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匿名ラジオを流して宅飲み気分を味わおう

去年の秋にこんな記事を書いた。

オモコロが運営している2つのYouTubeチャンネルがかなり面白いからみんな見てくれ〜という記事。これが何故か結構ヒットした。

オモコロというのは株式会社バーグハンバーグバーグが運営するwebメディアのことで、ユーモアのある陰気なライターが多数所属していることで有名。WANIMAとメンタリストDAIGOを小馬鹿にしたことがあるライターしか所属できない会社である。嘘!うそうそ!

最近は結構知名度も上がってきて、著作が書籍化するライターがいたりYouTubeでインフルエンサーとのコラボをしていたりと活躍目覚ましい。活字が好きなインキャ、全員オモコロを読んでほしいと思っている。


でも今回もオモコロの話はしない。今日は匿名ラジオというYouTubeチャンネルの話がしたいのだ。まーたYouTube。平成生まれだからね。親の顔より見ているスマートフォン。

匿名ラジオというのは、株式会社バーグハンバーグバーグのライターであるARuFaさんとダ・ヴィンチ・恐山さんが6年くらい運営しているチャンネルで、その名の通りラジオ形式のYouTube動画を投稿している。


本人Twitterから引用

こちらがARuFaさんで、

本人Twitterから引用

こちらが恐山さんです。

ボケてないです。

別に私がウケを狙ってこういう写真を持ってきている訳ではなくて、このビジュアルが彼らのデフォルトなのだ。ARuFaさんは目線(?)を、恐山さんは仮面を付けて活動している。2人とも本名も顔の上半分も明かしていない。だから匿名ラジオ。そういうわけなのです。「佐藤健」のボードはデフォルトではない。


匿名ラジオは毎週木曜日に更新される。なぜか会社の倉庫で撮っているらしい。可哀想に。最初はARuFaさんの家で撮っていたのだが、なぜか彼の家が毎回壊されるため区民館などを経て今は会社の倉庫に落ち着いているとのこと。

とはいえ一度も休むことなく6年間ラジオを撮り続けるということは本当にすごい。救急車で運ばれた次の日もどちらかが有給を取っている日も彼らはラジオを続けてきたのだ。

じゃあそんなに続いてる偉すぎるラジオで彼らが何を話してるかっていうと、無い話。

無い話。


彼らは6年間ずーっと無い話をしている。ホラーではない。

普通ラジオといえば、近況報告とリスナーからのお便りを読むことが多いかと思う。芸能人なら最近出演した映画についてやテレビではあまり語られないプライベートの話。後は社会情勢に切り込んだり、今週のヒットチャートについて話すラジオなんかもある。時にはリスナーからのお悩みに答え、よくお便りを送ってくるリスナーはハガキ職人と呼ばれ認知されたりもする。それが俺たちの知っているラジオというコンテンツだ。

匿名ラジオは98%無い話。


怖いよね〜〜そんなラジオないから。ていうかそういうスタンスでラジオを名乗る人がいないから。

例えばこれ。ARuFaさんと恐山さんが地下シェルターで生まれ育った設定で進んでいく回。地上の世界を知らないふたりが「なんか…地上には〇〇っつーのがあるらしい…」を無限に繰り返し続ける。

これは妄想で敵を倒す回。恐山さんのおぼつかないにも程があるステップが見れます。

こちらは子供達とキッザニアに閉じ込められたら自分はどのポジションにつくかという話。これはネタバレですが最終的に宇宙戦争が起こります。

これぜ〜んぶ無い話!

本当に全て腹を抱えて笑えるものばかりである。この前は丸亀製麺であわやうどんを吹き出しそうになった。なんでこんなに面白いんだろう。通ってきたインターネットが近しいからかな。陰気レベルが似てるのかな。悲しいな。


とはいえ、今回は無い話をしまくる匿名ラジオがすげーという記事を書きたかった訳ではない。


一人暮らしをしていて匿名ラジオにめちゃくちゃ救われちゃってるって話がしたいのだ。


私はめでたいんだかそうでないんだか、最近社会人になった。毎日ぺこぺこにこにこ働き、呼ばれた飲み会でへらへらとビールをがぶ飲みする毎日である。今までの週休7日の腑抜けた大学生活とはえらい違いだ。そして春から社会人になったことと並ぶ大きな変化、それが脱実家。

春から小さな部屋で一人暮らしを始めた。会社の先輩からはボロ部屋と呼ばれている。22歳になるまで実家を出たことがなかった私だけど、なんだかんだよくやっていると思う。決められた日にゴミを出したり排水溝の掃除をしたり、いい感じに生活を営んでいる。

ただ一つ、結構困っていることがある。

会話が無い。


当たり前過ぎる。だって一人で暮らすと書いて一人暮らしなのだから。人は1人では会話をすることはできない。

家族仲は大して良くないものの、実家にいた時はかなり会話があった。特に最後の2年くらいは関係も結構良かったから、良いコミュニケーションが取れていたと思う。父は私の悪口をインスタに書いていたけど。

まあ実家とハイパー仲良し!という訳ではなくとも、10あった会話が一人暮らしで急にゼロになるというのは慣れなかった。慣れなすぎて引っ越したての頃は美容師さんにめっちゃ近況を話してしまい(それまではずっと黙ってTwitterを見てばかりいた)そんな自分に愕然とした。

