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ジャズ記念日(祝50周年): 1月7日、1974年@ロンドン

Jan. 7, 1974 “Daydream”
by Al Haig, Gilbert Rovere & Kenny Clark at Olympic Studios, Barns, UK for Spotlite Records (Invitation)

アメリカ白人ピアニスト、アルヘイグによるロンドン録音トリオ作品。ヘイグはパーカー、マイルスデイビスやスタンゲッツと50年代のビバップからハードバップ創世記に共演歴のある実力者。

名盤“Birth of the Cool”セッション
(1949年1月)でのマイルスとの一枚

1968年にジャズ収集家が創設したイギリスのスポットライトレーベルに招かれて、幾つかのアルバムを遺した内の一枚が本作。そのスポットライトは、全盛期のチャーリー・パーカーをはじめとするビバップ・ムーヴメントを主に記録したダイヤルレーベルの復刻と共に、新作を世に送り出した。

1946~47年録音

この作品では、ヘイグは身の引き締まるようなクラシック調の端正で眩いような華麗な演奏を繰り広げる。それは、クラシックのような響き方をするピアノに触発されたように感じられる。全く同じピアノではないかもしれませんが、オリンピックスタジオ内のピアノの写真がありましたのでご覧ください。因みに、このピアノを弾いている人物が分かった人は、かなりの音楽通です。

ローリングストーンズのベーシスト、
ビルワイマン

この演奏では控え目なドラムを展開するケニークラークは、両手両足を分離させることで生まれるオフビートによる多彩なリズムによって演奏に刺激をもたらすスタイルを確立したモダンドラム創始者の一人。後年は欧州に移住してジャズの欧州定着に貢献した。以下、欧州移住ジャズミュージシャンによる名作の一つにも参加している。

フランス人ベーシストのジルベールロベールは欧州移住や欧州訪問ミュージシャン、デュークエリントン、バドパウエル、ソニーロリンズ、マーシャルソラール等との大物との共演歴がある実力者だから、ヘイグにもクラークにも怖気付く事なく堂々とした演奏を繰り広げる。

ロベールと、パウエル、ジョニーグリフィン、ルネトーマ
ロベール、ロリンズとアートテイラー(1965年)

80年代に電化音楽が主流になる中でも、欧州でアコースティックジャズが生きながらえていたのは、こういった欧州移住ミュージシャンと欧州拠点のレーベルの貢献が大きく、何よりも欧州でのファンとその需要が支えていたと考える。

本アルバムの録音はビートルズ、ローリングストーンズやジミヘンドリクスらが度々利用したロンドンの著名なオリンピックスタジオ。時期的には、レッドツェッペリン全盛期の「聖なる館」と「フィジカルグラフィティ」のオーバーダビングが同スタジオで行われており、その間に本作品は位置する。

聖なる館(1973年3月28日発売)
フィジカルグラフィティ(1975年2月24日発売)

さらに掘り下げて調べてみると、本作品と同じ1974年1月にデビットボウイが、同スタジオ内で以下作品をレコーディングしている。

ボウイの作品はオリンピックスタジオの特性を活かした録音ですが、何となくロンドンの冷たい静寂感が本作と通じる共通項と言えるかも知れません。こんな前衛的な作品が創り出されている最中では、純ジャズの存在感を維持する事すら難しく、ジャズが電子化に向かって行ったのは自然な流れなのかも知れません。因みに同年に制作されたエレクトリックジャズの代表作は、以下のハービーハンコックによるファンク系の音楽です。

さて、本アルバムジャケットについて触れると、カバー部分に演奏者、曲名に加えて、ライブ録音ではないのに録音日と録音場所が記載されているのが珍しい。

そして、曲はエリントンの右腕、ビリーストレイホーンの作曲。かの有名なノラジョーンズの”Come Away with Me”のアウトテイクとしても演奏されているので、ご興味ある方は、こちらをどうぞ。

1980年代の欧州レーベルによる欧州録音の純ジャズ、ピアノトリオ作品に興味のある方に、これまでの幾つかの紹介曲をお送りします。純ジャズ不遇の時代でありながら、それを感じさせない名演名盤です。

さて、約一年にわたってお届けした以下企画の最終記事が本作となります。最後までお付き合い、どうも有難うございました。また、これからも宜しくお願いします。

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