやすくしっかりお伝えしていきます。

社員さんの声を拾い上げることも重要な仕事なので、会社の飲み会に参加させていただいて、みなさんが現場でどんな役割を担い、どんなことを問題に感じているかを聞き出し、日頃から何を考えて仕事しているかを理解しながら仲間に入っていく形でのコミュニケーションも有効です。

まずは現場にしっかり張り付いて課題を把握し「解決しながら実際に物事を回し、動かしていく」という気持ちを持つことが大切になってきます。スキルや経験よりも、まずそのマインドです。併せて、現場へのリスペクトと問題解決能力の両立が求められます。

その場その場で、すぐに判断・解決を迫られるところもあるので、決断力も必要ですね。先ほどのタバコ問題のような粒度の問題まで一つひとつ「会社に持ち帰って相談・検討」を繰り返していては後手後手になってしまうため、かなり広い権限を持って取り組んでいただくことになります。

​​もちろんチームや上長のサポートはありますが、いかに自分で決めて進めていけるか、いかに責任感と善良な心を持って問題解決に取り組めるか、という視点が大事です。

コンサルタントや、現場から遠い経営企画の仕事をしていると、自らが先頭に立って実際に物事を動かせる機会が減り、もどかしさや不満を感じているケースは結構多いと思っています。私自身もコンサルを長くやってきて、実際の経営に携わりたいと考えてマイスターエンジニアリングに入社した側面もあります。

広い権限を持ち、現場で実際に物事を動かし、ダイレクトにやりがいを感じられる。しかも社会的意義が深い。そんな仕事で自分の力を生かしていきたいと思われる方に、ぜひ参画いただきたいです。

私はコンサルティング会社で採用にも携わってましたし、いろんなバックグラウンドの方をチームに抱えてやっていくことには耐性があると思っています。経験してきた業界を問わず、我々が成し遂げようとしていることに興味がある方、共感を持ってくださる方は、ぜひ入社を検討いただけますと幸いです。

最後に

マイスターエンジニアリングの経営企画・管理部門について、もっと詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。
https://trackrecords.notion.site/fb8746fc486c4473ae5fae2659e592d9


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