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パスカルズとホルモン鉄道って同ジャンル?「高円寺アンダーグラウンド音楽」という提案

分類不可能な音楽性を持つアーティストをどう分類するか。それは音楽好きや評論家にとっての大きな問題です。

多くの場合、これらはたくさんのジャンル名を並べることでクリアされています。「ハードロックとテクノを往復し、アンビエントな空気を持ちつつブラックミュージックの潮流を感じさせ、かと思えばシューゲイザー風の~」というような感じです。

とはいえ、多くのミュージシャンは自らのジャンルを自称しているので、たとえばいくらオペラ的な楽曲を書いても、クイーンがハード・ロック・バンドであることに変わりはありません。

しかし現在「たま周辺」「たま界隈」と言われがちなシーンのミュージシャン、つまり元たまメンバーやその周辺のバンド/ミュージシャンたち(知久寿焼、石川浩司、滝本晃司、柳原陽一郎、パスカルズ、ホルモン鉄道などなど)は、自らのジャンルを強く決定せず、いちシーンを形成している割に音楽的共通性が薄く、その反面、共通したファンがついていることが多くなっています。

ネットで検索してもトレンドブログや通販サイトばかり出てくる世の中、若者はTwitterやInstagram、TikTokなどで情報を得ているそうです。
それは転じて、シーンの名称がハッキリしない界隈が見つかり辛くなっているということでもあります。

ちなみにTwitterの検索アルゴリズムでは、「たま界隈」と検索すると主に「忍たま界隈」が引っかかり、バンドの話題は出てきません。
そういう状況は、ちょっと嫌だなあと思います。

そこで今回、「たま周辺」のミュージシャンが奏でる音楽を「高円寺アンダーグラウンド音楽」と称することを提案したく思います。

1.なぜジャンル分類が必要なのか

正直なところ、私は音楽ジャンルの細分化について否定的な考えを持っています。
それはジャンル名を幾つも並べる評論が「連想ゲーム」的になりがちで、そのアーティスト固有の音楽性を表現できていないと感じることがあるからです。

たとえば、ある女優の顔を表現するのに、「目はAさん、鼻はBさん風だがCさんの要素もあり、唇のぷっくり感はDさん」みたいな文章を書く必要はありません。
それに、あまり詳しくない人が読んだとき「結局どういうことだってばよ?」となってしまう解説は、スマートではないと思います。

その反面、ジャンル分類が難しい音楽シーンは「リスナーが類似アーティストを見つけづらい」という欠点を持っています。

初めてたまを聴いて「こんな不思議な音楽をもっと聴きたい!」「このバンドを聴く人は他にどんなアーティストを聴いているんだろう?」と思ったとき、ビギナーは何と調べれば良いのでしょうか。

現在、この問いに明確な答えは無いと思います。Wikipediaではフォークロックとされているたまですが、フォークロックと検索してもたまみたいなバンドにはなかなか出会えません。

こういうとき「検索ワードとしての分類名」があれば、新規ファンは類似アーティストを見つけやすくなります。
また、分類名があればシーンを俯瞰的に分析した記事などへのアクセスが容易となり、シーンの全容を把握しやすくなるかもしれません。

ジャンル分類は評論家が語るためではなく、リスナーのためにあるべきです。

そういった発想で今回、「高円寺アンダーグラウンド音楽」という名称を捻りだしました。こちらは現状「たま界隈」と同義語ではありますが、ひとつのバンドを音楽的・精神的支柱とするシーンではないので、バンド名ではなく地名を冠しています。


2.高円寺アンダーグラウンド音楽とは?

高円寺アンダーグラウンド音楽とは、1980~90年代の高円寺辺りで居住/活躍していたミュージシャンたちによる芸術性・文学性の高い音楽、またはその影響下にある音楽の呼称です。

特徴としては以下の点が挙げられます。

・70年代フォークにルーツを持つ
・芸術性を最優先しがち
・各アーティストの音楽は個性的
・既存枠の追求よりも独自路線の開拓を優先する
・歌詞が独特
・世界観構成やコンセプト性を大切にする
・拍子が変則的な楽曲が多い
・楽器構成が独特なバンドが多い
・下ネタ/放送禁止用語の使用に躊躇いが無い
・クラシックや前衛音楽と隣接している
・演劇や舞踏と近接している

また、現在活動する高円寺アンダーグラウンド系ミュージシャンの多くはライブイベント<地下生活者の夜>の出演者であったり、その出演者の関係者であることも挙げられます。

先に挙げた特徴を持ちつつ、各アーティストの音楽性には統一感が無いことも特徴的です。たとえばたま~ホルモン鉄道~パスカルズ間に音楽理論的な類似性はあまりありません。
しかし多くのリスナーは「類似アーティスト」として彼らを見ており、同じファンがついています。

この傾向をジャンルとして格納するために、「高円寺アンダーグラウンド音楽のミュージシャン」の定義は以下とさせていただきます。

必須条件(いずれか1つを必ず満たすもの)
・<地下生活者の夜>に出演したアーティスト
・<地下生活者の夜>の出演者と強い縁があるアーティスト
・<地下生活者の夜>の出演者をメンバーに含む集団
・<地下生活者の夜>の出演者に大きく影響を受けているアーティスト
他条件(いずれか3つ以上当てはまるもの)
・アンダーグラウンド音楽のアーティストを自称している
・70年代フォークにルーツを持つ
・楽曲の個性や芸術性を優先している
・“普通じゃない/面白い音楽”を追求している
・通常のJ-POPでは使わない楽器を使っている
・客観的に見て歌詞が独特
・拍子が独特な楽曲が多い
・楽器構成/使用楽器が珍しい
・下ネタ/放送禁止用語の使用に躊躇いが無い
・クラシックや前衛音楽と隣接している
・アンダーグラウンド演劇/舞踏と近接している

この条件で、多くの人がイメージする「たま周辺」のアーティストはほとんどカバーでき、「ナゴム系」「イカ天系」との差別化もできると思います。
「この条件を加えた方がいいんじゃないの?」がありましたらいっぱい教えてください。

3.おわりに

「高円寺アンダーグラウンド音楽って名前を作ったよ!定義はこんな感じだよ!」という記事ではありますが、「みなさん積極的に使ってください!」というより、「名前があるほうが検索・研究しやすくなるので、後世のために名前をつけませんか?」的な提案がメインです。

名称について啓蒙や宣伝を行うつもりはあまりありませんが、「このアーティストは高円寺アンダーグラウンド音楽界隈のアーティストだと思う!」「高円寺アングラ界隈のライブを観て来た!」という際には、ハッシュタグ「#高円寺アンダーグラウンド音楽」or「#高円寺アングラ」をつけてツイートしていただけると幸いです。


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