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ジャズ記念日: 9月22日、1957年@ニュージャージーRVG

Sep. 22, 1957 “Asiatic Raes” aka “Lotus Blossom” by Sonny Rollins, Wynton Kelly, Doug Watkins and Philly Joe Jones at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ for Blue Note (Newk’s Time)

ドラムのフィリージョージョーンズが、いつも以上に力強くダイナミズムに溢れた演奏をするのが特徴的で、それはアーティストに敬意を評して、その意向と個性を活かすレーベル、ブルーノートと本作のリーダーであるテナーサックスのソニーロリンズの意向が交錯して生まれたものと思われる。

その象徴として、冒頭がフィリーのダイナミズムに溢れるドラム捌きから始まる事と、約80秒もの長いドラムソロが与えられている点が挙げられる。ロリンズの信頼の上に、本演奏では特にフィリーを前面に推し出したいという意思が理解できる。

その意図を汲んだフィリーの熱い演奏を受けてか、ロリンズは、まさにアルバムジャケットの風貌のようにハードボイルドな演奏を繰り広げる。そのブローの力強さが数多あるロリンズの録音の中でも指折りなのは、相性の良いフィリーに触発されてのもので、ロリンズにとってはイメージ通りの作品に仕上がったはず。

ブルーノート特有の中音域寄りの特性において、奥行き感のあるドラムセットの中で、左側から象徴的に叩き出されるシンバルの「キンキン、カンカン」を如何に響かせられるのか、が本曲のオーディオ的な面白さ。音場を狭めてまで凝縮された音作りをするのがブルーノートとルディバンゲルダー(RVG)の凄みで、それはロリンズの太いテナーがブリブリとスピーカーを割って出て来るのではないか、との印象を受けるほどの濃厚度からも味わえる。

それと好対照なのが、本作半年前に制作された以下のコンテンポラリーレーベル作品。ユーモアに溢れる、フラットでワイドレンジな西海岸録音で、本作とは別人のようなカラッとしたロリンズの名演が聴ける。更に11月にも登場する予定だが、この年のロリンズは神がかっている。

さて、演奏に話を戻すと、1:20から1:35にかけてロリンズが、バッパーパッパーパッパーと、お得意の、誰が名付けたか分からないが言い得て妙な「モールス信号」を入れて間合いを整え、モードをチェンジしてからバンドが疾走し始めた後のジェットコースターのように予期せぬ展開を見せるのがロリンズの典型的な奇想天外さ。それは、以下の紹介曲でも記録されている(4:07あたり、因みにベースは本曲と同じダグワトキンス)。

この突っ走る二人に立ち向かうピアノもベースも肉体勝負で挑んでいるが、それでも置いていかれそうなハラハラ感も本演奏の面白さ。

ロリンズとフィリーには、前年にコルトレーンを交えた共演作もある。

上記作品だけを聴くとフィリーとの相性では、コルトレーンよりもロリンズに軍配が上がって、それもあってか本作で起用されたと考える。コルトレーンにもフィリーを交えた名盤”Blue Train”があるのだが。

本作では、ロリンズとフィリーのデュオによるスタンダード曲、”The Surrey With The Fringe On Top(飾りのついた四輪馬車)”の演奏と、”Blues For Philly Joe”というフィリーを題材とした曲があることから、ロリンズに気に入られたのは明白で、アルバム名にロリンズに並列で名前が入ってもおかしく無いレベル。マイルスも含めて数あるトップジャズ奏者に気に入られたフィリーのビルエバンスとの演奏はこちらからどうぞ。

話を戻して、本曲の作曲はトランペット演奏者のケニードーハムで、曲名は別名「蓮の花(ロータスブロッサム)」ブロッサムと言えば、こちらのブロッサムディアリーの九月の演奏もどうぞ。

最後に本作と同じドーハムによる、もう一つのジャズスタンダード曲「ブルーボッサ」の、本人を交えた痺れる名演は、こちらをどうぞ。

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