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ジャズ記念日: 8月25日、1959年@ファイブスポットNY&デトロイト

August 25, 1959 “Birk’s Works”
by Kenny Burrell, Tina Brooks, Bobby Timmons, Ben Tucker & Art Blakey
at the Five Spot Cafe, New York, for Blue Note (On View at the Five Spot Cafe)q

ビバップ創始者の一人、トランペッターのディジーガレスピー作曲のスタンダード曲で、本アルバムの冒頭曲。

ジャズメッセンジャーズのアートブレイキーとピアノのボビーティモンズが、その全盛期にサイドマンとして登場するという豪華な布陣を従えての、ギターのケニーバレルによるリーダーアルバム。バレルはブルースを土台に、洗練されたギタースタイルと高度なテクニックを併せ持つ万能なプレイヤーとして、ジャンルや演奏者、レーベルを問わず、多数の作品で名演を遺している。

先ず、何と言っても心地良い渋みのあるギターの音色が良い。そのギターとテナーサックスのティナブルックスとのメロディーのユニゾンで口火を切り、バレルの粘り気あるブルージーなソロにティモンズが、コールアンドレスポンスのバッキングで盛り上げる展開。ギターソロではシングルトーンによる、やや後乗りで泣きのフレーズを絡めたシンプルな展開等、随所にバレル節が満載。

ブルックスの気張らずに哀愁漂うソロも好演奏。終始この曲を牛耳っているのは重量級ブレイキーの存在感ある圧力ドラムで、右スピーカーから終始刻まれる、空気圧が伝わるハイハットを始め巧みなドラム全体からリズムの厚みが感じられる。

また同じ右スピーカーにティモンズのピアノが収録されており、この二人を傾聴すると、特にゴスペルを彷彿させるピアノソロあたりで、前年10月30日に二人が参加した名曲「モーニン」を彷彿させる万華鏡的なメロディーや展開が追体験出来る。また、それと類似の演奏はティモンズの本作から約五ヶ月後の以下リーダー作品でも聴き取ることができる。

個人的な好みは、各奏者のソロが終わって一息付いた8:13から四十秒続くバレルによる飾り気のない主旋律を繰り返す演奏。何気なく聴こえるが、この侘び寂びの効いたバレルのトーンと、それをさり気無く支えるこのリズムセクションの演奏のエッセンスが凝縮されている。

その直後の、8:54の一撃からフィナーレを意識してブレイキーが更にドラム全体に圧をかけ始めて、9:13に「ナイアガラ大瀑布」と形容される御大の必殺技を経てフィナーレを迎えるところも楽しめる。

因みに、バレルはアメリカ中西部にあるデトロイトの出身。

デトロイトはミシガン州最大の都市

デトロイトの音楽というと、先ずモータウンレーベルが思い浮かぶ。モータウンは、自動車産業が盛んな街の名を冠した「モーターアンドタウン」の略。その代表格がスティービーワンダー。ダイアナロスやマドンナも、同地に所縁がある。

ジャズミュージシャンでは、ミルトジャクソン、ドナルドバード、アビーリンカーン、ポールチェンバースやバリーハリスなど多数。これまで紹介してきた同地出身者のリーダー作品を挙げると以下の通りで、かなりの数に登る。

先ずは、捉え所のないメロディーを奏でるテナーサックスのジョーヘンダーソン

共演者や曲が何であろうとも分け隔てなく名演を繰り広げるピアノのトミーフラナガンとパワフルで個性的なドラムのエルビンジョーンズ

独特の揺らぎのあるベース、ロンカーター

歯切れの良いハードパップスタイルのアルトサックス奏者、ソニースティット

アーシーなテナーサックス、スタンリータレンタイン

渋みのある演奏が得意なトロンボーンのカーティスフラー。本作は、そのフラーによる5月21日紹介曲の曲名に登場するジャズクラブ、ファイブスポットでのライブ録音。そしてその伴奏は、これまた同郷のフラナガン。

デトロイト出身者は、音楽の嗜好性が個性豊かで括るのは難しいものの、郷土愛が強いのか伴奏者に同地出身者を起用する傾向があるのが特徴かも知れません。

デトロイト繋がりで、同地で収録されたグラントグリーンのギターによるファンクジャズ演奏に興味がある方は、こちらもどうぞ。本作と同じブルーノートレーベルの作品です。

最後に、ケニーバレルの真骨頂を味わいたい方は、ブルーノート屈指の名盤から以下紹介曲も堪能ください。こちらにも同郷のベーシスト、メジャーホーリーが伴奏。そして以下紹介曲には登場していませんが、アルバムには、先のスタンリータレンタインも参加しています。そういえば、バレルのデビュー作品、”Introducing Kenny Burrell (Bluenote}”も、同郷のフラナガンとチェンバースを従えています。

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