安藤さやか

1997年生まれ 千葉県の田舎に暮らすフリーの音楽ライター アイコンは「しまっこ ゆる…

安藤さやか

1997年生まれ 千葉県の田舎に暮らすフリーの音楽ライター アイコンは「しまっこ ゆるアイコン」にて作成しました(https://picrew.me/image_maker/1352266

最近の記事

【コラム】フレディの鎮魂歌から“すべての者の歌”へ──「ショウ・マスト・ゴー・オン」に見るクイーン+アダム・ランバートの変質

2018年、クイーン+アダム・ランバートとしてラスベガス公演を行ったときのアダムは、荷台にたくさんのお花を積んだ可愛い三輪車に乗ってキュートに「バイシクル・レース」を歌っていた。 あれから5年。可愛かった自転車はもはや公道を走れないどころか“バイクの形をした何か”としか言いようがないほどギランギランになり、「アダムくん、それ……なに……?」という感じ。その上にM字開脚で跨ってカメラに向かって腰を振るアダムと、魅惑の腰つきに熱狂する4万5千人の観客たちの様子は、ふと我に返れば

    • 【コラム】フレディ亡きあとのクイーンは歩みを止めるべきなのか?──QAL東京公演直前に考える

      2023年を締めくくる紅白歌合戦に出てきたQALは、なんか、凄かった。そりゃまあYouTubeだけでも9億回再生されてる曲を、半世紀ものキャリアを第一線で走り続けるバンドが、彼らの選んだ最高のヴォーカリストと一緒に披露しているのだ。なんかもう航空ショーを見ていたら突如巨大UFOが出現してただ通り過ぎて行ったみたいな感じだった。SNSで感想を眺めていても「凄すぎてわけわからん」みたいな感じだったので、多分UFO見た時の人間の反応と同じだと思う。 さて、QALの活動が報じられる

      • 【コラム】地方都市で過ごす滝本晃司っぽい優雅な一日

        音楽を聴いていて「?」と思っていた単語や表現が、ある瞬間「!」になった経験って、あるよね。 随分と馴れ馴れしい書き出しになってしまったが、多分みんな一度はそういう経験があると思う。子どもの頃は『ケロロ軍曹』のOPの「買った方が安いね晩のおかず」という詞があんまりピンと来なかったのだが、大人になった今、こんなに共感できる詞は他にないと思っている。揚げ物系は量にもよるが1人分ならマジで買った方が安い。 そんなことじゃなくても、ふと肴が炙ったイカでよくなったり、友人の結婚の報せ

        • 【ディスクレビュー】金井太郎×Sou Kanai、初の父子共作『Kanaibiza』で重なるふたつの世界

          最初に瞼の裏へ浮かんだのは、透き通った海と砂浜を削るささやかな波。そして鼓膜を包むように膨らむ泡、その向こうで微かに聞こえる群衆の騒めき。太陽が熱く照り付ける海辺の街の景色を空想しながら作品詳細に目を滑らせると、この作品がスペイン・イビサ島で夜通し行われるクラブイベントをイメージしているという一文を見つけた。作曲家は己の瞳に見える世界の姿を心で咀嚼し、指先から吐き出して音楽を作る。先入観なく楽曲を聴いて思い浮かべたものとライナーノーツに記されたことが同じだったとき、私はアーテ

        【コラム】フレディの鎮魂歌から“すべての者の歌”へ──「ショウ・マスト・ゴー・オン」に見るクイーン+アダム・ランバートの変質

          【コラム】音楽ライター・安藤さやかが思う名曲の条件とは

          人類史上究極の名曲とは何か。そんな安っぽい問いは何度も繰り返されてきたし、その答えもいろいろあるが、結論から言ってコレの答えは「そんなもん人による」の一言なのである。 アナタが好きな曲は私の嫌いな曲。私の好きな曲はアナタの嫌いな曲。私の“好き”は誰かの地雷。この言葉を心の真ん中に置いて生きていこう。 ……しかしそんなことを言っているとコラムが5行で終わってしまうので、今回は年始特集として「音楽ライター・安藤さやかが思う名曲の条件」というテーマで話を進めて行きたいとおもう。

