モノローグ

自分が劣った人間であるという自覚は、障害を持つ以前から持っていた。
兄の障害、親の低学歴、家族の宗教、
口下手、不器用、醜悪な見た目。
僕はコンプレックスの塊だった。

これに失明が重なった十代の頃は、死ぬことしか考えていなかった。
何度か自殺行為を行い、死にかけたこともあった。
それでも死ねなかったのは、内側に眠るプライドがあったからなのだろう。
このまま終わりたくない、終わるはずがない、と。

でも、コンプレックスを動機とした行為は空虚な結果しか生まない。
やっとの努力で手に入れた一流校の学生証も、
たくさんの友人も、目を見張る美しい恋人も、
僕を幸福にしてはくれなかった。
どんなに人から羨ましがられても、心は絶えず乾いていた。

内側を変えないといけないと気付いたのは三十代になってからのことだ。
僕はそれまでの退廃的な生き方を捨て、地味で凡庸な生き方にシフトした。
働き、家庭を持ち、子供が生まれ、親が死んだ。
平凡でありきたりの人生に幸福を見出そうと努めた。

そして四十代。
もうかつてのコンプレックスはない。
今に不満を感じているわけでもない。
それなのにどうしてだろう。
心には再び空虚さが占めている。
これまでの人生を振り返ると、悲しくて泣きたくなる。
本当ならもっと有益なことができたんじゃないかと。
結局は全て無意味だったんじゃないかと。

これから先、何を信じて生きていけばいいのだろう。
失ってきたものの重みに、果たして耐えられるのだろうか。
今の僕には、まだ答えが出ていない。