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高級時計の経済性について(2)

高級時計の経済性は買った時の値段と中古で売った時の値段の差である「値落ち率」で決まるか?というと、実はそうでもない。時計業界ではもっと恐ろしい「買取不可」の時計があるからだ。

え、定価200万円で買ったのに中古屋は買い取ってくれないの?それってニセモノってこと…?と思うかもしれない。でも偽物でなくても中古屋が「すいません、この時計はウチではお断りしています」という時計は数多い。

これは時計の中古屋の立場に立つとよく分かる。中古屋は普通、自分の店で売った時計には1年間の保証をつける。保証期間以内は壊れたりすると、無償で修理しますよ…というアレだ。

もちろん保障期間中の「修理発生」は中古時計店の利益を純粋に圧迫するので、起きない方が望ましい。もし万が一修理対応が起きたとしても、費用がごく安い「単純な機構で修理しやすく、部品も入手しやすい時計」が喜ばれることになる。そういう意味では、ロレックスって普通に使っていると壊れないんだよなー。精度が悪くなって時間が遅れたとしても「クォーツじゃないのでこれがロレックスとしては一般的です」とお店の人に言われたら、ロレックス本社の人でもない限り反論できないしね。

話がそれたが、中古時計店にとって「扱いたくない=買取不可」の時計は、そもそも修理ができなかったり壊れやすかったり、修理費用がメチャ高い時計だ。有名ブランドの数百万円の時計でも、「初の自社ムーブメント!」なんて宣伝している時計は初期故障率がメチャクチャ高くて、まったく信用が置けない。例えばランゲ&ゾーネのダトグラフなんて定価は1千万オーバーなのに、壊れまくりで第2~3世代になってようやく安定してきた。修理費は1回あたり軽く十万以上。そんなにも修理費がかかる時計を買うのは嫌だよね。

でも今でも強靭な第3世代に混じって抜群に壊れやすい第1世代が普通に売られているので、ダトグラフが欲しい初心者の人は注意が必要です。お店の人に世代を聞いても、特にヤバイ世代に限って「さぁ?どうでしょうねえ」ととぼけて教えてくれない。教えてくれるのは絶対安心の第3世代のみだ。そういう訳で相場より15万安くて保証が半年とか3か月のダトグラフだと、だいたい壊れやすい第1世代と考えて間違いない(笑)。

あと修理にムチャクチャ時間がかかる時計メーカーも、中古屋は買取を嫌がります。修理に半年とか1年とかザラで、酷いメーカーになると「修理見積もり出すのに3か月まち」なんてのもある。ショップの保証期間が「見積もり待ち」で切れてしまったら、そりゃお客さんも怒りますよね。

そういう意味では、「独立時計師」と言われている、メーカー名=個人のフルネームのブランドは避けた方がいい。時計師が死んじゃったら、メンテナンスも修理もしてもらえないしね。

ここまでのことを整理すると、要するに中古時計店は「販売後1年以内にトラブルが起きる可能性があり、問題発生時には解決まで時間がかかる」時計を嫌がって買取してくれません。

「中古屋に売れないなら、ヤフオクで処分すればいいじゃないか?」なんて声が聞こえてきますが、それもまた難しい。手数料が8%以上も取られちゃうし、詐欺の可能性もあるからだ。もしあなたがこれまでヤフオク上で1件50万円以上の販売を複数回行っていて慣れているのなら、まあいいかもね。

もしあなたが「これって聞いたことない時計メーカーだけど、値落ち率はどうかな?」と思ったら、ネットで検索してショップの中古価格の相場を調べるとよいでしょう。定価に比べて異様に安かったり、そもそも中古品が見つからない時計はやばいから買わない方がいいです。よほど大きな愛がない限り。

もう1つ。並行輸入問題というのもある。
Fで始まるとあるメーカーは、日本国外で買って持ち込まれた時計はメンテナンスを受け付けてくれない。「円高だったから、ハワイで買ってきたよ」なんて時計は正規品でもメンテナンスしてもらえない。万が一故障して修理が必要な場合には、もう一度ハワイの販売店に行くことになるので、とても割高になる。この手の「並行輸入時計」は中古時計店でも普通に売られているが、「この時計はメーカーのメンテナンス受けらえますか?」と聞いてみると、並行輸入品に限って「弊社提携の工房でメンテナンスします。ご安心ください!」なんて返事をされるので、やっぱり止めた方がいいですね。

まだもう少し続きます。

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