          【コラム】音楽ライター・安藤さやかが思う名曲の条件とは

          【インタビュー】団地ノ宮、“いきものたち”が閉じ込められた第1章締めくくるニューAL『ゆうやみずかん』

          ──ニューアルバム『ゆうやみずかん』、聞かせていただきました。とても良かったです。一番気になったのはおふたりの音楽歴なのですが、これまでどんな形で音楽をやってきましたか? 弥子:音楽を始めたのは完全に両親の影響です。父と母がバンドをやってる人で、地元でちょっと有名でして。父は地元のゆるキャラソングを作ったりもしています。なので、「歌が上手いと父も母も嬉しそう」みたいなことが結構多かったです。お姉ちゃん(琴子)は中学2年生くらいまでヤマハ教室に通い、私は合唱団に入っていました

          【インタビュー】団地ノ宮、“いきものたち”が閉じ込められた第1章締めくくるニューAL『ゆうやみずかん』

          【素人レビュー】耳で聞く空間芸術。neuheimeraltz『音楽の思い出』

          強烈な雑音のもとで赤黒い煙が渦巻く工業地帯に、古めかしい機械の中で緑色の音波が撓む様。金属の擦れ合いやプレス音。工場排水の混ざった波音。その中で築き上げられる無垢な未来都市。neuheimeraltzのアルバム『音楽の思い出』を聞いて真っ先にイメージしたのは、そんな風景だった。 初めにことわっておきたいのだが、私はこのジャンル、つまりノイズがざあざあ鳴って断片的な電子音のメロディが流れ込むタイプの音楽には明るくない。というかマジで(若干齧った程度の)素人である。どんな機材を

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          邦楽は好きじゃないけど、「最近の邦楽はダメ」って言われるとムカつくって話

          「社会問題について歌わない音楽は格が低い」 「社会問題について歌わないから邦楽はダメ」 そんな意見は事あるごとに、具体的にはぶっちゃけアーティストの行動や言動が炎上するごとに聞かれます。 調べてみるとこの意見、有名な音楽ライターからいちリスナーまで同意している方が多い模様。 ですが私はこの意見に1ミリも賛同できません。いやまあ一応音楽史やロック史は一通り勉強してるので、心の底を探れば0.5ミリくらいは賛成してるかもしれないけど、それにしたって「いくらなんでもその意見は雑す

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          【ONE PIECE】トラファルガー・ローの能力って作劇の邪魔じゃない?って話

          ※注:本記事に『ONE PIECE』自体を批判する意図はありません。 最近、『ONE PIECE』をアニメ/漫画の両方で鑑賞しています。自分が生まれた年に連載がスタートした漫画ということで、これまで敬遠してきたものの、終盤に差し掛かりつつある作品をみんなと一緒に楽しみたい、と思って手に取りました。 感想としては「やっぱ文句なしに面白いな」という所。さすが長期連載作品、麦わらの一味に好きなキャラがいないという点を除いてはめちゃくちゃ面白いです。致命的じゃねえか。でもサブキャ

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          【2022年夏最新版】SOUL’d OUT怪文章【今更語るVOODOO KINGDOM】

          オタクに優しいギャルは実在しないと言われているが、オタクに優しいラップグループは存在する。それがSOUL’d OUTだ。 「ネットには年1くらいでSOUL’d OUTにまつわる怪文章がアップされる」──実しやかに囁かれている噂だが、この文章を書いている私はこれまで数年ごとに別名義を使ってSOUL’d OUTにまつわる怪文章を書き散らしてはネットの海に放流している。つまり、フタを開けてみたら5人くらいが怪文章をローテーションしているだけなのかもしれないのである。それでも十分多

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          やっぱり「高円寺アンダーグラウンド音楽」は難しい。「地下生活者周辺」「たま界隈」の新名称を考える

