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12万㎡の土地を開発した男の不動産学校 :2時間目「既存建物に関する確認ポイント」

【著者プロフィール】
✔ 不動産開発に携わって15年
✔ 住宅・商業施設・ホテル・物流施設の開発経験
✔ 関与した計画の総土地面積:約12万㎡、総土地代:約400億円

1時間目は土地についてお話しました。
https://note.com/n_arc_jack/n/nf5dfeea9d868
次は建物についてお話します。

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1.建物の構造
主な構造は以下の4つです。
■ 木造:名前の通り、木材で造られた建物のことです。水分を吸収する性質から、湿度の高い日本に馴染む構造です。一方で、遮音性は劣ります。
■ 鉄骨造(S造):建物の骨組み(柱や梁など)を鉄骨で造った建物のことです。鉄骨の厚さが6mm以上のものを「重量鉄骨造」、6mm以下のものを「軽量鉄骨造」と区分しますが、いずれも遮音性を高めることが可能で、地震への耐震性も十分確保できる構造です。
■ 鉄筋コンクリート造(RC造):鉄筋とコンクリートを組み合わせて造られた建物のことです。鉄筋は、引っ張られる力に強いものの、熱に弱く錆びやすいという性質を持ちます。コンクリートは、引っ張られる力に弱いものの、熱に強い性質を持つため、お互いの弱みを補完する形で組み合わせられた構造です。遮音性・耐震性に優れるため、分譲マンション等でも使われています。
■ 鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC造):鉄骨をコンクリートで包み、さらに鉄筋で耐震性も補完された建物のことです。遮音性、耐震性、耐火性が高い一方、どうしても建築工事費は高くなりますし、結露やカビが発生しやすいとも言われています。

この他にも、アルミ造や鋼管構造、コンクリートブロック造などがありますし、最近ではクロス・ラミネート・ティンバーという木材を何層も重ね合わせたものも見られるようになってきています。

「土地を買う」という目線から申しますと、土地の上に建物が建っている場合は解体工事を行うことになるので、解体するのに手間のかかる、ガッチリした構造のSRC造だと「解体工事費高くなるんだろうな~」とテンションが下がる訳です。笑


2.建物の面積を確認する
こちらも「解体工事にいくらかかるのか?」という試算をする上で重要な要素です。
前述の建物構造に因るところは大きいですが、解体工事費は 坪あたり5~10万円程度 かかる印象があります。(1坪=約3.3㎡)


3.建物の用途を確認する
製造工場やクリーニング工場、ガソリンスタンド等は、建物が立っている土地の土を汚している可能性があります。いわゆる「土壌汚染」というものです。この土壌汚染は改良工事なり、拡散させないための対策工事なりが必要となり、大きな費用が発生してしまいます。加えて、地下水等で周辺に汚染を広げている場合は、一定期間(行政によりますが2~3年程度)は建築工事に取り掛かれない可能性もあるので、意識して確認する必要があります。


4.建物が建てられた年を確認する
新耐震基準を満たしているか、石綿(アスベスト)を使用している可能性があるかを確認するのが目的です。

■新耐震基準:1981年6月、耐震基準が改正されました。それまでは、震度5強程度の地震で倒壊しないことが基準でしたが、これが震度6強~7に引き上げられたのです。この改正までに、建設の許可を受けた建物は「旧耐震」といわれる基準なので、現況建物を活用する際には十分な注意が必要です。

■石綿(アスベスト):アスベストは、耐熱性・保温性・絶縁性に優れるので、断熱材や絶縁材に長く使われてきました。しかし、近年になりWHOの付属期間から「アスベストには発がん性があり、一定条件下で過ごすと、肺がんリスクが2倍になる」と報告されました。

これらを踏まえ、1975年9月に日本においてもアスベストの利用規制(吹き付けアスベストの禁止)がなされ、産業廃棄物よりも厳重な管理と処理が求められることとなります。

アスベストの処理は、外部へ飛散しないような対策を行い、宇宙服のような防護服を着ながら、細心の注意を払って行う必要があります。つまり、1975年以前に造られた建物に関しては、解体工事の費用と期間が余計にかかってしまう訳です。

1981年・1975年という年は、不動産に関わる仕事をする上で非常に大切なものなので記憶しておきましょう。


5.現況建物の施工会社(ゼネコン)を確認する
現況建物を活用するにせよ、解体して新たに建物を建てるにせよ、その土地と建物に精通しているのは現況建物を建てた施工会社です。

土地の地盤が緩かったり、近所に騒音に敏感な人が住んでいたり、といった情報を得られることも大きいので、積極的に確認したい事項です。

これにて、2時間目が終了です。
3時間目は「道路」についてお話させていただきます。

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