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論文 『対人関係における自己開示の機能』

先日、人との関係を築くにために、何が重要な要素となるか、20~30本の論文を読み漁って調べてみました。

中でも、もっとも参考になったものが『対人関係における自己開示の機能』だったので、少しだけ内容を紹介してみます。

人の心の動きや関係構築、成熟や反応のようなことに興味ある方は、ぜひ一読がおすすめです(15ページ程度しかないのですぐ読めます)。

自己開示が意味するもの

Jourardという方は、1971年(約50年前!)に以下のように語っています。

パーソナリティの健全な発達には適切な相手に対する適切な水準の自己開示が不可欠である。「自己開示はパーソナリティの健全さのしるしであり、また、それを獲得するための究極的な手段である。全ての不適応者は自分を他の人々に知らしめることをせず、その結果、自分自身をも知らない人間である」

自己開示は、当事者が健全さを欠いていたらできないことであり、健全・成熟の証である、と。

自己開示の定義

では、そもそも自己開示とはなんたるか。

「自己に関連する新奇な、通常はプライベートな情報を、一人あるいはそれ以上の他者に、正しく、誠実に、意図的に伝達する言語行動」

自分にとって秘匿な情報を、誠実に伝えることというところがミソですね。35年経過してもなお、その言葉は色あせていないのではないでしょうか。

また、より一歩踏み込んだ部分も言及されており、自己開示には「伝達内容」と「伝達行為」の2つの要素が含まれていると述べています。

伝達内容
1)自己に関連する情報を含む
2)プライベートな内容を含む
3)「正しい」内容(虚偽が含まれない)
4)(受け手にとって)新奇な内容を含む

伝達行為
1)特定の相手に対して伝達される
2)言語的に伝達される
3)意図的に伝達される
4)誠実に伝達される

この「伝達内容」x「伝達行為」のかけ算を通じて、自己開示となるか決まるそうです。

自己開示の報酬機能

そして、自ら自己開示を行うことによって『返報性』が発生する。

返報性(reciprocity)とは、自己開示の受け手が、同じ程度の「深さ」の自己開示を送り手に返す現象

もちろん、この返報性はいつ何時でも起こるものではなく、

内面性の低い話題は関係の初期にその返報性が最大になり、親密になるにつれて単調に減少してゆくが、内面性の高い話題は親密さが中程度の時に返報性が最大になり、関係の初期や非常に親しい間柄ではその程度が低くなる
自己開示の対象となる人は「節操のある」「養育的」「外交的」などの特徴が、
自己開示の対象とならない人は「自己愛的」「皮肉な」「防衛的」などの特徴が認められ、
加えて、認知された性格の類似性が高い相手に対して自己開示を行う傾向がある
「自分を選択するのに十分な情報を開示者がもっている」と受け手が認知することが重要な条件となる

他者との関係づくり

上記の内容を行えば、すべてが上手くいくわけではないですが、上手くいく関係には自然と自己開示の過程が含まれているのかもしれません。

自分にとって内面性の高い内容を誠実に伝えてみることが、深い関係のスタートラインなのかもしれません。

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