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南相馬と温故知新 #訪問体験記                                                                                                                                                                                                                    

こんにちは!なつみです💛🐱🌟都内の大学に通う4年生です。
今回、大学の後輩たまみちゃんのお誘いを受け、MYSH合同会社が主催する体験プログラムで南相馬にお邪魔しました。4月の上旬、春がすぐそこに迫る南相馬での3日間を通して、様々なことを受け取り、考えたことがたくさんありました。せっかくなら、それらの思いを整理することができればと思い、記事を書くことに挑戦してみました!春の日差しのような、あたたかい気持ちで見ていただければ嬉しいです🥰


学びの旅と私の目標


 南相馬でのプログラムに参加するにあたって、個人的に達成したい目標を立てました。1つは、復興とはなにかを改めて考えること。そしてもう一つは、被災地のいまを知り、震災を知らない世代にどう伝えていくかを自分なりに考えること。私自身、東日本大震災に関して表面的なことしか知らないなと感じていて、今回南相馬での人々の暮らしに触れる中で震災や復興について学び直したいと思ったのです。
 この2つの目標設定に際して、思い浮かんだキーワードは「創造的復興」です。ちょうど半年ほど前に受けていた大学の講義のレポート課題におけるテーマであり、震災後の地域が目指すものとして、以前の状態に回復させるだけの従来の意味における「復興」ではなく、地域に新たな価値を提供することができる「創造的復興」の重要性が述べられていました。震災後、南相馬のまちがどのように立ち上がり、今に繋がっているのか。その部分を復興、しいては創造的復興の観点から見つめたいと考えていました。


南相馬の3つの地区と、いま


 南相馬は、福島県浜通りの北部で太平洋に面した地域に属し、小高(おだか)区、鹿島区、原町区の3つの地区に分けられます。南相馬市自体は、もともと旧小高町、旧鹿島町、旧原町市の1市2町が平成18年に合併して誕生した地域ですが、震災発生後、福島第一原発からの距離をもとに、原発から20km圏内の地域が小高、20-30km圏内の地域が原町、それより先が鹿島の地区というように分断され、その結果、南相馬市の中で一番原発に近かった小高地区は、避難指示により一時は居住人口がゼロになったという経緯があります。
 今回、実際に3つの地区を訪れ、それぞれの地域の雰囲気の違いを感じました。個人的に印象に残ったのは、小高の地区の独特な空気感です。小高のまち歩きでは、しんとする静けさを感じるのと同時に、「新しいにおい」も感じました。
 小高を新しいと感じた理由は、突然の避難指示により多くの人の居場所が失われたこの場所で、ゼロからチャレンジを続ける多くの人々の存在を知ったからです。作家の柳美里(ゆう・みり)さんが移住して始めたブックカフェ「フルハウス」や、小高駅目の前のセレクトショップ「KIRA」、さらには(ちょっと不思議な?)宿泊できるコワーキングスペース「小高パイオニアヴィレッジ」などなど。一度は静まり返ったまちであるからこそ、新しいことに挑戦するはじまりの地として小高を選ぶ人がたくさんいました。特に印象的だったのは、セレクトショップ「KIRA」のオーナー、平岡さんが南相馬に蚕を復活させたいとお話していたことです。小高は、古くは養蚕業で有名な土地だったそうで、小高のこの場所から南相馬を盛り上げていきたいという平岡さんの熱い気持ちが伝わってきました。

 被災し、原発事故の影響を受けた南相馬。だからこそ、ここに集まるそれぞれの方が南相馬や小高のまちに未来と希望を見出していて、私もエールをもらいました。


小高のブックカフェ「フルハウス」。
セレクトされた本がセンス良く並べられていて、
思わずときが経つのを忘れてしまいそうな、居心地の良い空間でした。


馬のまち・南相馬
 ~南相馬を支えてきた「うま」の存在~


 南相馬は、馬のまち。地域の伝統行事「相馬野馬追」(そうま のまおい)が1000年もの長い間継承されてきた南相馬では、馬が大切に扱われ、地域のシンボルとなっています。私たちも原町の坂本ふれあい牧場で乗馬体験をさせていただきました。実は馬に乗るのははじめてだったので、とてもわくわくしていました!!馬の背中からは見晴らしもよかったですし、ポカポカと歩く馬と一緒に南相馬のまちを探索するその雰囲気に、心がとても癒されました。

 さらに、乗馬に加えて、野馬追で使用する甲冑を着させていただき、南相馬の野馬追の文化を肌で感じることができました。甲冑は想像以上に重たくて、びっくりしたことを覚えています。この状態で背中に旗をくくりつけ、疾走する野馬追は、まさに大迫力だろうなと思いました。(相馬野馬追で調べると出てくると思うので、みなさん検索して動画ぜひ見てみてください!かなり見応えあります😌)
 今回、このような貴重な経験をさせていただく中で、いつか本物の野馬追もこの目で見てみたい!と思うとともに、馬が当たり前に存在する南相馬の日常がとてもすてきだなと感じました。馬と深い関わりを持つ南相馬の魅力が多くの人に伝わったら、もっといいなと思います。🐎🐴

