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ジャズ記念日: 9月17日、1962年@ニューヨーク

Sep. 17, 1962 “Caravan”
by Duke Ellington, Charles Mingus & Max Roach at Sound Makers Studio, NYC for United Artists (Money Jungle)

1962年9月シリーズ第三弾。本作の直後に予定されていた、飛ぶ鳥を落とす勢いのコルトレーンとの共演を見据えていたのか、公爵エリントン、63才にして血気盛んな世代違いの有能な若手ミュージシャンと組み、自作の名曲をスタジオでトリオ録音した。

いつもしかめっ面で怒っているようなブイブイと力強いミンガス(当時40歳)のベースと、6月22日紹介曲(以下)で、カリプソ調のドラムを陽気にユーモラスに叩いていたのとは別人のように、公民権運動に精を出して戦う姿勢を打ち出していたシリアスなローチ(当時38歳)という、モダンジャズの巨人が闘志をむき出しにして大巨人のデュークと丁々発止にやり合うのだから本アルバムは聴き所の多い大傑作と言える。

どういう経緯でこんな格闘技の肉弾戦のような凄まじい演奏になったか知る由もないが、若手二人が挑発モードで演奏を始めても怯まずに横綱相撲のように受け止めて対峙、それ以上の迫力で押し返すエリントン。ここでは若手に触発された、というよりも自らを鼓舞して意図的に若手を煽るような力強いタッチ。

結果、三人が演奏に何かをぶつけるような怒りモードで化学反応を起こして、音楽だけではなく楽器まで壊れてしまうようなヒヤヒヤ、スレスレ感があって、それが何度聴いても飽きない理由になっている。49秒目からトリオが疾走して59秒目からのドラムに合わせて階段から転がり落ちていくようなエリントンによる鍵盤を叩き付けるように繰り出されるメロディーがドラマティック。

エリントンは若手に、年配だからといって遠慮せずに自分の個性を思う存分表現しなさい、という事を教えたかったのかもしれない。結果、エリントンも若手からの刺激を吸収して、ジャズ史上屈指の過激で刺激的な演奏が生まれた。

エリントンが、若いのもなかなかやるじゃねえか、と嬉しそうに、三者拮抗の乱打戦のように攻めに徹して激しく鍵盤を叩く姿が思い浮かぶ。

エリントンは、この直後に控えていた、コルトレーンとの共演に備えて若手と前哨戦を交えた結果、本作が生まれたのでは無いか、とも勝手ながら推測する。

本アルバムには、本曲を始めとするエリントンによるスタンダード曲が複数含まれていて、且つ複数バージョンが聴き比べ出来るのも嬉しい。

収録中に、あんな奴とは演奏出来ないとミンガスがローチを非難して、その場を去ったので、連れ戻したというエリントンの回想や、そのミンガスとローチが収録後に、エリントンとの共演を祝してバーで美酒のウイスキーを味わったというローチ談が残されているが、こんな緊張感のある稀代の演奏だから何があってもおかしくは無いよな、という納得感がある。

ミンガスとローチはモダンジャズの開祖、
チャーリーパーカーとの共演歴もある巨人

さて、男爵エリントンが公爵ベイシーと遺した貴重な共演作品は、こちらをどうぞ。

エリントン作曲作品の、ナット「キング」コールによる演奏は、こちらからどうぞ。

最後に、エリントン作品の”In a Sentimental Mood”のピアノとギターのデュオによる名演はこちらをどうぞ。

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