見出し画像

ある尺取り虫の一生

週末、実家の別荘に行ってたんですが、私だけ先に帰る少し前の夕方、ウッドデッキの手すりに、体長2センチ足らずの白っぽい尺取り虫がいるのを見つけまして。

ジーッと見ていたら、2、30歩ごとに一休みして顔をあげて左右を見回し、また2、30歩ごとに一休みして顔をあげて見回し、というのを繰り返しながら、彼にとっては途方もなく長い手すりをじわじわと移動してたのです。

風に吹かれてどこかの木から落っこちてきたのでしょうか、少し木の枝が近いとこまで来ると、身体を伸び上がらせて何か様子をうかがっている感じでしたが、小さすぎる彼には1メートル先の木の枝なんて成層圏ぐらいの感じでしょう。認識できていない様子で、かといって手すりからポトリと落っこちる勇気もないらしく。

母と私は「ベランダの端っこまで行ったら地面に降りるかしら」などと言い合いながら、ずっと彼の長い旅を見守っていたのですが、20分近くかけて手すりの端まで到達した彼は、しばらく顔を持ち上げて逡巡した挙句、回れ右をして今来た道を戻り始めたわけです。

「えぇー」と思いながら、私と母は引き続き彼がシャクシャク歩く様子を見ていたのですが、反対側の端までたどり着いた彼は、少しだけ手すりの側面に下りるような素振りを見せたあと、再び回れ右をして、さっきの道を戻り始めました。

葉っぱにでものせて移動してやろうかと思ったのですが、目の前に葉っぱを置いてもガン無視、または警戒してピタッと動きを止めてしまうもので、どうしてやることもできず。

この先どうなるものやらと気になったまま、私が帰京するバスの時間が来てしまい、私はそのまま帰ったのですが、あと数日別荘に残る母に、どうなったか分かる範囲で様子を教えてくれるよう頼んでおいたところ、今朝になってこんなショートメッセージが届きました。

…というわけで、ヤマガラだかなんだか、鳥ちゃんの栄養になったようです。虫だから「人生」じゃないと思うけど。R.I.P. 安らかに眠れ。

#徒然 #日記 #201709

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?