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今日のジャズ: 7月14日、1986年@モントルー

July 14, 1986 “In a Sentimental Mood”
by Michel Petrucciani & Jim Hall at Montreux Jazz Festival for Blue Note (Power of Three)

7月13日紹介曲のまさに翌日、同じ欧州スイスのモントルージャズフェスティバルからの一曲。毎年恒例この季節に大勢のミュージシャンが公演を行う。その流れで通常ではあり得ない特別な組み合わせの演奏が組まれて一つの見ものとなっている。

モントルーはレマン湖の東岸に位置する仏語圏

ここではデュークエリントン作曲のスタンダードを、ギターのジムホールとピアノのペトルチアーニがデュオで演奏する。デュオが得意で多作なジムホールとペトルチアーニの中でも、本演奏は個人的には最上位レベルの名演と位置付ける。

ペトルチアーニは、父親がジャズギタリストであり、二人のデュオ作品もあるように、特にギターとの間合いの取り方を心得ていることもあるだろう。一方のジムホールは、4月に紹介した孤高のピアニスト、ビルエバンスとのデュオで緊張感みなぎる、がっぷり四つの対峙型の演奏を披露したように百戦錬磨。

ペトルチアーニは父親によるスパルタ教育の産物

この二人の一流インプロバイザーの息が合うと、ここまで原曲を活かしつつ発展的に解釈した、心を打つ演奏ができるのものかと感服する。

本演奏もライブ映像があるので、6月30日紹介曲同様に取り上げてみたが、その映像を見ると、二人とも大半の部分において目を瞑って相手の演奏を傾聴しながらソロを展開している事が分かる。

ホールに融和して音楽を紡ぎ上げていくペトルチアーニのアプローチが、ホールの甘いトーンと優しさに融合して素晴らしい。ペトルチアーニは、敬愛するエバンスと共演したホールと同じデュオで、こよなく愛するエリントンの曲を演奏していることに心が躍っていることは違いない。ペトルチアーニは、ソロ演奏が得意で多数のアルバムがあるが、その内の1枚は、エリントン作品集で本曲も含まれている。

それは、二人のソロを経て、上記の映像の6:34からのホールのフレーズをペトルチアーニが後追いするような演奏でお互いが絡みつつ共同作業的にクライマックスを創り上げていく展開に顕著に現れている。

タイムラグがあるものの、オーディオ的には6月15-17日紹介曲と比較するとレーベルによる音質の特性が分かり、濃厚集中型のブルーノートに対して、ダイナミックに音幅とレンジの広い本作のドレフュスで同じペトルチアーニの印象が大きく変わっている。ピアノの音色はスタインウェイらしく、どちらも張りと重厚な響きがあり、ペトルチアーニの力強い指捌きとの相性も良い。

この映像のステージの背景に、何処かで見た事があるキャラクターがあると思って調べたら、あのキースへリングの手による人型だった。そして、この年、フェスティバル20周年記念のポスターは、なんとそのヘリングとあのアンディウォーホルによる豪華な特注共同作品だった。

左下ウォーホル、右下にヘリングのサインがある

その節目ということもあってか、出演者もマイルス、クラプトン、ジョージベンソン等の大物が参加してライブ録音を遺している。

ドラムはフィルコリンズ

さて、本作品のベンチマークとなっていると推測するホールとエバンスのデュオ作品はこちら。

演奏の映像に興味を持たれた方は、リラックスした環境でのこちらの演奏の映像もどうぞ。

最後に、ペトルチアーニのドレフュス作品、ジャズバイオリンの巨匠との共演はこちらからどうぞ。

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