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仏教を知るキーワード【18】六波羅蜜 ~大乗仏教に特有の修行体系~

大乗仏教では、ブッダになるための特別な能力完成をめざす「波羅蜜」が修行の中心に

六波羅蜜(ろくはらみつ)は大乗仏教の修行体系である。大乗仏教では菩薩道を歩んでブッダ(正等覚者)となることを目標としたため、ゴータマ・ブッダが示した修行法である三十七菩提分法ではなく、ブッダとなるための特別な能力完成を目指す「波羅蜜(パーラミー、パーラミター)」を修行の中心に据えた。上座部仏教では菩薩の修行は十波羅蜜とされるが、大乗仏教では六波羅蜜が主流である。項目ごとに解説する。

1)布施(ふせ)波羅蜜:布施は「わがもの」という執着を捨てるおこないで、通仏教的に奨励される。布施の種類は無数だが、大きく分けて次の三種類となる。[1]財施:財物・衣食などを与える布施。[2]法施:仏法を説く布施(出家者が在家に行う布施)。[3]無畏施:人々の恐怖や畏れを取り去る救済活動の布施。他には他者の施しを見て随喜することなども布施とされる。

2)持戒(じかい)波羅蜜:戒律の遵守。主に十善戒を守ることだが、利他を強調する大乗仏教では四無量心の実践も持戒とされる。八正道の正語・正業・正命に相当。

3)忍辱(にんにく)波羅蜜:他者からの攻撃・迫害に決して「怒らないこと」、病苦や災害の苦を耐え忍ぶこと、真理を観察して世間の有様に心を動揺させないこと。

4)精進(しょうじん)波羅蜜:八正道の正精進に相当。

5)禅定(ぜんじょう)波羅蜜:八正道の正定・正念に相当。

6)智慧(ちえ)波羅蜜:智慧を音写して、般若(はんにゃ)波羅蜜とも言う。ブッダの智慧(一切種智)の完成。八正道の正見・正思惟に相当。

ちなみに日本仏教に大きな影響を与えた『大乗起信論』では、六波羅蜜の1)~4)を[1]施門、[2]戒門、[3]忍門、[4]進門とした上で、5)と6)は[5]止観門にまとめた行道を説く。5)禅定波羅蜜を止(定=集中瞑想)、6)智慧波羅蜜を観(念=観察瞑想)とする解釈であろう。

※『総図解 よくわかる 仏教』(2011,新人物往来社)に寄稿した原稿を再編集して掲載していきます。

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