見出し画像

今日のジャズ: 1月28日、1960年@ニューヨーク

Jan. 28, 1960 “Airegin” by Wes Montgomery, Tommy Flanagan, Percy Heath & Albert Heath at Reeves Sound Studios, NYC for Riverside/OJC (THE INCREDIBLE JAZZ GUITAR)

ジャズギターの金字塔とされるアルバムの一曲目。何処に着地するか予測不能なウエスのギターのスリリングな展開。泉が湧き出るかのように絶え間なく次から次へと噴き出すメロディーと、それを支えるテクニックは随一。ギターの音色が太く暖かみがあるのは、太い弦を親指で弾いているから。

作曲は、テナーサックスの大御所、ソニーロリンズで、曲名は”Nigeria”の逆読み。スタンダード曲の逆読みには他に人名の”Nardis”がある。共に名前にゆかりのある旋律や雰囲気がある。

残念なのは録音品質だが、それを超越する凄みがここに捉えられている。1:31から三十秒近くに渡ってウエスの代名詞となった和音のオクターブ奏法が堪能できる。ウエスのギターは勿論の事、ピアノのトミーフラナガンも好演。そのピアノソロの裏で控え目な音量ながら和音でさりげないバッキングを送り出してグルーブさせるウエスはデビュー作にしてキャリアが豊富なこともあって横綱のように受けて立つ優雅な懐の深さがある。

ウエスは速弾きしても頑張っている感や見せびらかし感が微塵も感じられずに余裕があるので、演奏が性急にならない。その技術力と無駄な音を弾かない歌声に満ちたメロディーセンス、間合いのタイム感は天性のもの。

この演奏では、地味ながら息の合った渋い働きをするベースとドラムのヒース兄弟にも耳を凝らしたい。ベースソロ中のウエスとフラナガンの息の合ったシンプルに呼応するバッキングもさりげなくて良い。

ここまで紹介した1960年一月録音は本作で三曲目。如何にこの時期のジャズが充実していたかを象徴している。

そして、リバーサイドレーベルによるReeves Sound Studio録音の組み合わせも、上記1月13-14日紹介曲と以下作品に続いて一月では本作が三曲目。リバーサイドレーベルのオーナーのオリンキープニューズによると、映像用音楽録音スタジオとして利用されていた同スタジオは主に日中に利用されているため、夜間は安価な定額料金で契約できたそう。

マンハッタンに数多あるジャズクラブで演奏した後、良い感じに暖まったジャスメンを深夜に同スタジオで迎入れて録音するという創意工夫もあって頻繁に起用され、リバーサイドの名作が生まれる舞台となった。

セロニアスモンク@Reeves Sound Studio

Aireginの初録音は、作曲者のロリンズ本人が参加するマイルスの作品。ここでも本作と同じベースのパーシーヒースが躍動した演奏を聴かせるので、ご興味がある方はお聴きください。

最後に、ウエスの他の名演奏の紹介記事をどうぞ。どちらも本作同様に素晴らしい出来です。

この記事が参加している募集

#私のプレイリスト

10,581件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?