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民放地方局こそが公共放送である

 "公共放送"と言われると真っ先に何を思い浮かべるか?
  もちろんNHKですよね。
   ただ、地方に住んでいる私からすると、地方における公共放送はNHKではなく民放なのではないかと思うことがあります。

 なんなら、NHKでも民放地方局でも働いていた私からすると、NHKが「地域の情報発信を強化!」とうたっているのに違和感もあります。
 いや、あなたたち本当に地方のこと考えてますか、と。

 今回は、そう思った理由を述べていきます。


1.記者やディレクターの目線が違う

 そもそもNHKは全国組織地方局は都道府県単位の組織です。
 そのため、NHKの取材陣は全国を転々と異動します。地方に赴任してから3〜5年くらい経つと、東京をはじめ別の地域へ転勤していくわけです。なかには1〜2年で異動する人も居ます。
 一方で、地方局は部署の配置転換こそあれど、住む地域は一部の職種を除いて、ずっと動くことはないです。
 
そのため、NHKの職員が勤務地を仮住まいと考えているのに対して、地方局の職員は勤務地が地元になるわけです。
その時点で、思い入れは違いますよね。

 ときには継続取材が必要となる事件や災害などが地方で起きますが、異動が前提のNHK職員は一部の熱意ある人を除いて、やっつけ案件になりやすいです。
  民放の間では「NHKが取材した後は草木も残らない」と言われていて、被災地などで継続報道を考えてないような記者が現場を荒らしていく…というのは、よく聞く話のひとつです。

 また、NHKの人達は「東京至上主義」です。
 地方の放送枠より全国放送の方が"偉い"と考えていて、そこを目指すように指導されます。
 言ってしまえば、地方の放送を軽視しており、彼らにとって地方の放送は練習台であり"本番"じゃないわけです。

 NHKスペシャルやクローズアップ現代など東京の番組を模したテイストで番組を作ることが多く、あくまで東京で番組を作るための修行期間として地方の勤務があるわけです。

 そうした意識で地方の番組を捉えているため、住んでる地域を本気で盛り上げよう、という気概を持って仕事にあたる人はとても珍しい存在です。

  一方、地方局の記者やディレクターは、ずっとその土地で住んでいくわけですから、地域の人々との関係性を長く保てるよう丁寧に接します。
 また、その地域の出身者や縁のある人が入社するため、地域に詳しく、情報の取捨選択もより地元民にあわせたものを選びやすいです。

 組織の構造的に、その地方に必要な情報を地元目線で届けることが出来るのは、 地方テレビ局となるわけです。

2.レジャー情報を流せない

 前の話にもつながることですが、ニュースや情報番組の内容が地方局の方がよりきめ細やかです。
 小さな事件や事故なども地方局はニュースにする一方で、NHKは人が死亡するような事件じゃないと扱いません。

 情報の細かさでいうと、地方局より地方紙のほうが圧倒的に細かく、密なネットワークを作っていますが、放送局のなかでは地方局もかなり情報が集まる方です。

また、NHKは宣伝につながるような内容が出せないことから、新たに出店した飲食店やレジャー施設の紹介ができません。

 地方では、こうした情報が休みの日の楽しみを増やすことにもつながるため、地方局は積極的にレジャー情報も発信しています。

 しかし、NHKは、そうした情報発信に貢献できません。地方の歴史や社会課題を伝える番組はありますが、地元民がそうした情報ばかりを必要としているわけではありません。果たして地元民が必要な情報を満遍なく届けられているのはどちらでしょうか。

3.地方経済を回しているか

 NHKと民放の大きな違いは、CMが有るか無いかですよね。
 NHKがCMが無いのに対して、地方局はスポンサーがいてCMを流しています。

 テレビを見ている側にとっては煩わしいCMですが、地方の経済を回すことに繋がっています。

 地方には、全国では知られてなくても、多くの企業が存在しています。
 そうした企業がCMでプローモーションを仕掛け、認知度を高めたり、売上を伸ばしたりすることで、企業が成長するとともに、地方にお金が落とされ、地域経済も成長します。
 
地方テレビ局は、そうした企業の成長をお手伝いできるわけです。

 一方、NHKは企業名を放送内で言ってはいけないという制約があるくらい、企業との付き合いは慎重です。
  地方企業はもちろん個人事業主まで、利益につながることのないよう放送内容に気を配らなければいけません。

 私は、これに疑問を感じていて、公共放送という観点でいうなら、NHKは公共の利益の最大化を目指すためにも企業と連携を取っていくべきだと思います。

 働く場があるから人が住み着くことを考えると、企業が街を作っているとも言えます。
 それなら、地方企業とタイアップするような企画を起こして、街を活性化するということをNHKがやってもいいと思うわけです。

 しかし、NHKはそれができない。特定の地方企業と繋がることに及び腰なわけです。
 それなのになぜか、「みんなが名前を知っている企業だから放送で名前が出ても影響ない」として大企業の名前は放送することもあるくらいです。
 既得権益の大企業の名前は放送できて、地方を創成している地方企業の名前は放送できない。
 こんなことは、おかしいんじゃないかと思うわけです。

 それなら、広告費目的だとしても、スポンサー企業と連携して、企業を元気にして経済を回し、地方に金を落として、地方の人たちを元気にすることができる民放地方局の方が公共的な使命を果たしてるのでは…と思います。

おわりに・・・

 地方にとっての公共放送は地方局だと思う理由が分かってもらえたでしょうか。

 もちろん、NHKも地方のためを思って仕事をしている人はたくさんいると思います。
 
 しかし、組織の構造上、民放と比べると、本当に地方を第一に考えて行動しているとは言えないのでは無いか、と思った次第でした。


 

  


  
   

 

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