九月著『走る道化、浮かぶ日常』感想。"要らない応援を忘れろ"

九月くんの著書、『走る道化、浮かぶ日常』を読んだ。本書を通じ、この世がまた少し平和になった。ページをめくるたび鳩が一羽、また一羽と羽ばたき、読み終わる頃にはひと握りの愛と大量のフンだけが僕の手元に残った。

"要らない応援を忘れろ"

ーよかれと思っていたとしても、何でもかんでも受け入れられやしない。
愛情は万病に効く特効薬ではない。凶器にも余裕でなる。

思いやりだってそうだ。
思いやりはすべてを包み込んだりはしない。
例えばそうだな、死にまつわるものは避けられる。生きているんだから、可能な範囲で死なないようにしたほうが良い。
だから古いマンションには"死"を連想する4階はない。死を連想する人に配慮しているから。

無論、意味はわからない。

だって別にさ、4だけじゃないでしょ、不謹慎な言葉を連想する数字。
"3"はもう確実にアウトじゃんか。惨なんて良い訳ない。不謹慎だよね。やめておこうか。
惨階に住む方が嫌かもしれない。死より恐ろしい何かが待っている気配がする。惨劇の惨だぜ?きっと死なせてもくれない。

”5,6"は最早言うまでもないよね。殺すって言っちゃってるんだよこいつ。死はまだ抽象的じゃん。自然的だけど限りなく神秘に近いじゃん。
よくわかんないんだから。ただ殺すはもう、わかりすぎる。怖い。だから5と6もだめ。
少しずつ、10階建てだった僕'sマンションは縮んでゆく。

"7"はどうだろう。菜?これなら良いか!他に連想する言葉は無いかな・・・。奈・・・?奈落・・・・?駄目か・・・。
またひとつ、僕’sマンションは縮こまる。高層階から見える景色がウリだったのにな。

"8"は蜂だな。危なすぎる。当然駄目。"9"は仇だろ。銃。駄目すぎる。
僕'sアパートは経営を諦めない。

"1"は大丈夫だけど異血とも読めるか!キモいな!やめておこう!"
"2"は言うまでもなく逃!!!!誰も住みたがる訳がない!来たいのに逃なんだから!!

こうして更地になった思いやりの住まいには、愛と負債だけが残った。

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