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ジャズ記念日(祝60周年): 12月18日、1963年@ニューヨーク

Dec. 18, 1963 “Santa Claus Is Coming to Town” by Bill Evans, Gary Peacock & Paul Motian at Webster Hall, NYC for Verve (Trio 64)

1934年にヒットしたことでポピュラーソングとなった、このクリスマスソングを、ビルエバンスは、生涯に渡って何度か録音しているが、ホリデーシーズンらしく、クリスマスに関連した当時のレギュラートリオによる演奏。Trio 64とあるが、リリースされたのが1964年で録音は1963年。

1963年の12月と聞いて思い出すのが、フォーシーズンズによる名曲”December, 1963 (Oh, What a Night)”。元々は”December 5, 1933”という名前で、14年間施行されていた禁酒法の終焉日を扱った歌だったが、青春をノスタルジックに思い出す、という内容に変えられて付いた名前だそう。

話を演奏に戻すと、エバンスによる崩し気味で前のめりなメロディーでリードを取り、ドラムのポールモチアンが独特の変則的なリズムを刻み続けるが、それに左右される事なく、硬派でブレない演奏をするベースのゲイリーピーコックのマイペースさが芯の強さを感じさせてバランスを取りに行くのが良い。

エバンスは、本曲をこれ以外にも、ソロ、ソロの多重録音、そして非公開ながらほろ良い加減的な弾き語りまで記録に残されているので、愛着のある一曲と思われる(以下、同順で掲載)。

本演奏のリズムセクションが、9月16日紹介曲のキースジャレットによるトリオと同じことに気づけば、かなりのジャズ通。キースは若かりし頃にも、この二人との共演歴があって、間違いなくエバンスを意識しての人選だと考えられる。

録音場所は、マンハッタンのイーストビレッジにある、1886年建設のイベントホールで、音響が良いことから、RCAレコードが1953年に買収して、レコーディングスタジオとして活用、数ある録音が残されている。最も有名なのは、買収直後に録音されたエルビスプレスリーの『ハウンドドッグ』。そのウェブスターホールでのエバンスの別作品もご堪能ください(ウェブスターホールについても触れています)。

本演奏では、モチアン独特の間合いで刻まれる「タン、スタタン」というようなテンポのスネアドラムが、この時点で記録されている。ドラムというよりは、パーカッションと形容した方がしっくり来る感じのようなリズム感。エバンスは相変わらずマイペースに演奏を展開して行き、それにピーコックとモチアンが追随する形。

エバンスのトリオによるビレッジバンガードの名盤におけるリズムセクションとの組み合わせとの比較もどうぞ。ピーコックの本演奏でのベースソロで、メロディーの踏み方にスコットラファロの影響が感じ取れる。

そのピーコックの本収録後の活躍は目覚ましい。本作のみならず、短期間ではあるもののマイルスデイビスのバンドに加わり、そのドラマーであるトニーウィリアムスのデビュー作に参加、そしてフリージャズの金字塔の一つ”Spiritual Unity”にも加わって名演を繰り広げている。

1964年7月10日収録
1964年8月21 & 24録音

さて、そんなピーコックの名演に興味のある方は、こちらの名演を音量を上げて聴いてみてください。

最後に、エバンスの別のピアノトリオの勢いのあるビレッジバンガードでのライブ演奏をどうぞ。

Happy Holidays!

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