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ジャズ記念日: 9月13&15日、1962年@ニューヨーク

Sep. 13 & 15, 1962 “Loads of Love”
by Shirley Horn, Kenny Burrell, Gerry Mulligan, Hank Jones, Milt Hinton, Osie Johnson and others at NYC for Mercury (Loads of Love)

9月7日紹介曲に続く、豊作1962年9月シリーズの第二弾。第一弾から約一週間後の同じニューヨーク録音。レーベルも同じくマーキュリーで、第一弾のクインシージョーンズが本ボーカルのシャーリーホーンと契約にこぎ着けたそう。

ワシントンD.C.出身、マイルスの後押しでニューヨークに進出してデビューしたホーン。ハスキーボイスで「あ」に「゛」が付いているのが歌声の個性。サ行の発音も特徴的で9月12日紹介曲と比較すると白人と黒人の発音の差がよく分かるし、ボーカリストとしての崩し方や間の取り方も、良し悪しではなくて個性として比べると興味深い。

ホーンはその後、ジャズを始めとするアメリカ文化への貢献という功績が認められてホワイトハウスで大統領向けに演奏を披露した実績がある。

演奏に耳を向けると、クインテットのスインギーな流れで始まり、1:10からのオーケストラに拡大する伴奏は期待の表れのような豪華なオールスター布陣を交えてのもの。キレの良いドラムは、ボビーダーリンの名曲『マックザナイフ』(以下)に参加しているオシージョンソン。

主張しないが適度に間合いを取って存在感を示すハンクジョーンズの楽しそうに合いの手を入れるスインギーなピアノが左に、それに対話するかのような間合いで刻まれるケニーバレルの粘るブルージーなギターが右に、助さん角さんのように鎮座して、中心となるボーカルを引き立てて心地良く流れる展開が良い。

ハンクジョーンズの円熟味の溢れるスピリチュアル作品の演奏はこちらをどうぞ。

ケニーバレルのブルースに根ざしたスインギーな演奏はこちらからどうぞ。

オーディオ的には前半のクインテットも、その後のオーケストラも共に録音の質が高く、何よりもホーンの存在、そして口元が目の前に現れるのが絶妙。ジャズクラブのステージが演奏者と共に目に浮かぶレベルに敬服する。

さて、本曲の作曲は数多くのスタンダードを生み出した偉大なミュージカル作曲家のロジャースによるもの。そのロジャースによるスタンダード曲「マイロマンス」の新感覚に溢れる演奏はこちらからどうぞ。

ホーンからは話が脱線しますが、この演奏陣に関わる個人的な話をひとつ。2000年のブルーノート東京に、本演奏に参加しているハンクジョーンズとケニーバレルが、ベースの大御所レイブラウンと共に出演するというので、席を確保して豪華な顔触れを楽しみにしていた。

その公演のチラシ

当日、会場に着くとハンクジョーンズは体調不良で不参加との告知。かなりガッカリしたが、その代役として東京で活動していたジョナサンカッツ(偶然、親友の友達で公演を聴きに行った事があった)の好演もあって満足して帰った記憶がある。そして、ケニーバレルのギターの渋みと深みのある音色が何よりも印象に残ってとても良かった。

心残りとなったハンクジョーンズは、その数年後、シアトルにあるジャズクラブの公演に巡り逢えて念願が叶った。ジョーンズは、その数年後に天に召されたので本当にラッキーだった。

そのブルーノート東京でのカルテットを率いた偉大なレイブラウンによるモダンジャズペースのお手本的な演奏は、こちらをどうぞ。

最後に、その際にドラマーを務めたミッキーローカーによる端正な演奏は、こちらをどうぞ。

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