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鉱物最強決定戦②

就職面接でよく聞くあなたをモノに例えるとなんですか、という質問に対し
「潤滑油です!」
と答えるのは、ある種テンプレート的回答であると、どこかで見たことがある。
しかし実際他人から君って潤滑油みたいだよね、と言われたらうれしいかといわれるとなんとも微妙なところだ。

人から言われてうれしいと思えないことを就活という、自分を売り込むアピールの場で発言するのはどうなのだろう。

とはいえ、てろてろの油にまでならずとも人間関係において柔軟であることはとても重要なことだ。

こんな話を聞いたことがある。

『陶器と陶器がぶつかれば当然お互いが割れてしまう。でも陶器とぶつかり合うのが柔らかな粘土であればお互い割れずにいられる。それは人間関係においても同じだ』

かなりあいまいな記憶だし例えが全然違うものかもしれないが、だいたいこんな感じのことを言っていた気がする。

陶器のように柔軟性がない姿勢、思考でいればいつか同様に陶器のような人と出会ったときお互い割れてしまうと。

別にそんな人とは仲良くしなくていい、と切り捨ててしまえばそれまでだが、仕事やコミュニティにおいて必ずしも自由に人間関係を構築できるわけではない現代で、ある程度うまく生きるためには自身が柔軟性を得ることはとても重要だなあと思う。

「いやいや、陶器とぶつかったとき粘土になって自分を曲げるなんて許せない。それなら俺は陶器よりも硬い石になる。」

そんなこれからの話の展開に都合がいい発言は当然誰がいったわけでもなく、架空上のものであるがこの陶器より『硬い』。

これこそ今回話す鉱物最強決定戦の要素の1つ、モース硬度とは別の硬さ『靭性』である。

靭性

鉱物の硬さのひとつとして、モース硬度の次にあげられるのがこの靭性だ。

靭性
物質の脆性破壊に対する抵抗の程度、あるいはき裂による強度低下に対する抵抗の程度のこと。物質の粘り強さとも言い換えられる。

こんなWikipedia的説明文ではいまいちわかりづらいがようするに物の割れにくさのことである。

先ほどもあげたように、同じ靭性をもつ陶器同士をぶつけ合えばお互いが割れてしまうし、陶器よりも靭性が高い石とぶつければ割れるのはより靭性の低い陶器側である。

このように物質は靭性が高いほど割れにくく、低いほど割れやすい。

この靭性は当然各鉱物にも存在している。

例えば水晶やアクアマリンの靭性は7.5、トパーズは5、コランダム(ルビーサファイア)は8である。

そして最強のモース硬度を誇るダイヤモンドの靭性は7.5。

そう、ダイヤモンドの靭性は実はコランダムよりも低い。

世界一硬いと思われがちのダイヤモンドであるが、靭性、もとい割れにくさに関していえばコランダムのほうが上なのだ。

引っかき合ったらダイヤモンドの圧勝だけど、ぶつかり合ったらコランダムに勝てない。

こうなるとダイヤモンドが鉱物最強とは言い難くなってくる。

かといってモース硬度で負けているコランダムが最強というのも違うし、ほかの鉱物はそもそもモース硬度と靭性の両面でコランダムに勝てない。

となると一概にどれが最強と決めるのは難しいことだろうか。


ところで、靭性の高さをあげるなら、翡翠も非常に高い靭性をもっている。

モース硬度こそ6~7であるものの、靭性はコランダムと同様の8。
(鉱物の靭性を調べるとコランダムと翡翠の8がだいたい一番上に表記されている)

翡翠は微細な結晶が不規則に絡み合った結晶体であるため高い靭性を誇るらしい。

とここまで考えてふととある鉱物を思い出した。

そしてこの鉱物が硬度という面では最も強く、物理的な面ではおそらく最強の鉱物。

カーボナードである。

カーボナード
天然の多結晶ダイヤモンド。ダイヤモンドの微細な結晶が緻密に集積した鉱物の変種

先ほど説明した翡翠も微細な結晶が絡み合ったと書いたがこのカーボナードはその微細な結晶がダイヤモンドなのだ。

モース硬度10のダイヤモンドを集めて靭性8の翡翠と同じ構造にした(厳密には違うかもしれないが)最強の鉱物。

カーボナードについて調べてみるとどうやら靭性は10らしい。

靭性8の翡翠、コランダムよりも高くそれでいてモース硬度も10。

もう文句なしに、最強じゃないか。

じゃあ、鉱物最強決定戦はカーボナードが一番ということで、とは簡単にならないわけで。

個人的に物理的最強はカーボナードでいいと思うけど、化学的面でいえばほかにもいろいろな要素がある。

というわけで次は化学的面での鉱物の強さについてお話したい。

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