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札幌銭湯スタンプラリー2023のこと(その13・東豊湯)

札幌銭湯スタンプラリー2023、13軒目は東豊湯さん。

ラリーに参加している銭湯の中では、訪問回数の多い湯である。

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お世話になっている銭湯を悪くいうつもりはないが、東豊湯という屋号はいささか地味だ。

全てとはいわないが、多くの銭湯は「寿湯」とか「大照湯」とか、縁起のよい、おめでたいニュアンスの屋号を掲げている。

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東豊湯。
地下鉄・東豊線の沿線にあるからなのだろうが、縁起のよさも、おめでたさも感じられない屋号だ。

最寄りの路線から名前を拝借するという発想自体は悪くない。
「成田スカイアクセス湯」とか「山手湯(内回り)」とか、あるなら入ってみたい。
でも「東豊」はそもそも字面が地味過ぎる。

しかし、私はある事実に戦慄した。

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札幌を走る地下鉄3路線のうち、最も若いのが東豊線だ。その開業は1,988年とのこと。
一方の東豊湯は、あるサイトによれば1,968年創業らしい。

東豊線が走り出したとき、東豊湯はすでに存在していた。
つまり「東豊線の沿線だから東豊湯って名前にしちゃおっと!」が成立しない。

私は仮説を立てた。

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<仮説1 創業者の出身校説>
札幌には東豊高校という学校がある。東区豊畑という所在地にちなんだ校名なので、こちらには何の謎もない。
創業者がこの高校を出ていて、その名を拝借したのではないだろうか。

…いやでも、銭湯を始めようというときに出身高校の名前をつけるだろうか。
私であれば「旭川西湯」となるが、そんなの絶対に嫌だ。札幌だし。
そもそも東豊高校の開設は1,983年とのことなので、いずれにしてもこの説は成立しない。

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<仮説2 地下鉄側がパクった説>
「沿線に東豊湯があるから、東豊線って名前にしちゃおっと!」という、逆転の発想による説だ。我ながら冴えている。
札幌市交通局の上層部に大の銭湯フリークがいたならば、ない話ではない。

しかしもしそうならば、東西線は美春線で、南北線は奥の湯線でなければおかしい。
よってこの説も否定される。

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<仮説3 東豊湯=オーパーツ説>
説明不要だろう。「アンティキティラ島の機械」とか「コソの点火プラグ」とかの「その時代になぜ⁉︎」という月刊ムー的なアレである。

しかし銭湯はパーツと呼ぶにはデカ過ぎる。よってこれも却下だ。

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「どうして東豊湯って名前なんですか?」
そう尋ねるコミュニケーション能力はない。黙ってスタンプ用紙を差し出した。

東豊湯、なぜ。

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今日も東豊湯の浴場、サウナに響くBGMはナイスチョイスだった。髪を洗いつつ
(東豊湯、なぜ…)
と思案していたところ、宇多田の「First Love」が流れ出した。

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宇多田ヒカル。
ミラクルひかるは宇多田ヒカルありきだ。
しかし、ミラクルの方が宇多田より3年早く生まれている。

東豊線と東豊湯の関係も、そういうことなのだろう。

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「そういうことってどういうことだよ!」
浴後、玄関先の灰皿で一服しつつ、つぶやいた。

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謎は解けなかったが今日は気分がよい。歩いて帰ろう。

東豊湯近くの東光ストアをやり過ごし、36号線を渡る。

東光ストア。正式には東光ストア豊平店という。

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東光ストア豊平店。
東光豊平。
東豊。

いや、まさかだよな?

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