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向精神薬による中毒死についての見解💊

 今話題の市川猿之助氏の事件。両親ともに向精神薬中毒死が疑われている。

果たして、現在日本で入手可能な薬剤で発生してしまうような事件なのか?参考文献とともに考えてみました。

こちらが参考文献です⤵

過量服薬による致死性の高い薬剤を同定することを目的に,研究を行った。方法としては,2009年から2010年に,東京都23区において過量服薬によって死亡した335人と,東京都内において処方を受けた3350人を比較対象とし,症例対照研究を実施し,致死性の高い精神科治療薬の同定を試みた。症例群は東京都監察医務院における取扱事例,対照群は日本調剤株式会社における調剤事例とした。対照群は,症例群と背景要因(性別,年齢,死亡年月/調剤年月,診療科)が類似するよう,マッチングを行った。
 その結果,対照群と比較し,症例群の処方割合の高い薬剤,すなわち過量服薬による致死性の高い薬剤は,ペントバルビタールカルシウム[ラボナ®](0.1% vs. 14%;オッズ比104),クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタール[ベゲタミン®](1% vs. 30%;オッズ比43),レボメプロマジン[レボトミン®/ヒルナミン®](5% vs. 30%;オッズ比7)とフルニトラゼパム[サイレース®/ロヒプノール®](15% vs. 46%;オッズ比5)の4剤であった。
本研究により同定された精神科治療薬は,過量服薬された場合にはいずれも致死的な結果になる危険性が高く,自殺リスクの高い患者に処方すべきではない薬剤である可能性がある。過量服薬による死亡事例を減らすためには,臨床医個々人による,薬剤処方の適応の慎重な検討および内服状況の確認等は当然必要ながら,それのみに依拠すべきではなく,特に死亡リスクが高いペントバルビタールカルシウムやクロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタールに対する新規処方を規制当局が禁止する等の施策を立案すべきであると考える。

◆参考文献◆
引地和歌子,他.過量服薬による致死性の高い精神科治療薬の同定――東京都監察医務院事例と処方データを用いた症例対照研究.精神神経学雑誌.2016 ; 118 : 3-13.

✴考察

紹介した4剤が、今回使用されたかどうかは分かりません。
ただ日本で入手可能(もちろん医師の処方が絶対に必要❣)な薬剤という制限をかけると、可能性はないとはいえませんね。

特にフルニトラゼパムは、不眠症の患者で以前はよく処方されていた薬剤です。
第二種向精神薬に属する薬剤なので、月に30日分までしか処方出来ません。薬剤師サイドの管理も厳重な薬なのです。

分かりやすく言うと、1mg錠をMAX60錠までが入手限度。

フルニトラゼパムの中毒量は1g 、致死量は6gですから、1mg錠でいえば1,000錠、6,000錠の計算になります。

常識的に考えて、この量を入手するのは薬剤師でも不可能です。不自然な大量購入は監査が入って調べられますからね。

他の薬剤に関しても、致死量を入手するのは不可能だと思います。

素人が大量に服用して自殺をはかろうとしても、ほとんどのケースが死ねません。投与量不足で失敗します。

今回の事件が本当に向精神薬中毒死とすれば、入手経路も気になるところ。確実に不正ルートであるからです。

ここまで単剤でのケースを考察してきました。
実は、薬には飲み合わせが悪いものもありますから。
それを逆手にとり、中毒量に満たない量で、複数の薬剤を使用したことにより、条件を満たしたとも考えられます。

考えればいろいろ可能性は出てくるのですが…

薬剤師の立場からすると、薬の事件が起こる度に規制が厳しくなり、本当に必要な患者さんにその薬が渡せなくなることに繋がる。それが困るんです。

早く真実が明らかになり、こういった事件が起こらないように願います💫


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