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創作したTRPGキャラクター人名ベスト10を発表する

西暦2020年からTRPGを始めて驚くことにもう三年目になる。これまでに創作したTRPGキャラクターを数えてみたところ、44人いた。一人を継続探索者として五回以上シナリオに連れ回したりもするので、まあ妥当な人数と言って良いだろう。

44人。つまり、44回、人の名前を創作したということだ。
(厳密には、そもそも人ですらなかったり、なくなったりするが、クトゥルフ神話TRPGなら、そういうことも当然ある。ソード・ワールドで作ったキャラクターはもふもふの種族だし。)

私は自分が作ったキャラクターには思い入れがあるし、当然その名前にこだわりを持っている。となれば、自慢したくなる。今すぐにでも。

というわけで、44人の中から10人を選りすぐってランキング形式にしました。今から自慢します。
はい!スタート!!


〈注1〉
同姓同名でも貴方のことではないです。貴方の生きている世界が創作でないと信じていたいなら、そう思ってください。
〈注2〉
創作物としての人名に対する評価です。重ねて言いますが、貴方のことではないし、特定の人物を貶めたり尊厳を傷つける意図はありません。
〈注3〉
名前の画像下にあるキャプションには、キャラクターの簡単な紹介と通過したシナリオを入れてあります。シナリオのネタバレはないです。大事な情報なので読みましょう。読め。


【10位】 香江利 泰四郎 (かえり たいしろう)

『ムーンエラーアウトサイダー』HO4
美大生・21歳・男

10位からいきなりふざけているのかと言われそうだが大真面目である。
HO4(ハンドアウト:担当するキャラクターの役割に関する事前情報。4人いるキャラクターのうちの4人目を私は担当した。)を貰ったときに、事前情報にある「キミは帰りたい」をもじった名前をつけようと思った。そうして名付けられたのが泰四郎である。「帰りたい」から「かえりたいしろう」。
シンプルにもじりながらも、漢字でバランスを取ったことでフィクションに寄りすぎず、現実感をある程度持たせたいい塩梅の名前になったと自負している。

名字である「かえり」は、そのままの意味を持つ「帰」は使わずに、名字でよく使われるイメージがある漢字を使用した「香江利」とした。それぞれの漢字は凝っておらず飾り気はないが、雅やかな雰囲気をもった文字列であるように思う。全国人数は少ないが、「香江(こうのえ)」も「江利(えり)」も名字として存在しているらしい。「香江利」がいても不思議はないだろう。

名前である「泰四郎」はかなりいい名前だと思っている。まず「泰」の字が良い。泰山の安きに置く。泰然自若。天下泰平。素晴らしい!!おおらかでゆったりしていて、それでいて華があり雄大。「泰」の字は両手で水をたっぷり流す様子をあらわしているのだ。「泰」という文字自体もどっしりと構えていて、何を言っても動じない威厳を感じられる。

私「『帰りたい』から『かえりたいしろう』って名前にしようと思うんですけど、ふざけてるって思われちゃいますかね……」
泰「良き名ではないか」
私「でも……」
泰「相分かった、余が力を貸そう。他をどんな字にしようともこの『泰』がいる限り、名は安定し輝きを増すであろう」

こんな会話があったような気もする。栄光あれ!!
「泰」の字は「香江利泰四郎」の名前を支えている、まさに大黒柱なのだ。また、「泰」だけではなく「泰四郎」というのもまた良い。まずバランスが良い。「泰」と「郎」の間に画数の少ない「四」が挟まれることで、画数密度のガス抜きになっている。名前が六つの漢字から成り立つとなれば、比例して総合画数は多くなり密度が高くなる。「香江利」の字は画数が多いわけではないが少なくもない。「四」はこの名前の窓なのだ。

話は逸れるが「泰四郎」ということは、その名の通り香江利家の四男であろう。四人兄弟の四男、かなり良い。「四」の窓という機能性を持ちながら、四男であるという情報を与えることができるというのも評価できる。

しかし、「四」の窓があるとはいっても漢字六字に込められた情報量は多い。苗字字数が多ければ名前字数は減らした方がバランスが良いのは承知で、名前を三字にしたチャレンジ精神は買うが、煩雑な印象は否めず10位にランクインする結果となった。


【9位】 柳 杰宇 (リィウ・ジェユー)