          こんにちは、安藤さやかです。 先日、<地下生活者の夜>周辺の音楽シーンを「高円寺アンダーグラウンド音楽」と呼称しませんか?という記事を公開いたしました。賛否両論でした。 記事の内容を簡単にまとめますと、 1.「たまみたいな音楽をもっと聴きたい!」という時、ジャンル名が無いのは不便 2.そこで「高円寺アンダーグラウンド音楽」という名称を提案したい 3.定義は<地下生活者の夜>周辺かつ幾つかの条件に当てはまるアーティスト 4.使うかどうかは自由だが、ぜひご一考いただきた

          やっぱり「高円寺アンダーグラウンド音楽」は難しい。「地下生活者周辺」「たま界隈」の新名称を考える

          パスカルズとホルモン鉄道って同ジャンル?「高円寺アンダーグラウンド音楽」という提案

          分類不可能な音楽性を持つアーティストをどう分類するか。それは音楽好きや評論家にとっての大きな問題です。 多くの場合、これらはたくさんのジャンル名を並べることでクリアされています。「ハードロックとテクノを往復し、アンビエントな空気を持ちつつブラックミュージックの潮流を感じさせ、かと思えばシューゲイザー風の~」というような感じです。 とはいえ、多くのミュージシャンは自らのジャンルを自称しているので、たとえばいくらオペラ的な楽曲を書いても、クイーンがハード・ロック・バンドである

          パスカルズとホルモン鉄道って同ジャンル?「高円寺アンダーグラウンド音楽」という提案

          【ライブレビュー】鮮烈・壮絶・妖艶・破壊的。カトラ・トゥラーナ!

          鮮烈・壮絶・妖艶・破壊的。カトラ・トゥラーナの音楽に抱く第一印象はそれだったし、2時間のライブを観たあとも変わっていない。ついでに「ヴォーカルは絶世の美女」という印象も全く変わっておらず、ステージに立つ広池敦は2022年も本当に美しかった。 7月22日、吉祥寺・Star Pine's Cafeにカトラ・トゥラーナのライブを観に行った。この日は久々リリース(なんと36年ぶり!)のアルバム『REBOOT』のレコ発ライブということで、開演前には「久しぶり~!」と再会を喜ぶファンの

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          【ライブレビュー】シルバノク、標本と剥製が眠る輝く森の祝祭

          人間は罪深き生き物なので、ときどき珍しい楽器の音色を聴いて浄化されなければならない。私はそういう思想のもとに生きている。まあ端的に言って筋金入りの希少楽器オタクである。 7月21日、シルバノクのライブ<夜の森博物誌 第四話 “祝祭の夜明け”>に行って来た。会場はおなじみの吉祥寺・STAR PINE'S CAFE。同い年のライブハウスとして勝手に親近感を感じているが、実際私がこれまでに行った全てのライブのうち、半分がこの会場で行われている。嘘である。 シルバノクは大竹サラが

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          【ネオ昭和感が激エモ】漫画『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』がヤバい

          双葉社様より漫画『「たま」という船に乗っていた さよなら人類編』が届いた。思えば第1話が突如TwitterのTLに流れて来て、「すっげえ企画が始動したもんだ!」と舌を巻いたのも思えば随分昔のことである。 赤塚不二夫や藤子不二雄を思わせる懐かしいデフォルメタッチで描かれるのは、元たま・石川浩司によるバンド時代の回想記。 とはいってもミュージシャンの自伝によくある「売れない」「世間に認められない」「ヒットを求められ続けて辛い」といった苦労話ではなく、楽しいことに一直線だが“売れ

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          【体験談】書いた覚えのない抗議署名に自分の名前が載っていた話

          音楽ライターの安藤さやかと申します。 ご存知ない方も当然、この6月にメディアから独立してフリーランスになったばかりでして、生後1ヵ月の音楽ライターとして泥臭く一生懸命生きています。まだ仕事は全然ないけど。 とはいえ大学生の頃から「安藤夏樹」「雨宮夏樹」名義でちょこちょこコラム等を発表していたので、「おまえ知ってるぞ!独立したんか!」という人もいるかもしれません。 今日はそんな自分の身に突然起こった珍しい騒動の話をしたいと思います。 早い話が「コラムニストとは人生の切り売りで

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