見出し画像

今日のジャズ: 6月6日、1975年@ニューヨーク

June 6, 1975 “They Can’t Take That Away from Me” by Zoot Sims, Oscar Peterson, Joe Pass, George Mraz & Grady Tate at RCA Recording Studios, New York City for Pablo (Gershwin Brothers)

元Verveレーベルのオーナーであり、ツアー興行主のノーマングランツが本作の二年前に設立したPabloから同レーベルを代表する演奏者で固められた一枚。

このレーベルは音楽興行とVerveで財を成したオーナーの意向か、奇をてらった作品は少なく、どちらかというと演奏者の組み合わせやライブ録音を楽しむ主旨の作品が多い。著名なミュージシャンを集めて録音して数多くリリースするという、ある種、金持ちの道楽的な志向の作品が多い。

売る為に作りに行く、というよりは、良いと思っているから録音するので良かったら買って的なプロダクトアウトのアプローチ。ミュージシャンは知名度の高い大物が多いし、作品も概ね良作だが、正直なところ当たり外れもあったり、好みが分かれる作品もある。

ブルーノート、リバーサイド、コンテンポラリーといった名門レーベルの創設者同様にグランツもユダヤ人。故に他の創設者同様に黒人に寛容、人種差別には反対の立場を貫いて、黒人の地位向上に寄与した。

このアルバムはガーシュイン作品集という企画で、この作品も大物を一堂に会していて、テナーのズートシムズ、ベースのジョージムラーツ、ギターのジョーパスという白人三名と黒人のピアノのオスカーピーターソンとドラムのグラディテイトというオールスター的に豪華な編成。

全員大人で調和を重視した演奏の中で普段は几帳面で快活なテイトのドラムだけ、意図的にハイハットを開いてロック的なリズムを叩き、ズートが黒人的なスタイルでブリブリとブロー。その結果、風呂上がり感のあるアフターアワーズ的なリラックスした雰囲気が醸し出されていて面白い。

他メンバーの演奏を傾聴して、特に手数の多いピーターソンを相手に出しゃばらずにバランスを取りに行くジョーパスの渋いギターに耳を澄ますと、ズートのテナーの有無や周囲の出方で立ち回り方を自在に変化させるのが、何と大人なことか。

ジムホールも伴奏者を傾聴して立ち回りを変化させるタイプだが、パスの方がよりバランスを取りに行く意識が高いようだ。だからこそボーカルとのデュオ作が多いのかもしれない。

ズートは、ウッディハーマン楽団でスタンゲッツを含めたフォーブラザーズの一人として名を成して、古典的なスイングスタイルの演奏を生涯貫いた。この時代のジャズ衰退期でも、モードジャズやフュージョンにも取り組まず、ここでもブレずにクラシックなジャズをわかり易いメロディとこぶしで朗々と歌って、テクニックに頼るような小難しいことをしない潔さがある。

話は変わって、あのマペットショーに登場するサックスプレイヤーのニックネームは、何とズート。見た目はまるで違うが、テナーサックスでスイングスタイルの演奏をするので、もしかしたらシムズをモチーフにしているのかもしれない。

調べたところ、このマペットのサックス奏者は、ビートルズの傑作「サージェントペパーズ」の”When I am 64”で印象的なベースクラリネットを吹いているフランクレイディという方のよう。

話が脱線しましたが、ガーシュイン作曲作に興味を持たれた方は、こちらもどうぞ。

そして、大人なジョーパスの寄り添う歌伴奏を聴きたい方は、こちらをどうぞ。

最後に、ピーターソンの煌びやかなスタイルの歌伴奏は、こちらでお楽しみください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?