『沼男は誰だ?』
中国マフィア・25歳・男

頭脳派の中国マフィアを作ろう!!と思って考えたのがこの名前だ。
一見して中国人だと分かるような名前を心がけた。苗字には様々な候補が挙げられたが、中国人名になんとなくのイメージしか持っていない私が選んだのが「柳」である。
まず、「リ」という音に中国人名っぽい響きを感じる。調べてみると中国で多い苗字は「李(リ)」「王(オウ)」「張(チョウ)」「劉(リュウ)」であった。あながち間違ったイメージではない。となると、「李」や「劉」が選ばれそうなものだが、「柳」が選ばれたのには他にも理由がある。
そう、日本人名としても読めるということだ。「柳」は「リィウ」でありながら「やなぎ」でもある。彼は中国の出でありながら日本語も話せる設定であった。日本で“ビジネス”をするなら日本語は必須である。
苗字を「柳」にすることで、「リィウ」という音としての中国人名らしさを残しながら「ヤナギです^^」と胡散臭く自己紹介もできるわけだ。これは偏見だが、「ヤナギ」という音はなんとなく偽名っぽさがある。素晴らしい。私は計らずも胡散臭くなっている奴が大好きだ。

一方、名前は「杰宇」である。苗字の「柳」で画数が多い分、こちらはシンプルな印象を受ける。「リィウ・ジェユー」という全体的な音も良く、知的さがにじみ出ている。
「杰」はあまり見ることが無い漢字であると思う。「傑」の異体字であり、「すぐれる。勝る。優れた人物。才能が抜きん出た人物。」という意味を持つ。「木」と「灬」を組み合わせた簡素なデザインでありながら安定感がある。説明が難しいのだが、私はこの漢字を可愛いと思っている。「杏」や「央」や「芥」みたいな可愛さがあると思う。しかし、その可愛さを「宇」がしっかりと受け止め固く締めることで、「柳」で醸し出した胡散臭さを損なうことなく風雅な印象に仕上がっている。


【8位】 萩原 廉太郎 (はぎわら れんたろう)

『星の神話、エンドロール』『仰ぎ見る遡行』
ピアノ講師・25歳・男

こちらの「廉太郎」は『荒城の月』『花』『お正月』などが有名な明治の作曲家・瀧廉太郎氏から命名した。「廉太郎」というのはかなり良い名前であると思う。「◯太郎」というのは日本のベーシックな男児の名であり、それ故、命名者の腕の見せ所となっている。この「廉」は「清廉潔白」の「廉」である。新美南吉の『うた時計』に少年・廉が自己紹介をするシーンがあるのだが、私はこのシーンがとても好きだ。

「これね、おじさん、清廉潔白の廉て字だよ」
「なんだい、そのセイレンケッパクてのは」
「清廉潔白というのは、なんにも悪いことをしないので、神様の前へ出ても、巡査につかまっても、平気だということだよ」

出典:新美南吉『うた時計』

自分の名前の漢字を説明するときにこういうことを言えるのはかなり良い。「れんたろう」という音も綺麗で素敵だ。

苗字は『月に吠える』で有名な大正の詩人・萩原朔太郎氏から命名した(というか「萩原廉太郎」は氏と一字違いである)。
「萩原」という苗字はなんとも風流で良い。派手ではないが主張のできる一本芯が通ったところがありそうだ。奇をてらっていないのに平凡な奴とは一線を画している、侮れない奴である。

「萩原廉太郎」には私が好きな創作物・創作者の要素をふんだんに取り入れている。それゆえお気に入りではあるのだが、オリジナリティには欠けるため8位となった。


【7位】 藤 春澄 (ふじ はるすみ)

骨董店主・27歳・男

私は「澄」という漢字が一二を争うくらい好きだ。「すみ」の音が良い。また、「春」という漢字も好きである。つまり「春澄(はるすみ)」なんてのは最高の名前であるわけだ。名前が四音であるというのも高評価である。私は名前が四音以上の男が好きだ。音が多い男は実直そうである。

一方で、苗字にはもう少し工夫が欲しかったというのが正直なところだ。苗字が漢字一字二音なのは、名前の漢字二字四音に対しバランスが取れている。しかし、「春澄」の苗字が「藤」なのは、何というか安易だ。イメージが統一されすぎている。藤の開花時期は春であるし、全体を通して春のうららの隅田川すぎるのだ。
良く言えば統一感のある名ではあるのだが、平坦でのっぺりとした印象も受ける。アクセントの有無や創意工夫も評価項目にあるため、私好みの「春澄」という名を擁しながら7位に落ち着く結果となった。


