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教科書の逆を考えてみる。環境問題を考える授業

こんにちは! だいごです。

みなさんは環境問題と聞いて何を思い浮かべますか?

地球温暖化
公害問題
エネルギーの安定供給

理科教員である私は、この環境問題について授業で触れることがあります。
というか、教科書に書かれているので、授業で取り扱います。

でも、ただ教科書に載っていることをだらだら話すのもつまんない。

そこで、本日は環境問題について私の解釈を交え、どのように考えていったらいいのかを以下の3点に触れながら説明していきたいと思います。
・シカの問題
・原子力発電所の問題
・地球温暖化の問題

私の生物の授業を受けている皆さんは、復習だと思ってぜひ読んでみてください!

▶まず押さえておきたい大前提

そもそも、環境問題を1つの要因(ここでは生物という視点)だけで考えることはできません。

たとえば、生物では、生物多様性を軸に考えることが多いのですが、
他にも、気象学や経済学、地質・地形学、天文学などなど
多くの要因を踏まえて考えることが必要になります。

特に、資本主義を採用している国が多い現在、環境問題と経済は切っても切れない関係にあります。

レジ袋の有料化が、あたかもエコ! みたいに言われていますが、
経済活動がそれを先導しているのは目に見えているし、そもそも環境に優しいという意味で捉えがちなエコ!ってエコロジー(経済学)のエコだし。

つまり、環境問題に真の正解はなく、時代ごとの最適解をみんなで探っていくことが必要であると私は考えます。

① 思い込みを疑ってみる

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さて、写真に写っているシカさん。
皆さんは、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

わぁ。可愛い!
奈良で鹿せんべい食ってる。
う〇こがころころしてる。

みたいなイメージがおそらく大半かもしれません。

では、こちらの記事をご覧ください。

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2018年に出たこの記事。
そう、可愛いイメージであるシカ、実は害獣であるのです。

え!? となりませんか?
あら、まぁ、半世紀で350倍ですって。奥さん。

シカが増えすぎて困っているんですね。
では、なぜこんなにもシカが増えているのでしょうか?

あなたはどう思いますか?

私は、この記事を読んで、シカの個体数を抑制するものがなくなった(オオカミが絶滅したことやシカを取る人、つまりハンターが少なくなった)と考えました。

しかし、よく調べてみるとこんなグラフが。

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たしかに、全体としてのハンター(狩猟者)の数は減っているようですが、シカの狩猟・駆除数は最近になって急激に右肩上がりしています。

つまり、ハンターは効率的に、しかも大量にシカを獲っているのです。

しかし、次のグラフでは?

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なんと、被害額の合計が狩猟・駆除数と同様に右肩上がりに急増しているという現実が。

な、なぜだ!?

(混乱する私。)

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つ、つまり、これまで私が考えていたシカの個体数を維持するしくみはそもそも間違っていたということになるのか。。。

(いろいろ反省する私。)

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まず、私の頭の中には、「シカを駆除すれば、その個体数が減って、個体数が減れば農業被害も減る」という大前提がありました。

だからこそ、シカの個体数を減らせば、その農業被害も減るという至極当たり前の三段論法を使って、推論をしてしまっていた…

しかし、そうなってはいない現実があるということは、そもそもその大前提が違っていたということを表しています。

オオカミは、シカの個体数をコントロールできていなかった。かもしれないのです。

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そもそもシカが増えることは異常なことなのでしょうか?

たしかに農業被害は深刻なことです。
でも、それだけで害獣に指定されてしまうシカ。

異常とは誰が決めるのでしょうか?

さて、なぜこの話題を出したかというと
シカの話題から、思い込みの怖さを知ってほしかったからです。

私たちには、幼い頃から(特に学校で)教科書を読んで思い込んでしまっていることがたくさんあると思いませんか?

特に、そう。環境問題。
ぜひ、普段の思い込みに気づきそれを疑ってみてください。

② 不可解な三段論法に突っ込みをいれてみる

まずは、YouTubeで見つけた関西電力の動画をご覧ください。

さて、どうでしょうか?
どんなイメージを持ちましたか?

東日本大震災の福島原発の事故を知っている方は、おそらくあまり良い印象をお持ちにはならなかったかもしれませんが、ここは冷静に動画そのものを見つめてください。

もしかしたら、クリーンなイメージをもったという方もいるのではないでしょうか?

私も、高校生くらいまではこの手のCMを見て
何か環境に良さそう! ってくらいにしか思っていませんでした。

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しかし、CMで語られていることを抜き出してみると、「二酸化炭素を出さないことが大切。原子力発電は、他の発電に比べて発電時に二酸化炭素を排出しない。だから地球温暖化防止に有効といえる」としか言っていないのです。

ちょ、ちょっとまって
この三段論法って、不思議ではありませんか?