そんな時に匿名ラジオに出会った。私は学生時代から長いことオモコロの読者で、YouTubeもずっと見ている。だから勿論ARuFaさんのことも恐山さんのことも存じ上げていた。というかファンである。

ただ私はラジオがあまり得意じゃない。携帯依存症なので、文字とか動画とか目で追える要素がないと途中で飽きてTwitterとかインスタとか見ちゃう。そんな訳で匿名ラジオはこれまで存在は知りつつも触れてこなかったのである。

そして恐らく私が最初に聴いたラジオがこれ。

普段お酒を飲まない恐山さんがめちゃくちゃに酔っ払う回。「腹割って話そう!」と言ってお酒を差し出したARuFaさんが実は全く心開いていないことが分かるホラー回でもある。ちなみにサムネの中央にいる知らないおじさんは、マンスーンさんという2人と仲の良いおじさんです。

これをベッド聞いて爆笑していた私は、途中であることに気付いた。

これ宅飲みだ!!


そう、匿名ラジオは宅飲みだったのだ。

匿名ラジオはお便りを読まない。コーナーもない。進行のフォーマットもそこまで固定されていない。ARuFaさんと恐山さんがつらつらと話し、ボケたりボケなかったりキレたりキレなかったりしている。通ってきたインターネットが自分と似ていて、陰気レベルも近い。

目を閉じると、匿名ラジオを聞くことはめちゃくちゃ気の合う人たちと宅飲みしているのとほぼ同義だった。感動した。

なんていうか、私は混ざろうと思えばいつでも混ざれるんだけど、目の前でずっとくだらないこと言ってる2人をケラケラ笑いながら見てるみたいな。私が黙ってても気心知れた2人は別に変に気を遣ったりしない的な。そういう安心感というか、ともかく部屋に会話が生まれた瞬間だった。それは他のどんな動画を流していた時よりもしっくりくる感覚だった。変なの。

これに感覚になれるのは多分生配信とかだと思うんだけど、でもそれも完璧じゃなくて、なんか配信って配信用のフォーマットがあるじゃないですか。「これ聞こえてますか?」とか「見えてる?」とか「これから〇〇していきたいと思うんですけど」とかさ。そういうのって一対多数の要素が強過ぎる。配信する人がみんなに呼びかけている感じがすごい。それでは宅飲みにはならず、私のワンルームに会話は生まれないのだ。私は何を言っているんだろうね。

ともかく、匿名ラジオにはそういう「混ざれなくても不安になることのない会話」が永遠に繰り返される。面白くて、傷付けられなくて、適当な会話。まさしく宅飲み。あるいは鍋パ。



少し前に本格的に精神を病みかけたことがあった。別に仕事がブラックだとか何か決定的に嫌なことがあった訳じゃない。夏は必ず心か体のどちらかを病むのだ。それが今年は心だった。

体感としては数キロ先から物凄い速度で「死」って書いてある看板を持った人が走ってきて、私の耳元でそよそよと優しく囁いているような、そんな日々だった。

夏になると大体お気持ちは沈むものの、今年は酷かった。ヤバイヤバイ!死にとうない!と心に悪そうなものとは距離を取り、頼れる人にはたくさん頼らせてもらった。午後休も取った。

そんな短くもデンジャラスな日々で、大変に私を助けてくれたものの一つが匿名ラジオだった。私は冗談抜きで1日中匿名ラジオを流していた。朝起きてから会社に着くまでの間、帰ってきたらその瞬間から寝落ちするまでずっと匿名ラジオを流し続けた。お風呂にもトイレにも携帯を持ち込んで2人の会話を聞き続けた。在宅の日なんて文字通り24時間匿名ラジオ漬けである。

6年分のラジオの大部分を聴ききったと思う。

匿名ラジオにはぐっとくる回もきゅんとくる回もない。ずっと無い話。たまにある話。くだらなくて気が抜ける。どの回を聞いても2人がTwitterのリプ欄にありそうな内容を予想したり、架空の金持ちから100万円もらう方法を議論しているだけ。もう本当にそれで良かった。



そんな感じで、入口はネガティブだったけど全快パワーアップネキとなった今でも匿名ラジオは最高なまま。別に病んでなくても24時間聴いてるし。

匿名ラジオを聞くと部屋に会話が爆誕するとは言うものの、私は匿名ラジオに参加することはできない。面白くないから。面白くない陰キャだから。でもそれでいいのだ。先述した通り、匿名ラジオはなぜかその場には居るつもりになれる。その場にいるけど「敢えて」会話に混ざっていないんですよ…という気持ちにさせてくれる本当に変なラジオなのだ。全て私しか思ってないことだったらごめん。

それに、YouTube上でリスナーが話しかけられる機能が発明されたら匿名ラジオは面白がってすぐ使ってくれると思う。その謎機能でいつか本当に匿名ラジオと宅飲みする夢を叶えようと思う。

でも1回やってARuFaさんに「俺たちで話す方が楽しいんでやめます」って言われそう。それはそう。俺たちは面白くない陰キャなのだから。

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