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今日のジャズ: 1月21日、1960年@ロサンゼルス

Jan. 21, 1960 “Too Close For Comfort”
by Mel Tormé, Art Pepper, Joe Mondragon, Mel Lewis etc arranged by Marty Paich
at LA for Verve (Mel Tormé Swings Shubert Alley)

名アレンジャー、マーティペイチがビッグバンドを手掛けた編成をバックに名歌手のメルトーメの颯爽とした底抜けに明るい歌声が満喫出来る。アルバム名のシューバートアレイは、マンハッタンのブロードウェイの別称で、本アルバムではミュージカルに関わるスタンダード曲を取り上げている。

トーメは当時、カリフォルニア、イギリス、ラテンといったテーマ別のアルバムを手掛けていて、その一環として本作も登場したものと思われる。

トーメは、一聴しても良く分からないが、底抜けに明るく聴こえる歌声の裏には、実はスキャットの技量、声の強弱やビブラートといった巧みな技術があって、ジャズボーカリストからも一目置かれる存在だったそう。

そして声量がそれ程無かったことを補うべく、口元とマイクの距離まで手で細かくコントロールしていたらしい。それを意識して改めて聴いてみると、オーケストラの楽曲のトーンに合わせた、かなり周到に工夫されたボイスパフォーマンスと分かる。

その歌声をスピーカーの右斜め上から聴こえるドラムの名手、メルルイスの爽快に響くハイハットが導き、中盤では1月19日に登場したアルトサックスのアートペッパーが参加して鮮やかなソロを披露、一糸乱れぬビッグバンドが最後まで飽きさせる事なく展開していくのが心地良い。

録音の質も良く、ビッグバンドの試聴レファレンス曲としても活用できる。録音は同じヴァーヴレーベルで名盤の「エラアンドルイ」やオスカーピーターソンの「ナイトトレイン」を手掛けたヴァルヴァレンティン。多作家の割に名はそれ程には知られていないし、記録も少ないが、これらに共通した高音質な作品からは、相当な技量を伺い知ることが出来る。こちらもヴァレンティンの著名作品。

曲は、サミーデイビスJR主演のミュージカル、”Mr. Wonderful”向けに作曲されてスタンダード化した。記録を探ってみたが、収録はLAという情報のみで、残念ながらスタジオ名までは分からなかった。

その、サミーデイビスJRにご興味を持たれた方は、こちらの紹介曲をどうぞ。

最後に、本作のソロで大きな存在感を示した天才肌ペッパーの1月19日紹介作品はこちらからどうぞ。

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