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G.I.オレンジ完全ディスコグラフィー

「好き」・「嫌い」を書くことと誹謗中傷は違う

今、あるnoteの記事を読んで腹立ってます。G.I.オレンジに関する記事だったんですが、彼らについては確かに日本でしか売れなかったという事実はあります。また父親の出資で日本のレコード会社の契約を取り付けたというのもある程度事実らしいです(が、商売に聡いレコード会社がコネだけでレコード出すわけもない)。しかし、それをもって彼らをディスるのは違うんじゃないですかね?この記事を書いた人はG.I.オレンジに限らず、他アーティストを小馬鹿にしたような文章があちこちに見られ、実に不愉快になります(あまりにムカつくのでリンクも貼らない)。
個人の好き・嫌いはしょうがない。好みなんだから、それを書くのも何の問題ない。だけどバカにするのは違うでしょう。
というか、カール・ウィットワースのソングライティングはもっと評価されていいかと。

ということで、G.I.オレンジの完全ディスコグラフィーを書く

実は今回のnoteの記事に限らず、彼らに関するブログ記事は概ね揶揄するような内容になっており、ファンである私としては悔しい思いもあるので、ディスコグラフィー完全版の記事を書きます。彼らのヒストリー的なものはWikipediaでも見てもらうとして、そこにも触れられていない点を補足します。
「彼らは日本でしかレコードを出せなかった」みたいな話が流布されていますが、実は彼らの正式なデビューは本国イギリスで、しかもあのEMIと契約し、シングルを出しています。そのシングルのカップリングがそのまま日本のCBSソニーからのデビューシングルとして採用されているのが事実です(一説では、CBSソニーのスタッフがロンドンでこのシングルを見つけたことから日本デビューを企画したとも)。本国ではバックス・フィズやデヴィッド・エセックスの前座としてツアーもしていたそう。
では本編。

デビューシングル "Fight Away the Lover"
邦題「涙でブレイク・アウェイ」。彼らの楽曲は多分に60年代ポップス的な雰囲気を漂わせていますが、この曲は特にそれが濃厚。「サイキック・マジック」のイメージで聴くと、ギターバンド的なサウンドの印象が強いのに驚くかも。ズバリ、いい曲です。 私が一番好きなのもやはりこの曲。

ちなみにMVとレコード・ヴァージョンは微妙にアレンジ(かミックス?)が異なっています。
なお、YouTubeには出所不明の別ミックス(というかただただ歌メロを繋いだロング・ヴァージョン)があり、1983年との表示がありますが、12インチが出ていたという話は聞いたことがない上に、イギリスでの7インチシングルは1984年に出ているので、どうも怪しい。ただ画面に表示されているジャケットはEMIで出ていた本物。

アルバム未収録曲 "Every Single Day"
シングル「涙でブレイク・アウェイ」のB面に収められ、アルバム未収録の曲。未CD化のままです。彼らには珍しくレゲエのリズムを使った曲。さすがにYouTubeでもこの曲はなかった…。なお、2015年の再結成ライヴでは演奏され、私のようなコアなファンは狂喜でしたw

セカンドシングル "Psychic Magic"
彼らの代名詞であるセカンド・シングル「サイキック・マジック」。他の曲と比べると逆回転が入ったりと明らかに作り込みが丁寧で、シングルにすることを想定した曲だと思われ。弾けるようなポップ感覚が溢れ、サビではギターのカッティングが印象に残ります。なおこの曲は7インチシングル以外に12インチのプロモ盤も出ています。

アルバムを締めくくる "I Don't Want Your Yesterday"
「サイキック・マジック」のシングルB面に収録され、1stアルバムのラストにも収録された曲。リズム展開が変化するところがミソの秀作。邦題は「ドント・ウォント・ユア・イエスタディ」。

さて、ここからは1stアルバム収録曲です。

スピード感あふれるA-1 "Too Late"
前掲の"I Don't Want Your Yesterdays"同様、アップテンポのロック・ナンバーで彼らのアルバムは幕を開けます。中間部でラテンぽいアレンジが入ります。ファンカラティーナっぽい感じ。邦題は「トゥー・レイト」

隠れ胸キュン名曲 A-2 "Two Hearts Beat under One Roof"
アルバムの2曲目は胸キュンもののメロディーがたまらない、やはり60年代ポップスぽさを持った曲。ソングライターであるカール・ウィットワース本人も気に入っているとのこと。個人的には"Fight Away the Lover"と並んで大好きな曲です。邦題は「2つのハート」。

