死産を乗り越えて⑦
病院についたのが夜の9時でした。
スタッフが気を利かせ早めに上がらせてくれました。
病室につくと
発泡スチロールのような入れ物の中に沢山の保冷剤らしきものが入っている真ん中に子供がいました。
手のひらだけで収まるぐらいの大きさです。
まだ皮膚もできていない子供なのか、肌の色は真っ赤でした。
その子を持ち上げ近くに寄せました。
目も鼻も口も、腕だって足だって形成されている。
足の指、手の指まではっきりとわかる赤ちゃんは
静かに目をつむっていました。
口元が微笑んでいるようにも見えます。
そして赤ちゃんの頭には小さな帽子をかぶらせてもらっていました。
病院のはからいでそうしてくださったそうです。
赤ちゃんを見つめながら
「この子と話してみたかった」
「どういうことをしゃべったんだろう」
「どういう顔になったんだろう」
赤ちゃんとしてみたかったことが次々と頭に浮かんできて
気づいたら涙がとまらなくなっていました。
母子ともにお礼をいい。
そっと赤ちゃんを、寝心地の悪そうなベッドに戻しました。
正直見るのが怖かった、
本当は見ないようにしようと思っていた自分もいました。
受け入れたくなかったし、現実を信じたくなかった。
見たらそれですべてを受け入れて終わりにしなくてはいけない気がして、
でも、今は会えて良かった。
そう思っています。
そして、退院をし本当のお別れの時がきました。
⑧に続く
美容師の価値を高め、美容師として多くの人に幸せをお届けできるようにしていきます。