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破壊

本当に、ビビったのだ。正直、冷や汗が、垂れてきた。それだけ、みんなに、非難されるようなことを、やってしまったのだ。

私の職場には、ウオーターサーバーが、ある。もちろん、みんなで使う。私は、専ら、お茶のパックを、ホットポットに入れ、それを、飲んでいる。

今朝は、かなり、慌てていたのだ。そうでなくても、トラブルが多い。そこに来て、朝から、何件かのトラブルを抱え、気持ちが焦っていた。

お茶が切れたので、ウオーターサーバーに、汲みに来たところ、水が、もう、残っておらず、ほどなく、給水交換となった。

昨日、こんな記事を投稿したばかりだ。


心の中の、リトルkojuroが、ちょっと怒りながら呟いた。

また、俺が交換するのか。

まったく、ついてないな。

昨日が2回。今日も、朝から、いきなり。

腰も、癒えていないのに。

まったく……。



給水の交換は、手慣れている。パッパとやっつけようと、ちょっと、動作が、ぞんざいになった。

最後の締めの、レバーを、力任せに、回した。

ところが、途中で、大きな抵抗にあい、レバーが止まった。

あれ?

レバーを戻し、中をのぞきこんでみると、完全に、受け口が、曲がってしまっていた。


心の中の、リトルkojuroが、青くなって、震えながら呟いた。

うわっ、こ、これは、やっちまったなあ……。


テレワークの時代になり、我がフロアも、4分の1くらいの人数しか出社していない。だが、30人は、いる。

私の不穏な雰囲気に、チラホラ、こちらに視線が向けられてきた。


実は、私は、事業所の本籍は、大阪なのだ。外回りの先が、東京なので、違う組織のフロアに、駐在をしている。つまり、この、ウォーターサーバーは、居候をしている部署の持ち物なのだ。

……。


私は、すぐに、総務に電話をした。すると、旧知の担当が出た。

事情を話し、助けを求めると、実は神奈川の事務所にいて、東京の部署に、依頼をするから待てと言うのだ。


そこへ、私の後ろに、水を汲みに来た人がいた。

すぐに、私の異変に気づき、呆れた目で私を見つめている。

私は、その人に目配せをして、スマホを指さして、今、修理対応を依頼しているのだとアピールした。

その人は、呆れたという表情を見せつつ、首をすくめ、諦めて席へと帰っていった。


刻々と、会議の時間が迫る中、総務の担当者に、誰にヘルプをしたら良いかを問うと、上階のサポート部に依頼して欲しいとのことだった。

素早く、コピー用紙に「修理依頼中」と書き、給水の扉を半開きにして、全面に貼り付けた。そして、足早に、エレベーターに、乗り込んだ。



サポート部に着き、事情を説明すると、みんな、対応したくないのか、腰が、引けている。仕方なく、課長らしき人が出てきた。

私が、行きます。

2人で現場に戻ると、かなり、痛い視線を浴びることになった。その中、中途半端に引っかかって、水を垂らしている給水ボトルを、抜こうということになり、2人で、苦労しつつ抜いた。

だが、レバーのついた、土台は、大きく曲がったままだ。

会議まで、時間が無い。

サポート部の課長も、対応に苦慮していたが、こう、言ってくれた。

後は、こちらでやりますので、良いですよ。

私は、部署名と名前を告げて、その場を立ち去り、会議へと向かった。背中に突き刺さる視線が、痛かった。



会議では、さんざんだった。昼食まで絞られた。

何とか解放され、フロアに戻ると、もう、ウォーターサーバーは、復旧していた。

それを確認するなり、私は、サポート部へ向かい、課長に礼を言った。

何とか、昼までに復旧したので、良かったです。

その課長は、にこりと笑いながら、手を振ってくれた。


私は、深く頭を下げ、その場を去った。


心の中の、リトルkojuroが、諭すように呟いた。

急いては事を、し損じる。

二次災害、三次災害が、起こるから、今後、気をつけないと。


フロアに戻ると、同僚がひとり、声をかけてきた。

コジさん、災難だったね。

でも、昼の時間に間に合って、何とか、良かったね。


ウォーターサーバーのお湯は、インスタント食品を食べる人。お茶やコーヒーを淹れる人が、ソーシャルディスタンスをとりつつ、数多く並んで、順番を、待っていた。


結果よければ、すべて良し。

これで、いいのだ。




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