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今日のジャズ: 1月3-4日、1988年@ニューヨーク

Jan. 3-4, 1988 “Three Little Words”
by Branford Marsalis & Milt Hinton at Astoria Studios, NY for Sony (Trio Jeepy)

年齢差50歳のベースとテナーサックスのデュオ演奏。当時77歳の年齢を感じさせない、ベース奏者のミルトヒントンによる若さに溢れるイキイキとしたリズム、グルーブ感、音量とビート力に驚かされる。何よりも演奏することの喜びが伝わってくるのが、この録音の素晴らしさ。ヒントンは偉大な57人のジャズミュージシャンの集合写真に写っている一人(その写真については以下記事をご参照ください)。

一方、サックスのブランフォードは、当時27歳。ここでは奔放で豪快なソニーロリンズのスタイルで、若くして成熟したプレイを聴かせる。ブランフォードは、この前年にスティングの”Englishman in New York”で、ソプラノサックスを吹き込んでおり、デビットフィンチャー監督による同ミュージックビデオにも登場している。

純ジャズでジャズ界に貢献した弟のウイントンとは、異なるアプローチで、ブランフォードはジャンルを分け隔てせずに活躍してジャズに活性化をもたらした。例えば、スパイクリーの映画”Mo’ Better Blues”(1990年)等のサウンドトラックへの参加。

そして、その後に大手放送局、NBCの老舗深夜番組“The Tonight Show”のバンドリーダーとしても1992-1995年に登場している。

話を演奏に戻すと、録音は音の反響から判断するに、かなり天井が高い空間の印象を受ける。場所はニューヨークのクイーンズにある「グッドフェローズ」(1990年)、「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(1992年)等の撮影スタジオとのクレジット。そんなスタジオの音響特性を活かした録音なのかと推測します。

セサミストリートも本スタジオで制作されている

生音をそのまま捉えたリアルなアコースティック感が、当時の電子楽器最盛期においては、特に斬新で売れ行きも良く、行き過ぎた末の原点回帰のトレンドが生まれ,その後にロックもアコースティック調にシフト、1990年代初頭にエリッククラプトン等で大ブームとなるMTVの「アンプラグド」が生まれる。80年代に主流となった、キンキンとメリハリの効いたデジタル音楽に大半の方の耳が疲れていたのかもしれません。

因みにその流れで、アンプラグドにジャズシンガーとして登場したのが、以下のトニーベネット(1994年4月15日)。

さて、作詞家バートカルマーと作曲家ハリールビーの手による本演奏曲は、1930年にデュークエリントンの伴奏でビングクロスビーを含むリズムボーイズがヒットさせた。オリジナルのビングクロスビーのバージョンはこちら。

そして二十年後の1950年に公開された、フレッドアステア主演の、ティンパンアレイを題材としたカルマーとルビーの伝記映画『土曜は貴方に』でも取り上げられた。そのアステアのバージョンはこちら。二十年を経てかなり洗練されているように感じます。

さて、本演奏の発売レーベルは弟のウィントンと同じくソニー。発売当初はLP、CDとカセットテープで販売された。因みにカセットテープは、1980年代前半にLPの販売を凌ぎ、1990年代前半にCDにとって変わられるまで、約10年間にわたって主流パッケージメディアとなった。以下、本アルバムのカセットテープ版の写真。懐かしいですね。

カセットテープの売上が近年回復しているそう

そして、アコースティックジャズ回帰のトレンドを牽引した弟のウイントンとパッケージメディアとしてのCDに興味がある方は、以下の記事をどうぞ。奔放で豪快なブランフォードとは好対照に、緻密で計算されたような演奏が印象的です。

最後に、ヒントンのベースに興味がある方は、こちらの演奏もどうぞ。先の57人のジャズミュージシャンの中から、ヒントンを含めた三人が加わっています。

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