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今日のジャズ: 11月6日、1971年@ロサンゼルス

Nov. 6, 1971 “They Long To Be Close to You”
by Carmen McRae, Jimmy Rowles, Joe Pass, Chuck Domanico & Chuck Flores at Donte’s, Los Angeles, CA for Atlantic (The Great American Songbook)

カーメンの西海岸における大定番ライブアルバム。アメリカにおけるポピュラー曲で構成された選曲、カーメンのサポートに徹した、伴奏者によるレベルの高い演奏、その会場に居るような親密感のある状態の良い録音、と三拍子揃った完成度の高い秋の夜長にピッタリの二枚組。

アルバム名”The Great American Songbook”の通り、スタンダードの名曲の演奏が繰り広げられる。これまでに紹介した登場曲は以下の通り。

デュークエリントンの大スタンダード曲"Satin Doll"

Medley: "Easy Living"/"Days of Wine and Roses"/"It's Impossible"ヘンリーマンシーニとジョニーマーサーによる『酒とバラの日々』

コールポーターの“I Get Kick Out of You”『君にこそ心ときめく』

ガーシュイン兄弟による“But Not For Me”

大定番のスタンダード曲、“Body and Soul”

本演奏では、ベースとのデュオから始まり、ドラムが加わり、ギターのジョーパスによるさりげないバッキングが曲調を固め、ピアノのジミーロウルズが粋なアクセントを入れる事で、カーメンを盛り立てる。

そのロウルズは、ライナーノーツで、カーメン自身が、"the guy every girl singer in her right mind would like to work with"と述べているように、女性歌手の歌の伴奏に長けている。その敬意を評してか、本アルバムにはスタンダード曲ではないがロウルズの作品が二曲、含まれている。

加えて、ジョーパスは、本作のカーメン、サラボーン、そしてエラフィッツジェラルドとはデュオで複数枚のアルバムを残しているように、女性ボーカリストとの相性がこの上なく良い。このアルバム内でも、カーメンから、”One and Only, Joe Pass”と最大限の賛辞をもって紹介されている。

ロウルズもパスも、自己主張を控えた「レディファースト」の姿勢を保った伴奏が徹底している上に、音域が重なりがちなピアノとギターの特性を理解した上で、お互いを補完するような、自然体の、かといって容易ではない、耳心地の良いバッキングのコンビネーションが繰り出すところが素晴らしい。熟練した伴奏者に囲まれて、カーメンが気分良く歌った結果、名演・名盤が生まれたと言えそうだ。

演奏の最中、1:50頃の笑い声はカーメンがオリジナルの歌詞の”Gold”「金」から”Brown”「茶」の「髪」に崩したアドリブとその茶目っ気に溢れたジェスチャーに観客が反応したものだろう。

カーメンのボイスコントロールを最初から最後まで存分に味わえる一曲で、それはベースとのユニゾン的なメロディーをなぞるパートと最後のロングトーンで披露されている。

収録場所は、1966年に開業、1988年に閉業したロサンゼルスの名門ジャズクラブ、”Donte’s”。パスは「ギターナイト」という形で長年にわたって定期的に出演していたそう。

如何にも西海岸的な風貌

本曲はバートバカラックが作曲、カーペンターズが歌い、本収録の前年に大ヒットした。この頃にはヒット曲を即座に取り上げる柔軟さがジャズに定着してきていて、本アルバムには同じく前年5月にリリースされたレオンラッセルの名曲『ソングフォーユー』も含まれている。

さて、パスの華麗なギターに興味を持たれた方は、エラとのデュオ演奏をどうぞ。

最後に、ジミーロウルズに興味を持たれた方は、ロウルズが遺した珠玉のスタンダード曲をどうぞ。

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