【6位】 百瀬 実篤 (ももせ さねあつ)

『Bumpy×Buddy』『欠落コディペンデント』
新米刑事・25歳・男

「百瀬実篤」、こいつは絶対に良い奴だろう。そうに決まっている。
まず苗字の「百瀬」だが、いかにも可愛げのある後輩という感じがする。数の位がつく苗字というのは多々あり、特殊な読みをするものも見受けられるが「百瀬」は良い。例えば、一ノ瀬は生意気そうな後輩だし、九十九(つくも)は食えない後輩といったイメージが個人的にはある。どいつも面倒を見始めればなんだかんだ先輩を密かにでも敬ってくれそうではあるが、「百瀬」は尻尾がちぎれる勢いで慕ってくれそうな雰囲気がある。また、「もも」のやわらかく連なる音が「瀬」と「実篤」の硬い印象を和らげている。

次に名前の「実篤」だが、これは本当に良い。「百瀬」で可愛げのある後輩という印象を与えておいて、「実篤」である。実は真面目に仕事はきっちりこなしますよというギャップ。素晴らしい。可愛いだけの従僕ではないのだ。
「実篤」と書いて「さねあつ」と読むのもかっこよく、痺れるものがある。
「篤」とは一つのことに熱心に打ち込むことを言う。「竹」と「馬」から成り立ち、全身に欠点のない馬を表し、隅々まで行き届く意味を持つ。また、「実(さね)」は物事の本質であり根本、真実を指す。

熱心に打ち込み、物事を追い求め、誠実で正直。真っ直ぐすぎて壁にぶち当たることもあるだろうが、先輩の背中を見て多くを学び成長する。逆に、その真っ直ぐさが先輩を救うこともあるかもしれない。名前からそんな人間像が浮かぶようである。


【5位】 牛尾 英千可 (うしお ひでちか)

『ルベライトジャム』HO1
教授・28歳・男

牛尾英千可。「潮」ではなく「牛尾」。「英親」ではなく「英千可」。安易に漢字変換せず、工夫を凝らしながらそれでいて洗練された作品に仕上がっている。

まず先に名前の「英千可」に言及しよう。私は「千」という漢字も「可」という漢字も好きだ。画数が少なく、直線とほんの少しの曲線で構成されたシンプルなデザインでありながら、大きな意味を持っている。「千」なんて三画しかないのに一〇〇〇を表しているのだからすごい。「可」という漢字は、亅と口を組み合わせて喉につかえてかすれ声を出す様子を表し、転じて紆余曲折を経てどうにか通過させる意味を持つ。完璧なイメージがあるのにそういう泥臭さを隠し持っているのも私好みである。
「ちか」の音を「千可」に変換したのは好きな漢字を採用したかったからというのも大きいが、「ちか」の音なら「誓」も私は好きだ。一番の理由は「千の可能性」といった意味合いを込められることである。すべてがすべからく良くなっているのではなく、自分の力で多くの道を拓いていってほしいのだ。そんな親心も感じさせられる良い名となっている。

「英」が名前の頭に来ているのも良い。「英」は英傑であり英知であり英名であり英気である。すぐれた才能や人物を指すことから人名に多く用いられている印象がある漢字だ。また、花の意味を持ち、華やかである。そういった、いわば“王道”を行く漢字「英」が名前の先導を切ってくれると、とても頼もしい。「英」の絶対的な安定感があるからこそ、後続の「ちか」は「千可」になれたのである。遊び心とは余裕があって初めて生まれるのだ。また、苗字と合わせると「英」はちょうど真ん中に来る。彼は「牛尾英千可」のセンターアイドルといっても過言ではない。人気投票で毎回一位、ソロ曲持ってる絶対的エース、それが「英」である。線対称で末広がりなデザインが見事に「牛尾」と「千可」を繋ぎ止めており、バランサーとしても活躍している。

