九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"あの世の肉"


九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。

"あの世の肉"
ーあの世はいま、どれくらい技術が発達しているんだろう。
書類の電子化は進んでいるのかな。まだペーパーレスは早いか。どうだろう。

普段目にするあの世は、随分と古い時代のものだ。
最初に誰かが言い出してから、まるでアップデートされていない。
でもあれだけ人が流れてるんだし、多少は発達していると思う。

天国は一旦良い、仕事なんてあるはずがない。
それにきっと僕らが思うより、天国への切符を掴むのは容易ではない。
相当な徳を積まないと行けないはずだ。だってあまりにも良すぎるから。天国。
天国にはすごい人ばかりがいるんだろう。優秀な人、優しい、たくましい、誠実な人。
いろんは良い人で溢れている。
何もせず、ただ穏やかに暮らし、そこに一切の憎しみはない。

天国のフードコートには丸亀製麺とマクドナルドがあって、いつ行っても月見バーガーが置いてあるんだ。
しかも何個食べても飽きないし胸焼けもしない。天かすは絶対にふやけない。
マクドナルドにはドナルドもいる。グリマス(紫の大きくて可愛いやつ)もいる。
ハンバーグラーはいない。罪人の格好をしているからだ。何やったんだろ、万引きとかかな。

そんな幸福に溢れた空間に労働はあるはずもなく、技術は必要とされない。
ただ揺蕩うだけの日々が待っている。早く僕も天国に行きたい。

反面、地獄は労働に次ぐ労働だ。
フードコートにマクドナルドはない。丸亀製麺もない。
子供用の椅子と机が一体化したアレだけたくさんある。そっちの方が嬉しくないからだ。

言うまでもなく、そこで働く人たちはカスしかいない。
天国に行けない人全員が地獄に行くのはちょっとエグすぎるし、多分間も用意されてる。転生ルートとか。

地獄に送られる人は超カスだ。犬とかめちゃくちゃ殴る。
仕事もロクにしないし、ありがとうも言えない。

そうか、だから僕らの知るあの世はアップデートされないのか。
馬鹿が馬鹿な仕組みのままやってんだ。
ほれ見ろ、ハンバーグラーが泣きながら素うどん食ってるぜ。天かすはもう溶けてるんだって。白いでしょ、出汁。ばっちいね。

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