ライヴ定番盛り上がり曲 A-3 "Dance My Soul"
当時も2015年の再結成時もライヴの1曲目に演奏された、ライヴ映えする曲。メロディーよりノリ重視の曲でした。音質も画質もよくありませんが、85年の大阪のライヴ映像が残されています。邦題は「ダンス・マイ・ソウル」

これも隠れ名曲 B-2 "Chance of Survival" 
アルバムA-4が"Fight Away the Lover"、B-1が"Psychic Magic"なので、B-2のこの曲へ。これまたメロディアスかつ哀愁がたまらない傑作。サビの部分のアコギが最高。ファンの間でも人気の高い曲です。

このMVはカール本人によると、テレビ向けに編集されたものだそう。邦題は「チャンス・オブ・サバイバル」。

3rdシングル B-3 "One Good Kiss"
ライヴでは振り付け付きでファンにもやらせる演出がお馴染みの曲。ファン人気も高いポップバラッドで、サード・シングルとしてB面にA-2 "Two Hearts Beat Under One Roof"とメンバーのインタビュー(「G.I.オレンジ ときめきハート・トーク」と題されていた。原題?は"G.I.Orange Heart Talk in On 5th Japan August '85")を収録。

レコード会社もアルバムからのシングルカットではあまり売れないと見越したのか、安上がりなスタジオライヴのMVですが、中古市場では結構見かけるシングルなのでそれなりに売れたのではないかなと。邦題「ワン・グッド・キッス」。

コール&レスポンス B-4 "G.I.Orange"
彼らのバンド名をそのまま曲のタイトルにしたもので、南国っぽい雰囲気で始まり、サビの部分はライヴでは観客とのコール&レスポンスをやるのが定番。が、さすがにこれはお遊びっぽい曲。
YouTubeにはどうやらないようです。邦題は「G.I.オレンジ」。ということでファーストアルバムは前述の"I Don't Want Your Yesterdays"で終わります。

待望の新曲 "Honeywood"だったが…。
日本で好セールスをあげ、CBSソニーも期待したのか、早々と彼らのクリスマス・アルバムを企画します。そこからシングルカットされたのがこの"Honeywood"。ファンにとっても待望のニューシングルだったんですが、さすがに時間がなかったのかアレンジが散漫で、いかにも突貫工事っぽい出来で、ここでファンの一部が離れたんではないかと推測。”Psychic Magic”同様のファンタジー路線で、いいメロディが詰まっているんですけどね。

彼ら自身も満足していないかったのか、再結成ライヴでは"One Good Kiss"、”Psychic Magic"は2回も演奏したのに(曲が少ないからね)このシングルナンバーは演奏されず。邦題は「ハニーウッド」。

クリスマス・スタンダード A-1 "Winter Wonderland"
ここからはクリスマス・ミニ・アルバム(未CD化)で、そのタイトル曲「ウィンター・ワンダーランド」。前述の”Honeywood”のシングルB面にも収録されています。ご存知クリスマスのスタンダードナンバーで彼ららしいポップ・アレンジですが、やはり"Honeywood"同様、未整理なアレンジのまま出してしまった感が。

最後の大傑作 A-2 "The Whole Land Is Sleeping Tonight"
ここまでは急遽仕上げられた感の強い曲が続きましたが、こちらは元の曲の出来が圧倒的に良いバラッド・ナンバー。アコギの静かなイントロから始まるセンチメンタルな曲ですが、ラストにブラスが入り、やや大味な締め方になったのが残念。邦題は「スリーピング・トゥナイト」。

日本製ミックス? B-1 "Psychic Magic" (Remix Version)
A-3に前述のシングル"Honeywood"が収録され、B面へ。こちらは大ヒット曲のリミックス。当時日本にこの手の12インチミックスが出来るリミキサーはいなかったと思うのですが、頑張った感はあるもののやや無理のあるロング・ヴァージョンに仕上げています。ミニアルバムの目玉として作成されたんでしょうね。

意外なカバー曲 B-2 "I Wish It Could Be Christmas Everyday"
ミニアルバムの最後を飾るのはなんとロイ・ウッドのクリスマス・スタンダード曲、「毎日がクリスマス」。私はオリジナルより彼らのヴァージョンを先に聴いてしまいました。オリジナルがゴージャスなアレンジで知られるだけに、突貫工事のこのアルバムではやはり軽い仕上がりに。ちゃんとアレンジしたら良いカバーになったのかもしれないのに。YouTubeにもアップされておらず。

