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高級時計の経済性について(1)

僕は高級時計が好きなのだけど、「ドブにお金捨ててるんじゃないの?」とたまに聞かれるので、経済性の話をしようと思う。つまり「買った時計がいくらで売れるか?」という事ですね。でnoteを書いていたら色々とネタも浮かんできたので、これから何回かに分けて高級時計の経済性について書いていきたいと思う。

まず商習慣の基礎知識として、「お店で300万円で買ったものには、残念ながら300万円の価値はない」という話をしたい。販売価格には利益や広告費、人件費などが含まれているので簡単にいうと販売価格の3割程度が原価となる。つまり正規店での定価300万円の時計の「価値」は約100万円という事ですね。

もちろんメーカーやブランドによって、この原価率は異なる。ある時計メーカーは「買ってお店を一歩出たとたん、買値は1/5」なんてものもあります。現行品の中古が定価の1/2で売っているとしたら、ブランドリサイクル店での買値は定価の1/4以下(ブランドリサイクル店が50%以上の利益を乗せている場合)なんてこともある。つまり新品を100万円で買って、すぐに飽きて売りに行ったら、買取価格は25万。この場合は、損は75万円になる。この損を「値落ち」とここでは呼ぶようにしています。

値落ちが75万円とかだと僕なんかは血の涙が出てしまうので、そんな危険性が高い時計はこれまで買ったことないし、これからも買うことはないでしょう。

ロレックスのスポーツモデルは値落ちが少ない

逆に「じゃあ損しない(値落ち率が低い)時計ブランドは何か?」と聞かれたら、ロレックスのスポーツモデルです、と僕は答える。サブマリーナとかGMTマスターとかデイトナとかが鉄板で、新品で買って25年使って売ったら当時の購入価格より高く売れた…というのが珍しくない。もちろん人気モデルの変遷や外国為替にも左右されるので一概に「儲かる」とは言えないけど、中古屋に売ったら値落ちが1~2割程度で済む場合も多く、ロレックス(の一部モデル)は値落ち率がとても低いといえるでしょう。

それどころか逆に新品を200万円で買って、中古屋に持っていったら220万円で買い取ってくれる場合もある。これはロレックスの新型デイトナで、日本国内での入手は絶望的な超人気商品だ。新品が手に入らないので、プレミア価格をつけた中古品でもガンガン売れてしまう。逆に正規店で定価で買えるのは奇跡なので、素人さんは期待しない方がいいです。

ロレックスの値落ちが少ないのは、中古時計ショップ側の事情もある。実はロレックスの売れ線モデルはだいたいどこでも同じような価格帯になっていて、高すぎるものもなければ安すぎるものもない。手離れもいいので、中古時計ショップは「薄利多売」を強いられていて、利益率もそう高くない。でもすぐに売れるから仕入れには積極的。外国人にも大人気だしほとんどが単純な機械式なので、販売後のトラブルも少なくアフターケアも楽ちん。そして何より、数があって欲しがる客も多い。つまり中古時計ショップにとって、ロレックスのスポーツモデルは商材としてはかなりの優等生…ということになる(利益率の低さを除けば)。

ただしロレックスにも問題がある。
一つは他人とかぶりやすいことだ。僕の以前の職場では50人の部署でロレックスが5人、うち3人は同じモデル(サブマリーナ)をしていた。これを良しとするかは難しいところですね。

もう1つ、ロレックスは古いモデルのメンテナンスをしてくれない。
だいたい目安としては発売後30年くらいだろうか?最初の写真右側のモデルは、「そろそろメンテナンスするか」と思ってロレックスに持っていったら「部品がないのでお受けできません」と断られてしまった。困ってしまう。爆発的に売れた近年の人気モデルはメンテナンス停止まで猶予があるかもしれないが、古いモデルは修理受付が終了していると思って間違いない。まあ「ロレックス公認店」?というグレーゾーンもありますが…。

なぜ僕がロレックスでの修理にこだわるかというと、純正以外の部品を使われるのがイヤなんです。ヘンテコな部品を(特に見える場所に)に使われてしまうと、「本物だけど本物ではない」という判定になってしまい、価値が著しく下がってしまいます。変な部品を使われても普通の人には分からないしね。

そういう意味では、素人さんはアンティークのロレックスには手を出してはいけません。なぜならば「ロレックスが修理受付をしていない=メーカーが真贋判定を放棄しているので、ニセモノ作りたい放題」という状況になっているからだ。メーカーは基本、正規品しか修理をしないので「ロレックスでメンテナンスしてもらった=修理伝票が正規品の証」となるのですね。

特にロレックスのアンティークの中にはバカ高いものもあるが、真贋はよほどの目利きではないと判断できない。特にポールニューマンモデルなんてのが1000万円近い値段で売られてますが、有名ショップはもちろん世界的に有名なオークションハウスでも「一部ニセモノ」が堂々と売られています。文字盤を入れ替えていたり、人気のレアモデルに巧妙に書き換えていたり。こんなものは正規品の良くて1/3、改造具合がひどいとゴミ扱いされて値段がつかないこともある。あるショップが自分の店舗で売ったポールニューマンの買取を拒否した、なんて有名な話もあるからやっぱりアンティークは買わないようにしましょう。

ちなみに左側の文字盤が黒い時計は、僕が中古で買った10年前と比べると店頭価格が値段が倍ぐらいに上がっていて驚いた。売ればもうかるかもしれない。でも高級時計を売って利益が出ちゃうと譲渡所得の対象になっちゃうので、注意が必要です。まあ、売りませんが。


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