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本当のユーザーとしてプロダクトを使ってみて気づいたこと

開発において必要不可欠な「ユーザー視点」。ユーザーの声を聞いたり、テストをすることで一定持てていると思っていました。ただ今回、本当のユーザーとなり、自社のプロダクトを使ってみることで気づきがありました。それについてまとめます。

はじめて「運用者」の立場になり、使ってみることに

私はリンクアンドモチベーションで「モチベーションクラウド(以下、MC)」のデザイナーをしています。MCは、企業の組織変革を支援するBtoBtoE向け(企業に所属する従業員向け)SaaSプロダクトであり、ユーザーは4種類います。

BtoBtoE向けMCのユーザー

自社でもMCを活用し組織づくりをしているため、これまでメンバーやマネジャーである「利用者」としてMCを使うことはありましたが、設定などを行う「運用者」(主に企業の人事担当者が担当)としてのリアルな利用経験はありませんでした。ただ、運用者が利用する管理画面をデザインする者として、何か学びがあるのではと思い、人事に依頼して代理で設定などをさせてもらえることになりました。

ユーザーになってみて気づいたこと

主な気づきは以下です。

1.複数の運用者がおり、コミュニケーションを取らないこともある
私が所属する開発組織は、管理本部として括られています。この上部組織にあたる管理本部側にも別のMCの運用者がいるため、複数名で設定をする体制です。よって設定の際には、内容の重複や影響範囲を気にしながら作業しますが、その間も直接のコミュニケーションはほぼありませんでした。「聞かれるのも面倒だろうな」と考えていたためです。

お客様からも、複数の人事の担当者がいる状況はよくお聞きしますが、私はこれまで、みなさんが近くに座って気軽にコミュニケーションとっているようなイメージを持っていた気がします。もちろん企業によって環境の違いはありますが、階層の違いやリモートワークの導入などにより、直接コミュニケーションを取らないこともあるという前提を持てたことが学びでした。

なお、この状況では、編集履歴を示す機能や、最終更新者の情報が表示される機能が便利でした。

MCの編集履歴機能一例



2.運用者の変更があっても、利用者向けの設定は同様でなくてはならない
運用担当の異動や役割の変更は頻繁に起こります。MCには組織状態を診断するためのサーベイ機能がありますが、私の組織では、前回と今回(私)、そして次回のサーベイ運用担当者は同じ者ではありません。ただこうして運用者が変わるたびに利用者側の設定が変更されると混乱が生じてしまいますので、利用者側の設定は理由がない限り同様にしておくことが望ましいです。
今回私は一部の設定にて前回との差を生じさせてしまい、メンバーから問い合わせを受けてしまいました。

スムーズに前回の設定を引き継げること、できれば前回の設定内容をプロダクト上で確認できる機能の重要性を感じました。MCでは一部、前回の設定が確認できない機能があり、不便さを感じました。

3.緊張感と精神的負荷
本当のユーザーになる前と後で最も理解度に違いを感じたのはこの部分です。
お客様から「従業員へのアナウンス前に内容を確認をしたい」「テストできる環境が欲しい」という要望はよくお聞きしていましたが、必要性を肌で感じました。ミスをしないよう細心の注意を払って設定し、何度も確認し、メンバーを迷わせることがないよう丁寧にアナウンスも行いました。
そんな中でもメールが送られると思っていた人に送られなかったり、設定内容が反映されるまでタイムラグがあったりと思わぬ仕様に振り回され、設定からサーベイ完了までの過程で精神的な負荷がかかりました。

私たちの会社の規模でこの状態ですから、エンタープライズ顧客の担当となればその緊張感や負荷は数十倍にもなるはずです。運用者の皆さんがより簡単に安心して使える機能を提供する必要性を改めて感じました。

今後大事にしていきたいこと

もう一つ感じたことがあります。それは、個人の感情は表出されないということです。

今回、運用者としてプロダクトを触っている間、振り返るとこんな感情を持っていたと思います。

  • できないと思われたくない

  • わかってないと思われたくない

  • 完璧にやりたい

ただもし私が利用中の気持ちをインタビューで聞かれたら、ここまで素直に伝えることはないでしょう。

花王さんのファブリーズが「臭いが取りたいが、洗濯はしたくない」、味の素さんのCook Doが「手抜きと思われたくないが手料理はできない」というペインを掴んだことでヒットに繋げたと聞いたことがあります。"普通の主婦が発明した商品が大ヒット"みたいな話がよく出てくる理由は、この表出しにくい感情部分の理解の差なのだと思います。

全てのユーザーをリアルで体験することは難しい場合も多いですが、「表出している言葉だけでユーザーを捉えていないか?」「必ずあるであろう個人的な感情も掴みにいけてるか?」と問いながら、真のユーザー視点を持った良い体験を作っていきたいと思っています。

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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