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ネーブル

家内の実家から、よく、荷物が届く。家内が、田舎に住む義母にお願いをするのである。気の良い義母は、その、娘の要望をよく聞いて、いろいろと、ものを送ってくる。

大抵は、お米であることが多い。だが、そのお米に、お菓子や、お茶や、昆布や、野菜、いろいろな付属品が入って、荷物が届く。

年始の荷物に、黄色いオレンジが、入っていた。

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温州みかんの上に乗っているものである。

最初、ゆずかと思った。

だが、ちょっと写真でも見えると思うが、紙切れが入っていて、そこには、「ネーブル」と書いてあった。


家内も、次女も、みかんを剥くのを嫌がる。2人とも、極端に、面倒くさがりである。

このネーブル、非常に固かった。そして、当然、剥きにくかった。全部で、10個ばかりあったのだが、誰も、食べようとしない。

だから、私が、全部、引き受けることになった。なんといっても、食べ物の無駄を取締る役目を負っているのだから。勝手に。


だが、1個目で、私は、相当なダメージを受けた。

とにかく、酸っぱいのである。これはレモンか、というくらいに、酸っぱい。酸っぱすぎる。

私は、どんな食べ物も、おいしいと思って、食べる。辛かろうが、酸っぱかろうが、甘かろうが、何にしても、食べられるものについては、確実に、美味しいと思って、食べる。

ところが、これは、ちょっと怖じけるくらいの酸っぱさだった。我慢が、少し、必要だった。

そして、1日2個をノルマとして、食べた。そして、食べ切った。

そんな頃、また、義母から荷物が届いた。

そして、中に、また、こんな物が入っていた。

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荷物には、「ネーブル」と書いた紙切れは、今度は、入っていなかった。考えようによっては、なお一層、怪しい。

この、無垢な黄色が、私を怯えさせる。


家内には、こう、伝えておいた。

あのネーブル、めちゃめちゃ酸っぱいぞ。俺でも、我慢が必要なくらいだよ。

すると家内は、言ったものだ。

良かった。食べなくて。


そして、ネーブルを食べ切った報告をしたところ、家内が、私の机の上に、これを、どん、と、乗せて言った。

今度は、これね!

なんという笑み。

家内の人柄が知れる。


心の中の、リトルkojuroが、ボソッと呟いた。

まあ、自称、フードハンターだもんな。食べなきゃな。


そして、私は、この2つを、引き続き、食べることになった。

ちょっと、泣きそうになった。


ところが、食べてみると.....。

なんと、甘い!!

ハッサクのような味と、香りがする。

たぶん、これは、ハッサクだ。やったぜ!!


そして、おいしく、そのハッサクらしきものを食べ、夜、家内に報告した。

あれ、甘かったよ。それに、剥きやすかった。


すると、家内が言った。

なんだ、食べりゃ良かった。

ちょっと見た目が、危険だったんだよね。


心の中の、リトルkojuroが苦笑しながら言った。

やっぱり、フードハンターだと、思われているな.....。

間違いなく。


あのネーブル、確かに、かなり酸っぱかった。だが、不味くはなかった。むしろ、美味しかった。

今になって、あの酸っぱさが恋しくなってきた。人の感情とは、不思議なものだ。

そして、過ぎ去りし思い出は、いつも、甘い。

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