苗字の「牛尾」は「ひでちか」の古風な響きに合わせた音となっている。「牛若丸」や「潮」の音を連想させられる。
また、「牛尾」は「牛」の一画目がハライ、「尾」の七画目がハネなのがいい味を出していると私は思う。ハライとハネが対角線上に存在しているため、画数に差があるのに釣り合いが取れているように感じるのである。
「潮英千可」にすると、前の方に重心が傾いてしまい、高密度な「潮英」と比較するとせっかくの「千可」がすかすかした印象になってしまうのだ。
「牛尾英千可」とすることで、五字七音という大きな字数を扱いながらも、全体的なバランスを保つことに成功している。

余談だが、弟は「英可寿(ひでかず)」である。兄弟で共通の漢字を二字も使用しながらもそれぞれにオリジナリティを持たせることに成功しており、こちらも素晴らしい出来だ。


【4位】 五十嵐 奈央 (いがらし なお)

『星へ至る棺』
大学生・21歳・男

「五十嵐」は三字かつ特殊な読みであることなどから、かっこいい憧れの苗字ランキングで上位の方に来る苗字であると思う。しかし、意外と全国人数は多く、身近に五十嵐さんがいるという人も多いのではないか。そういった点で、「五十嵐」は絶妙な苗字だ。創作物らしすぎず絶妙なのである。

男の名前に「なお」と女性名っぽい音を当てているのも良い。しかも二音である。これは私のイメージだが、な行・ま行は女性名、か行は男性名に多い気がする。さ行・ら行は中性的なイメージがある。また、二音の名前は女性に多く、四音以上の名前は男性に多い気がする。
これらを踏まえて考えると、男性名に「なお」と付けるのはかなりギャップを感じる。私はギャップが好きだ。
音で女性名らしさを出している分、漢字は「奈央」としている。線対称で素晴らしい漢字の連なりである。見事だ。


【3位】 北路 誠海 (きたじ せいかい)

『庭師は何を口遊む』HO4
刑事・36歳・男

渋い!!!!!最高だ!!!!!
まず苗字の「北路」だが、「北」で冷たい風がスゥと吹くのを感じる。私の身体をひやりと撫でて静かに通り過ぎていく。そこで「路(じ)」が来るのだ。濁音が来ると地に足がつくような心地がしないだろうか。「北路」は身を引き締めさせられる苗字だと思う。
名前の「誠海」も良い。かなり良い。こちらは書家の國井誠海氏から命名した。「星海」でも「青海」でもなく「誠海」である。誠(まこと)である。確固たる意思や信念を宿しているように感じる。

「北路誠海」の特筆すべき良いところは、「ki・ta・ji」と「i・ka・i」で韻を踏んでいるところにもある。声に出してみると心地よく、耳によく馴染むのだ。こういった音の感触は私の評価基準に大きな影響を与えており、「北路誠海」が激戦のランキング上位へ躍進する一因となった。


【2位】 早瀬 貴水 (はやせ たかみ)

『超新星』PC2孤高
高校生・17歳・男

「早瀬貴水」、美しい名前だ。背筋の伸びる思いである。森林浴へ行ってせせらぎに耳を傾けるのと同じくらいの効果が「早瀬貴水」にはあると思っている。空気が清浄になった気さえする。

「早瀬」という苗字は、いかにも勉学ができる優秀な人間という感じがする。ものすごく突出しているわけではないのだが、勉学にとどまらず運動や芸術系もそつなくこなせるオールラウンダーといった雰囲気を醸し出している。どこか秘密主義で、「私・僕だけが早瀬の良いところを知っている」と大勢に思われていそうだ。

名前が「貴水」というのも良い。まず「たかみ」という音の響きも綺麗であるし、「み」に「水」と当てているのも素晴らしい。そも、私は「◯◯み」みたいな「み」で終わる男性名が大好きだ。一見すると女性名らしさがあるが、中性的・現代的な名前(いわゆるキラキラネーム寄りな名前)というわけではなく、老齢の男性にこういった名前が見受けられることからも、むしろ由緒ある男性名の型であると思っている。
これは一例であるが、私が愛読している『カラオケ行こ!』(著:和山やま)に出てくる主人公一家の名前は、父58歳・晴実(はるみ)、長男20歳・正実(まさみ)、次男15歳・聡実(さとみ)である。実に良い名前である。作品自体も素晴らしいのでぜひ読んでいただきたい。さて、布教になってしまったので話を元に戻そう。
「海」「実」「巳」「三」「美」「弥」「未」「見」など「み」と読ませる名前に用いられる漢字はこの世に多々あるなかで「水」である。「早瀬」から始まって「水」で終わるのは、表現が難しいのだが“初志貫徹”といった感じがする。統一感がすぎると良くないが、こういったつながりには粋を感じる。また、私は部首のさんずい(氵)がつくような、水属性の漢字が好きだ。ポケモンでもポッチャマを選んでいた私である。

