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ジャズ記念日: 10月10日、1957年@ロサンゼルス

Oct. 10, 1957 “Pennies From Heaven”
by Stan Getz and the Oscar Peterson Trio (Ray Brown, Herb Ellis) at Capitol Recording Studios, CA for Verve (Stan Getz and the Oscar Peterson Trio)

1957年10月のキャピトルレコーディングスタジオ収録作品の第二弾。以下10月8日紹介曲から僅か二日後、スタンゲッツとオスカーピーターソントリオが西海岸で合流して録音した終始気張らずに心地良く、清流の如くに活力みなぎるテンポで進行する上機嫌な演奏。

同年七月に同スタジオでアームストロングと録音したオスカーピーターソンのバンド編成をドラム抜きとして、代わりにハーブエリスのギターがパーカッシブなリズムを刻むのが音楽としてもオーディオ的にも聴きどころ。

ゲッツによる止めどなく溢れ出る明朗なアドリブメロディーを主軸にして、高度ながらさりげなく軽々と追随して変幻自在に演奏していく各伴奏者のアドリブが素晴らしい。

特にゲッツに躍動感を持って寄り添う楽しげなピーターソンのピアノは名人芸の域。サイドマンとして控えめなトーンのピーターソンがちょうど良い塩梅なのだ。

そこにギターが終始さりげないビートを刻み、名手レイブラウンこベースが歩調を合わせてスイングして盛り立てるとなるとゲッツもさぞかし気分良く演奏できただろうし、それがサックスのメロディーを通して伝わってくる。ゲッツが凄いといつも思わせるのは、耳触りの良い滑らかで無理と無駄の無いメロディーが、何の難しさや複雑さを感じさせずに、スラスラと溢れ出てくるところ。

時代背景としては、アメリカ公民権運動における重大事件のひとつである、アーカンソー州で黒人学生が軍の護衛付きで登校を果たした「リトルロック高校事件」が本作収録時の直前に発生している。これらの出来事を受けて1959年、ベーシストのチャールズ・ミンガスはこの事件を揶揄する曲『フォーバス知事の寓話』を含むアルバムを発表して、知事とアイゼンハワー大統領を強く批判した。

軍に警護されながら登校する九人の黒人学生
“Fables Of Faubus”を含む
1959年5月5-12日の録音作品

そんな黒人の人権を軸とする緊張した社会情勢がありながら、本アルバムは、黒人と白人がそれぞれ二人づつという対等な編成によって、そんな状況はどこ吹く風という感じで、和気藹々としたハッピーな雰囲気で終始進行していく。

本曲は、”What’s New”や”Misty”等を手掛けた大作詞家ジョニーバークによる同名の映画のタイトル曲でビンググロスビーが原曲を歌った。

曲名の“Pennies”といって思い起こすのは、実在のコルネット奏者レッド・ニコルズを題材とした映画、”Five Pennies”(5つの銅貨)。コメディアンでもあり歌手でもあるダニーケイが主演を務めて、ルイアームストロングが本人役で登場している。内容は勿論のことジャズも楽しめるのでお勧め映画のひとつ。

日本では当時、文部省選定映画だったそう

さて、バークに興味を持たれた方は、以下紹介曲”Imagination”もご覧ください。歌詞についても僅かながら触れています。

さて、ゲッツはピーターソンとの相性は良いが、エバンスではどうか、とご興味のある方は、こちらをご覧ください。

ブラウンのベースに心惹かれた方は、同時期のこちらの名演もどうぞ。

最後に、ゲッツが名を成したウディハーマン楽団時代の「フォーブラザーズ」の盟友、ズートシムズのアフターアワーズ的な演奏をどうぞ。こちらにもピーターソンが参加しています。

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