贅沢な時間

最近我が家で密かなブームとなっているのが、ラジオである。
金曜夕方に放送されているNHK第1の番組「Nらじ」を、家族そろって聴いている。
金曜日のNらじは、緑内障で視覚障害を持つNHK の杉田淳デスクがメインのパーソナリティーを務めていて、多様性をテーマに様々なトピックをわかりやすく解説している。

とかく障害のある人の語りというのは、意識するとしないとに関わらず、その障害に制約されてしまう傾向にある。
もちろんその当事者性を活かして視覚障害の話題を取り上げてもかまわないわけだが、
杉田デスクの場合はそれに留まらず、広範囲なテーマを独自の視点で自由に語るところがいい。

聞けば、政治部という花形の部署に在籍中に発病し、人生の道半ばで視覚に障害を負ったという。
その悲しみや苦しみは、いったいどれほどのものだったろう。
でも、だからこそというべきか、優しい語り口には深い説得力と安心感がある。

僕がラジオを最も熱心に聴いていたのは、小学校高学年から高校生に上がるまでの頃だった。
サブスクもない時代、最新の音楽を聴く手段はラジオしかなかった。
TVで中継していないスポーツ番組に耳を傾けることもあった。
眠れない夜はラジオがその空白を埋めてくれた。
それぐらい生活に密着し、欠かせないものだったが、いつしか聴かなくなってしまったのは何故だろう。

忙しい時代、コスパだのタイパだの言って効率性を重視する風潮の世の中で、言葉の一つ一つを味わいながらゆっくりラジオを聴くというのは、かえって贅沢な時間なように感じる。
時間はただたくさんあればいいというものでもなく、大切なのはその使い方だ。
いつしか忘れかけていた時間の使い方を、杉田デスクのラジオは思い出させてくれる。

長い連休がいよいよ終わりを迎えようとしている。
どこまで有意義な時間を過ごせたか自信はないけれど、また明日からも頑張って生きられたらと思う。