パワー・ステーション風 "Take Me to Your Leader"
ミニアルバム発表後、ずいぶん間が空いたイメージでしたが、実際は一年足らずで登場した最後のシングル。さすがに時間をかけただけあり、ミニアルバムとは雲泥の差の緻密なアレンジがされていますが、当時一世風靡したパワー・ステーション風のゲートエコーがかかったパワーポップに。そのせいで曲調的には彼ららしい曲なのに別のバンドのように。歌詞は彼らおなじみのファンタジー路線。当時このシングルは7インチがオレンジのカラービニール盤、そして12インチ盤も登場。一般の洋楽ファンにはほとんど存在すら知られてないシングルでしょうが、中古市場では比較的よく見つかるので、コアなファンはかなり買ったと思われ(私も7インチ、12インチ両方持っています)。邦題は「テイク・ミー・トゥ・ユア・リーダー」。

MVはポリスの"Synchronicity II"やニック・カーショウの"When a Heart Beats"っぽい。
で、こちらが12インチのエクステンデッド・ヴァージョン。前述の"Psychic Magic”のリミックスより遥かに手が込んだ作り。12インチのB面にはこの曲のインストヴァージョンも収録。

東洋っぽさもある B面 "In The City"
一方、B面はザ・ジャムのそれとは別の彼らのオリジナルで、"Take Me to Your Leader"と似た展開を持った曲ながら、なんとなく東洋っぽいアレンジがされた不思議な感触が残る曲。

さすがにアナログからリッピングした音なので、音質は最悪ですが、よくYouTubeに上げてくれたなと。ちなみにこのシングルは未CD化のままで、2015年のリマスター新装盤に"Winter Wonderland"も一緒に収録してくれるかと期待したんですが…。と、実は"Take Me to Your Leader"は一度だけCD化されています。当時CBSソニーが出していたコンピ盤「CFベストヒット」に収録されました(持ってます)。

リマスター盤に収録された新曲 "Keep that Light"
ファーストアルバムはずっとリマスターされず、ネットオークションではCDはプレミアが付いて5,000円以下ではまず手に入らなかった(中古アナログは普通に手に入る。私は初版を中古で割と早くゲットしていた)のですが、2014年の再結成の際についにリマスター化(CBSソニーからではなく、Vinyl Junkieからのリリース)。その際に収録された新曲のうちの1曲。彼ららしい活き活きとしたポップロック・ナンバー。再結成ライヴでも演奏されました。邦題「キープ・ザット・ライト」。

もう1つの新曲 "Better Day"
リマスター盤に収録されたもう一つの新曲がこの「ベター・デイ」。こちらも再結成ライヴで演奏されました。こちらはあまり特徴のないポップ・ナンバーでアレンジもややお手軽感のあるイメージ。

未だ出ない再結成アルバム
ところで2014年の再結成時にアルバムを制作中との話が出ていたんですが、2024年現在出ないまま。再結成ライヴでは"Blue in Blue"、"We Are the Ones"といった未発表曲を演奏していたので、間違いなく制作はしていたと思うんですが…。今年結成40年なので期待したいところ。メンバー間の仲も悪くないようです。なお2016年にカールとドラマーのギャリー・ホルトがSoundCloudに”12”というアルバムをアップしており、2019年にはソロEP “Open Space”を発表。弟のサイモンもソロ作をYouTubeにアップしています。

海賊盤に収録されたカール・ウィットワースの曲
リマスター盤が出るまで、プレミアで高騰していたのを見計らってか、2010年頃になんと彼らのブートレッグ(海賊盤)が出ています。タイトルは"The Works of Karl Whitworth / G.I. Orange and Other Rare Unreleased Remixes"。収録曲は以下のようになっていますが、そこにはバンド結成前と思われるカールのソロ作が2曲収録されていました。どうやら1981-82年頃にソロ名義で出していたシングルのようで、1stシングルが"Names Numbers & Places" / "Identity"、2ndシングルが"Myth of Constance" / "Talisman"。そのうち海賊盤にはA面の2曲が収録。しかも後者はMVがYouTubeにあります(カール本人のチャンネルより)。

G.I.オレンジで出していても違和感のないポップナンバーです。

ジャケ写は共にDiscogより。欲しい。

ちなみに海賊盤には未CD化だったミニアルバム"Winter Wonderland"が全曲収録されるという快挙の一方で、"Psychic Magic"はオリジナル・ヴァージョンだけがカットされ、なぜかExtended Mixという初登場のヴァージョンが収録。ラストシングル"Take Me to Your Leader"は両面とも未収録。

このCDを出したブートレガーは、同じくCDがプレミア化しているナショナル・パスタイムやローマン・ホリデー(未CD化のセカンド「涙のラスト・クルーズ」を中心に)も海賊版を出していた。

いかがでしたか?残念ながら再発されたリマスター盤もすでに終売で、またプレミアが付いているようです。が、アナログなら簡単に手に入りますから、これを機に聴き直してみてください。いい曲を書くバンドだったんですよ。


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