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ジャズ記念日(祝30周年): 11月18-19日、1993年@ニューヨーク

Nov. 18-19, 1993 “Love For Sale”
by Jacky Terrasson, Ugonna Okegwo & Leon Parker at Clinton Recording Studio “A”, New York for Venus Records (Lover Man)

ジャズ界の育成を主目的としたセロニアスモンクコンペティションの優勝者というと、本作のフランス人ピアニスト、ジャッキーテラソンや、テナーサックスのメインストリームを歩み続けるジョシュアレッドマンがいて、現在でも活躍を続けている。

因みに、レッドマンが優勝した1991年には、同サックス部門に実力者のクリスポッターが、テラソンが優勝した1993年のピアノ部門には後にグラミーウィナーとなるピーターマーチンが参加していたというのだから、そのレベルの高さには驚かされる。結果として、ジャズのメジャーデビューを果たす登竜門の一つになっている。

そんなレベルの高いコンペティションの審査員が気になって調べてみた。1995年のギター部門の審査員の顔触れは、以下。

ジャズギターの父親的存在のジムホール

鬼ピッキングでギターをバリバリ弾き倒すパットマルティノ

もはやギタリストという概念を超越した音楽クリエイター、パットメセニー

加えて、パットメセニーと並ぶ現代ジャズギター界の最前線を開拓するJohn Scofield、そして上記のパットマルティノの記事に登場している若手のMark Whitfieldという豪華な布陣だった。こんな審査員を前にして同じ楽器を演奏するなんて、気が気じゃ無くなりそうだが、優勝したのは、来週に日本公演を予定している、こちら。

偶然のタイミングで宣伝ではありません、、、

因みに、コンペティション自体の流れに沿って、2019年からハービーハンコックコンペティションに名称が変わっている。

話を演奏に移すと、本作は日本のレーベル、ヴィーナスが先見の明でデビューアルバムをプロデュースしたもの。調べてみたら、テラソンが優勝したコンペティションは、1993年11月22日だから、本作はその直前の気合の入った勢いのある演奏が吹き込まれている。

コールポーター作曲の大定番スタンダード曲を、大胆でパーカッシブなアレンジを施して力強い印象を残しつつ、強弱とスピードのメリハリを付けながら、ドラムのレガートに促されるかのようにトリオが疾走していく演奏が心地良い。

ソロは、遊び心に溢れていて、その崩しや揺らぎの出し方は、間違いなくモンクを意識したもので、3:35から典型的なモンク的なフレーズを繰り出して、その後に4:48からモンクと共演歴のあるコルトレーンの「至上の愛」のメロディーが登場している。テラソンは、モンクコンペティションでの演奏を想定していたのか、アドリブのノリで弾いたのか。そして、この勢いそのままにコンペティションで優勝する。さて、どれだけモンクを意識しているのかは、以下紹介曲の冒頭一分を聴くと何となく理解できる。

演奏は、どうしても音量の多いピアノと、それに応える形で随所に瞬発的なリズムを叩き出すドラムに耳が傾くが、そこに引きずられずにウゴナオケーゴのベースに注聴するのが肝。如何にベースが高度な水準で演奏のバランスを取っているか、が分かる。肉体的な真の強い強靭なビートが絶え間なく繰り出されているのだ。

オーディオ的にはレオンパーカーの繰り出すリズム、特にシンバルの鳴りを如何に繊細に鋭く再現するか、とスタインウェイと思われるピアノの響き方が聴きどころ。

録音は、マンハッタンにあった1983年12月にオープンしたクリントンスタジオで、セリーヌディオンやホイットニーヒューストンらも利用した。

2010年6月末にその歴史を終えている

さて、コールポーターによる本スタンダード曲は大定番として多数の演奏家に取り上げられているが、変わった演奏を紹介したい。カナダのプログレッシブロックバンド、Rushの巨匠ドラマー、ニールパートによる五分にわたるドラムソロの締め括りに本曲が登場しているので、ご興味ある方はご覧ください。パートは、ビッグバンドジャズドラマーの最高峰、バディリッチ好きで、そのバンドとトリビュートアルバムを制作していることもあり、取り上げているものと思われる。

最後に、ポピュラー音楽の大作曲家、コールポーター楽曲の演奏をお楽しみください。

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