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【写真×詩】 夢



木の下を、簡素な身なりをした子供達が走り回っている。声は聞こえず、顔もぼんやりとしか見えないが、確かに笑っているのがわかる。鐘の音が風音ともつかぬノイズに混じって聴こえてくる。祝福を知らせる為に打ち鳴らしているような音だ。僕もそこに行きたいのだが、声は出ず、動くこともできない。どうやら顔も体もないようだ。観念にでもなった気分だ。これは夢と言うよりは、蜃気楼に見る桃源郷、現実逃避のあたたかな迷いの丘、いつか辿り着きたいデジャビュ。映像だけは何回も見せるくせに、決して越えることのできない一線、透明な壁が現を断絶している。


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