考えてみてください。

冷静にこの三段論法に突っ込みを入れると

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こうなります。

もしかしたら、他にも突っ込みを入れることができるかもしれません。

しかし、多くの人はCMを見て、ここまでの突っ込みをいれることはありません。(入れている人は俗に言うめんどくさい人)

そうなるとどうでしょうか?
流れているCMの内容やちょっと感じる違和感など頭から吹っ飛んでしまい、視聴者の頭には、原子力発電は地球温暖化防止に有効というワードしか印象に残らなくなってしまうのです。

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なぜ理科を学ぶのですか?

そう問われたなら、
迷わず私は、例で示したような動画に突っ込みを入れる力を養うためと答えます。

ものすごくぶっ飛んだ三段論法で説得されていることに気付くこと

それが科学的思考力の1つなのだと思います。


ちなみに、お隣の台湾では

このようなCMが流れているようです。

私はこれまでこのようなCMを見たことがありませんでした。
だから、これを見たときは衝撃的でした。

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前提にも示しましたが、原子力発電などの問題について真の正解があるわけではありません。

しかし、これらの問題につっこみも入れずに、ただ言われたとおりに考えることが本当に良いことなのでしょうか?

難しい問題にぶち当たったら、まずは、冷静に述べられていることを並べてみて、突っ込みを入れてみてはいかがでしょうか?

③ 教科書の逆を考えてみる

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ではここで、有名な環境問題「地球温暖化」について、どんなイメージを持つかちょっと考えてみてください。

いかがでしょう。

読者の方がどのようにイメージされたかは分かりませんが、
私のイメージはこんな感じです。

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次に、そのイメージがプラスのものだったのか? それともマイナスのものだったのか? を考えてみてください。

どうですか?

私のイメージはマイナス。マイナスしかありません…

ちなみに、高校生物の教科書を開いてみると、そこにはマイナスを想起させるような記述しかありません。

なぜ、そもそもプラスのことは書かれていないのでしょうか?


もちろん、地球温暖化によって起こる被害とも言えるマイナスなこともあります。

でも、冷静に考えてください。それだけではないはずです。

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今の地球の人口は赤道付近に偏っていますし、おいしい果物の産地は暖かいところであったりします。

ジャングルのように生物多様性の高い生態系は暖かいところに集中していますし、その恩恵を実際に人は受けています。

なぜ、地球温暖化のマイナスな部分しか教科書には載っていないのでしょうか…?

(あれ?②でも似たようなことが…)

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まぁ、その真意は分からないですし、考えすぎなのかもしれません。

だからこそ、教科書を読むときはその逆を考えてみるようにしてみてはいかがでしょうか? と提案したい!

一方向からしか意見や事実が書かれていない教科書は、その逆を考えてみるために優秀な教材だと僕は思います。

そもそも
地球の温暖化って悪いことなの?
本当に温暖化しているの?
二酸化炭素だけが悪者なの?
など、地球温暖化問題は疑問が絶えない環境問題です。

いろんな意見や事実を知って、自分なりの意見を持ってみてください。

まとめ

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私も含め、ゼロリスクで物事を考えがちですよね。

でも、どんな手段や現象にもリスクは存在するはず。

えてして、人は環境問題は絶対解決すべき! と考えがちです。(私も高校生までそうでした。)

しかし、この考え方こそが一般的に過激派と呼ばれるグループを作ってしまうのだと思います。

今回の授業を通じて、環境問題だけでなく、身の周りのできごとをいろんな視点から捉えられるようになってほしいな。と思いました。


では!!

▶参考文献

シカの異常増加を考える 北海道大学
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/54808/1/65_2_108_116.pdf

シカ個体群の歴史から自然生態系保全を考える
http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~member/agetsuma/KiiSympo2015HP.pdf

くまもりNews
http://kumamori.org/news/category/%E3%81%8F%E3%81%BE%E3%82%82%E3%82%8Anews/20190/

エゾシカ関係資料
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/cks/tok64/64sankou2_2.pdf

▶オススメの本

▶︎ note投稿後に調べてわかったこと(メモ)

シカの狩猟・駆除数が増加しているにもかかわらず、農業被害が減少しない理由は、シカの生活様式にあった?

シカのオスとメスは普段は別々に生活しており、メスはメス同士のグループを作り、オスは単独で生活することが多い。

交尾する時期になると、オスが縄張りをつくり、そこに入ってきためすのグループとハレムをつくって子孫を残す。

よって、狩猟の対象がオスであるならば、単純にオスのシカの個体数が減っても、シカ全体の個体数抑制にはつながらない可能性はある。

#環境 #高校生物 #生物基礎 #SDGs #教育

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