今月のジャズ: 9月、1984年@スイス/ドイツ
Sep. 1984 “I Hear A Rhapsody”
by Chick Corea, Miroslav Vitous & Roy Haynes at Willisau & Reutlingen, Europe for ECM (Trio Music, Live in Europe)
※左から三つ目の塊の部分で本曲が聞けます
演奏も音も明快でクリアな、コリアによるECMレーベルの本拠地、ドイツとその隣スイス録音で構成されたライブアルバム。
三月紹介の以下ピアノトリオの名盤が長きに渡って反響と余韻を残して、16年の時を経て待望の再結成を果たし、欧州ツアーに出た際の収録。前作では新進気鋭の緊張感みなぎる斬新な、個々が我が道を果てしなくエネルギッシュに突き進むスタイルで登場したが、今回は歳を重ねてリラックスした雰囲気の中で聴かせる円熟した協調的な音楽となった。
トリオの復活には前年にマイルスデイビスバンド時代の盟友でもあり、良きライバルのキースジャレットがスタンダーズのトリオアルバムをリリースした影響があるのかも。
ECMらしく透き通る繊細感とリアリティを重視した録音。コリアの軽快なピアノに付かず離れず、予定調和の範囲内でアドリブを展開する溌剌としたドラムの大家ヘインズと超絶技巧のビトウスのベースによる絶妙な掛け合いが聴きどころ。
本曲では、疾走するコリアの旋律に、特にヘインズのドラムが絡みつくような流れが印象的で、それはピアノとドラムソロのメリハリの効いた掛け合いからも聴き取れる。
この二人に埋もれてしまいがちな、フュージョンの先駆者たるオールスターグループ、ジャコも在籍したウェザーリポートで初代ベーシストを務めたビトウスの演奏もよく耳を傾けるとかなりの腕前で、その繰り出すベースラインを追っていくだけでも面白味がある。
本曲は、1940年に制作されて、翌年には三人の異なる歌手の演奏がトップ10入りする程のヒットを記録したポピュラーソング。マリリンモンローが俳優として初めて前面にクレジットされた1952年の映画、『熱い夜の疼き』にも採用された。
本アルバムの録音場所のドイツのロイトリンゲンとスイスのヴィリザウは、チューリヒを跨いで車で約三時間の距離にある小規模都市。
ヴィリザウは、1975年からジャズフェスティバルを開催していて名物となっている。調べて見ると、当時の記録が残されていて、1984年9月2日に本トリオが記載されているので、本アルバムの一部はその際の録音だと推測出来る。
そもそも本曲がこの会場での録音か確認する術もないが、恐らく普段はクラシック音楽が演奏されるような由緒ある会場でのパフォーマンスと思われる。それは特色のある残響から推測され、演奏後の拍手喝采の響きで確かめられる。それらを活かした鮮明な録音をするのがECMらしい。
さて、ヘインズのキレの良いドラムを更に堪能したい方は、こちらもどうぞ。
ビトウスの味のあるベースを聴きたい方は、こちらをどうぞ。
最後に、コリアの縦横無尽なエレキピアノを堪能したい方は、こちらをどうぞ。
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