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『ミラベルと魔法だらけの家』と作品シナリオについて

やっぱり作品語りしてると元気になってくるなあ。ということで、さっきまで喋っていたことを文字にも書き残しておこうと思います。

昨日、Disney+で『ミラベルと魔法だらけの家』を見たんです。私の感想としては、「歌も映像もすばらしいし、テーマとかメッセージとかやりたいこともすごくよくわかってそれは今の時代にも合っていてめちゃめちゃいいものなんだけど、なんだかそれがストーリーラインにうまく乗っかってない感じがしてスッと入ってこなくて……うう~はがゆい!」って感じだったんですね。

「作品」において「シナリオ」が担う比重の大きさをつくづく感じます。「シナリオがざんねん……! もったいない……!!」って思う作品多くないですか? 特に日本のアニメ映画に。海外の制作現場では、シナリオを複数人で練ることもあって、大きく破綻したシナリオになることが少ない……という話を聞いたことがあります。

その意味で、スクリプトルームが設置されて作られた『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』はやっぱりシナリオの完成度がとても高かったと思います。なのでとても人に薦めやすい。長編シリーズ物なのに、ざっくりとした舞台設定だけ把握しておけばこれ単体でも十分楽しめるところもすごいなあと思う。

『ミラベル』の登場人物たちの気持ちの変化が唐突過ぎてエッという感じだったという感想を聞きました。これもシナリオに引っ掛かりが生まれるあるあるポイントですよね。これもねえ、尺の都合上とか、ちょっと仕方ない面もあるとは思う。一番むずかしいところと思う。

って思うと、本当にもう『らんまん』の脚本のすばらしさを改めて感じるわけですよ…! 『らんまん』も客観的にはものすごく駆け足で、どんどん時間を飛ばして、どんどん色んなものが移り変わっていくのに、そこに「えええ??」っていう感覚が全然生まれないの。すごいの。

たとえば虎鉄と千歳、二人のシーンって凄く少なかったから、脚本や演出が貧相だったら絶対にあの展開には唐突感が生まれたはず。段取りにしか見えなかったと思う。なのに、なにひとつ違和感なかった。「ああ……描かれてなかったけど、ふたりのサイドストーリーがあったんだね……!」って、スッと入ってきたの。

「日々の努力の積み重ね」や時間・季節の流れが丁寧に描かれる一方で、大胆に省略される部分のバランスは、いったいどのように意識されていたのだろうか。長田さんはこう説明する。

「やっぱり過程は面白いんですよね。突破があるとしたら、突破するまでが面白くて、突破したらその後のランディングのところはわりと省略できるという考え方なんです。(略)最初の突破に至るやり取りをきめ細やかに描くと、そこから7年ぐらい経ったとしても、万太郎の成長ベクトルはもう示せているので、視聴者の想像に委ねることができています。だから、全国からの標本がたくさん届き始めていて、採集の地図もこれだけ埋まっていますという着地点を示しても、ここまでどういう努力の仕方をしたかは、視聴者の方には分かってもらえるという考え方です」

「『らんまん』脚本が成し遂げた高難度なテクニックの数々」より

脚本の長田育恵さんは、劇作家でもあるので、そういう演出がたくみでらっしゃるんだろうな、と思いました。舞台なんてそれこそ2時間の中で人生60年を詰め込まないといけなかったりするから。その手腕を15分130話という尺のなかでふるって、全体を構成されたのだなと思った。最終回の万太郎と寿恵子のラストシーンなんて、ほんとうに舞台的だなって思いながら見ましたもん号泣しながら。

そんな骨太な脚本をうけて、演出や美術や照明や小道具などで細部にまでこだわりぬいた画面作りがあり、キャストさんの熱演があり、あの説得力が生まれるんだなと思います……。『大奥』もまさにそれです……。

私は『水星の魔女』も大絶賛しているのですけど、この作品にもそれが感じられるからです。シャディクからミオリネへの想い、ちょっとした目線とかで描かれてるものの積み重ねで嫌ってほど伝わってくるんですよ……。ほんとうにこういう「言葉で説明し過ぎない」演出をしてくれるの、たまらないし、見る側としてもちゃんとそれを受け取っていかないといけないなっておもう……。


もともと書こうと思っていた話に全然たどりついてないけど2000文字に至ったので一旦投稿します。

補足

『ミラベル』の歌は文句なく良いし、映像美はまちがいなくてあれを見ているだけで満足感あるし、演出が「クール」「かっこいい」なところが、他のディズニー作品とは違った毛色を見せている感じがして、すてきです。

「ちょっとストーリーにちぐはぐ&唐突感はあるかもしれないが、そこに目をつむればとてもわくわく楽しめる作品です。おすすめ!」です。

あと、それでいうと『マイ・エレメント』はひっかかりのないとてもきれいなシナリオだったので胸張ってお勧めできますその話もまたどこかで。

特におきにいりの2曲。字幕つきで見るのをおすすめします↓

増していくプレッシャー(原題:Surface Pressure)

それでもどんどん増してくプレッシャー
止まらずチクタク追いかけてくるの

任せて信じて大丈夫
もしつぶれたらその時
私の価値はどこに? やらなきゃ

増していくプレッシャー (From『ミラベルと魔法だらけの家』)

けっこうグサッとくる人多いのじゃないかと思う。こういう状況に置かれてる人ぜったい多いと思うんだよ……。映像はコミカルだけど、けっこうどストレートな歌詞なところも面白いですよね。笑えるけど笑えない。

本当のわたし(原題:What Else Can I Do?)

色とりどりの薔薇を 咲かせて 着飾って
完璧なポーズとって 本音隠したけど

育てたらどうなるの? 今の想いを
完璧じゃなくていいなら どうする?

あるがままで いいのなら
完璧じゃない生き方求めても 私は私

本当のわたし (From『ミラベルと魔法だらけの家』)

アナ雪のエルサの変奏曲って感じでとても良いですね~。エルサは王女というちょっとファンタジックな立ち位置だったけど、より身近な人物像に近づいた感じで。(『ミラベル』全体がそんなかんじ。)あ、CV平野綾さんです。アニオタに嬉しいポイント🥰

こちらの原曲の英語歌詞の和訳解説もとても面白く読ませていただきました。おすすめです。


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