優しくてお利口さんな馬たちにとても癒されました🤍
叶うことならばずっとこのまま、どこまでも歩いていきたかったです・・・(笑)  


震災の記憶を後世に伝える意義と難しさ


 最終日、私たちは南相馬市の隣の浪江町にある請戸小を訪れました。請戸小は、13年前の東日本大震災の日、津波による甚大な被害を受けながらも、全員が避難できたことで知られる震災遺構です。1階部分は津波が残した爪痕がかなり生々しい様子で保存されており、正直、見学していて辛い場面も多くありました。ここでは、津波と原発事故に直面した福島県の人々の行動や被災した請戸小と浪江町のその後の歩みなどを知ることができ、3.11はどんなに時間が経っても風化させてはいけない出来事であることが痛いくらいに伝わってきました。
 地震と津波の被害や原発事故をうけ、帰りたくても帰れない地域が生まれ、故郷を追われた人々。核のごみや処理水など、あまりに大きな負担と課題を次世代へ課すことになった福島。その地域で暮らしを営んできて、ある日いきなり日常を奪われた人たちは、時間をかけて新しい建物を作り生活を再建しても、前と同じ生活には一生戻れない。なにをもってして「復興」と呼べるのかわからなくなりました。

 そして、震災を知らない世代へ継承することの大切さと、その難しさも同時に感じました。すべての子どもたちに震災遺構に実際に足を運んでもらうことは難しいし、震災の重みや痛みを簡単には伝えられません。防災への意識を高められる機会を継続的に提供するほかに、震災と復興について話し合える場を多くの子どもたちに持ってもらうことが、最低限社会が次世代に対して用意できることではないかと考えました。

 復興をどう位置づけるかは、いわば終わりのない問いのようなもので、綺麗事なしに、これからも考え続けなくてはならない議題だと思います。次の世代への継承に関して、自分が具体的にできることは思い浮かばないのですが、少なくとも私は月日が経っても震災の日の出来事や被災地のその後に関心を持ち続けたいと思うようになりました。南相馬でのプログラムを通して、このような思いを持てたことは、自身にとっても大きな収穫でした。

住民や卒業生からの思いがたくさん寄せられた黒板。請戸小にて


おわりに 南相馬に触れて考えたこと



 南相馬での3日間は、私に多くの気づきを与えてくれて、とても有意義な時間となりました。南相馬に触れて強く感じたことは、

「復興はまちづくりと繋がり、まちづくりはビジネスと繋がる」

ということです。南相馬で出会った様々な方にお話を伺うなかで、「人の輪」を強く感じました。プログラム主催者の、みなみそうま移住相談窓口よりみちのみなさんはじめ、南相馬の町役場の職員の方々、その他お話をうかがうことのできた多くの方々。多様な人が繋がり、まちの未来を創るためのまちづくりの基盤には、人とお金があり、それが循環する必要がある、ということを根本から理解することができました。南相馬を復興という観点から見ても、いくつもの場所に点在するキープレーヤーが輪の中に巻き込まれ、まちが再生していく仕組みづくりが広がっていっているように感じます。創造的復興のかたちが目に見えるようなまちであるとも感じました。

 そして、人と地域が掛け合わさることで多くのビジネスが生まれ、まちが内側から動いていくエネルギーが満たされている南相馬のまちは、「温故知新」なまちであると考えます。古くからある野馬追の文化や伝統産業を大切に守っていきたいと強く思う人々。小高のように、被災した地域でチャレンジを重ねる人々。双方が組み合わさって、盛り上がってきている南相馬のまちには、古いものを温め、新しい価値を生み出す、温故知新の考えが存在していると思いました。


 最後に、復興とはなにか?
 私は、南相馬での経験をもとに、復興とは「終わりなき共生」であると考えています。被災したのち、みんなの憩いの場所を作りたいいう思いから民宿をはじめた星さんにお話を伺った際、まちが完全にもとの姿に戻ることはないからこそ、新たな南相馬になっていくことが自分にとっての復興であると述べていました。震災後地域に戻ってくる人・新たにやってきた人。互いにコミュニケーションを活発に取り、上手く嚙み合うような地域づくりをしていきたい、と語った星さんの思いに私もとても共感しています。この素敵な南相馬で、多くの人々が当たり前の日常を過ごしていけることこそが、創造的復興にも繋がっていくのではないかと感じました。これからの南相馬に、たくさん期待しています!

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました🎶


プログラムに参加したみんなと!
この日はとても寒かったのに、最終日には満開の桜を見ることができました✨
南相馬ありがとう



🐶この記事を書いた人
立教大学社会学部/国沢夏実

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