「貴」だけでは鼻についてしまう崇高さを「水」で濯ぎ落としてくれている。「貴水」という名は気高く、しかし愛すべき孤高なのである。


【1位】 湯木 キサラギ (ゆぎ きさらぎ)

『壊胎』
チンピラ・20歳・男

湯木キサラギ!!!!!!!
お前が1位だ!!!!!!!!!!!
「如月」ではなく「キサラギ」とした英断に惜しみのない拍手を!!!

この名前の良いところはまず、なんといっても「キサラギ」である。カタカナ四字を男性名に当てるというダイナミックさ。ここまで奇を衒われるといっそ清々しさを感じる。なぜこのような名前になったのだろうかという興味をそそられるし、どういった人物なのだろうかと考えてしまう。

ここで、ツイッターで「#いいねくれた数だけ自PCが文庫本になった時の冒頭一文を考える」というタグを使ったときに湯木キサラギについても書いたので引用する。冒頭らしくいい文章が書けたのではないかと思っているのでご一読願おう。

湯木キサラギは夏の盛りに生まれた喧しい男だ。その名から2月生まれと思われることが多いが、キサラギとは如月を指すものではない。まずは、キサラギの母親が犬を嫌っていた話から始めよう。

出典:@7777trpg のツイート#いいねくれた数だけ自PCが文庫本になった時の冒頭一文を考える より引用

そう、実は「キサラギ」は「如月」ではないのである。いや、名付け親である創作者の私は「如月」から名を取ったが、実際の湯木キサラギの親は違うというエピソードがあるという意味だ。エピソードがどうであれ、こういった名前に関する特異的なエピソードがある、もしくは想起させられるというのも「キサラギ」の良いところである。だって、男に「キサラギ」と名付けるなんて、絶対に何かエピソードがあるに決まっている。

また、音の響きに関しても素晴らしいものがある。「湯木」の「ぎ」と「キサラギ」の「ぎ」で最終音が同じであるのだ。苗字と名前の最終音が同じであるというのは響きを重んじる私の中でかなり高評価であり、そのうえ音が濁音の「ぎ」であるとくればランキング上位への選出は約束されたようなものである。「キサラギ」で音が多い分、苗字では二音にとどめているなど音数バランスにも気配りが感じられる。

「ゆぎ」を「由木」や「柚木」ではなく「湯木」としているのも良い。私が部首のさんずい(氵)など水属性の漢字が好きなことを抜きにしても、画数のバランス感覚において評価できる。名前がカタカナの「キサラギ」となれば当然画数は少なくなる。そこで画数の多い「湯」の字を起用しているわけだ。
5位講評のときの「潮英千可」のように画数の重心が前方に傾いていると思われるかもしれないが、「キサラギ」で四字とったことにより後方に画数密度が分散されているためこの場合は問題ないのだ。この画数の重心・密度について説明するのは難しいのだが、いかんせん私の感覚によるところが大きいのでご了承願いたい。

「湯木キサラギ」のような名前は、良くも悪くも今後作れるかどうか分からない。最高傑作と言っても遜色ない出来であると自負しているし、気に入っている名前だ。
湯木キサラギ、一位おめでとう。誇れ。



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ランキングは以上である。
私は自分の創作物についてたくさん語ることができたので満足だ。読んでくれた人も楽しめたのなら嬉しい限りである。

名前のランキングである以上、キャラクター愛とは一線を引いて考えるべきであるし、読者にもキャラクターの印象をあまり与えるべきではないと考え、キャラクター紹介は最低限にとどめた。最低限といっても職業・年齢・性別は書き残しておいたが、これでも「合理主義のシスコン」とか「赤目赤髪ポニーテール」とか「橙色吊目黒髪癖毛」とか「金髪紫眼」とか性癖部分は削ったのだ。
誰がどの属性なのかはご想像にお任せする。

「名は体を表す」とはよく言ったもので、名前にはさまざまなものが込められているし、表されていると思う。
名前について考えるのは楽しい。
みんなもやってみてね。

お終い。



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