今日のジャズ: 7月28日、1958年@ニュージャージー&ノースカロライナ州
July 28, 1958 “Blues Walk”
by Lou Donaldson, Herman Foster, Peck Morrison, Dave Bailey & Ray Barretto
at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ for Blue Note (Blues Walk)
アルトサックスのルードナルドソンは、五年前の同日収録曲のモダンジャズの始祖パーカーとほぼ同世代ながら、多いに影響を受けた一人。そのスタイルを踏襲しつつ、パーカーとは異なる90歳で引退するまで息の長い独自の路線を開拓していく。
ソウルに根ざして、ビバップから始まり、ハードバップ、そして新たな領域としての、リズムアンドブルースやファンクとジャズとの融合を展開して息長く新たな音楽ジャンルを築き上げていく。その初期の片鱗が伺えるのが、この曲。
曲名の通り、ブルースのコード進行をジャズ流に仕立て上げる。ここでのアクセントは、6月16日紹介曲にも同じような形で登場しているコンガの名手レイバレット。この頃からジャズ界に登場してラテンジャズの普及と発展に寄与していく。
そのバレットの3:58秒からのドラムの掛け合いが、派手さは無いものの、この曲のハイライトとなっている。
ジャズの聴き方としては、目立たない楽器に耳を澄ますのが多くの場合正解で、ここでは最も地味なベースにノリを合わせると心地良く全体がバランス良く鑑賞できる。
途中から演奏に加わって、ドナルドソンに心憎い相槌を入れ、ゴスペル調のソロを取って盛り上がるピアノのピアノのハーマンフォスターは、13年にわたってドナルドソンに付き添った。演奏からは全く分からないが、盲目で、サイドマンとして掛け合い等で目配せ等の合図が出来ない中でのリーダーの意を汲んだ演奏は、さぞかし息が合っていないと難しいはず。
これらが有機的に化学反応を起こして、熱気による暖かみのある、盛夏に向かう七月後半の東海岸の空気感をまとった黒人の特徴を活かした、ブルーノートの典型的な音質によるソウルフルな一曲となっている。
因みに盲目のピアニストは、スティービーワンダー、レイチャールズといった大物から、ジャズピアニストとしては、レニートリスターノ、ジョージシアリング、ダイアンシューアといった感性に溢れる演奏者がいる。これらのピアニストに共通しているのは、リーダーで、自らのペースで演奏していること。伴奏はリーダーの仕切りに従う事と、他の伴奏者との連携があるから、視覚情報が得られないために難易度が高いという背景があるかもしれない。そんな中で近年伴奏者としても活躍していたのが、ジャズトランペット界を牽引するウィントンマルサリスに起用されたマーカスロバーツ。そのウイントンとロバーツの演奏をご覧ください。
目が見えない事を、感じさせない凄みが演奏にあります。そして、ピアノソロの途中の3:18あたりでウイントンと口頭で演奏に関する確認をしていることも分かります。こういった形で周囲の伴奏者もハンディキャップを心得た自然な立ち振る舞いが素敵です。
さて、ジャズメッセンジャーズでバードパップの誕生に加わったドナルドソンの出身地は、アメリカ南東部のノースカロライナ州。
ドナルドソン同様にモダンジャズ初期から活躍した同州出身の偉大なジャズミュージシャンは多い。先ずはユニークなピアノスタイルと数あるスタンダード曲を排出したセロニアスモンク。
そのモンクとの共演歴のある、テナーサックスの新たな領域を開拓したコルトレーン。ドナルドソンは同郷ながら、「コルトレーンがジャズを殺した」という辛辣な発言を直接耳にしたという逸話をブラッドメルドーが語っているのも興味深い。メルドーはそうではなくて「コルトレーンが、ドナルドソンのジャズを殺した」と言い換えていたが。そんなコルトレーンの演奏はこちらをどうぞ。
更に、数あるジャズの巨人等との演奏を通じてモダンジャズドラムを確立した、本人も巨人ひとり、マックスローチ。
以上の三人は、ロックの殿堂入り歌手のジェームステイラー等と共に、ノースカロライナ州の音楽の殿堂設立時に殿堂入りを果たしている。本曲のドナルドソンも、その三年後に殿堂入りしている。
因みにギターの速弾きスタイルの元祖の一人、タルファーロウも同州出身。まだ殿堂入りは果たしていない。
この面を見ると新たな領域を開拓するタイプが多いように見受けられます。
そんなマックスローチの華麗なドラミングに興味のある方は、こちはをどうぞ。
そして、本作のようなゴスペル調のピアノに関心を持たれた方は、こちらもどうぞ。
最後に、ドナルドソンのファンクジャズに興味を持たれた方は、こちらをどうぞ。
いやぁ、ジャズっていいですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?