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10年ぶりに「インセプション」を、4DXで鑑賞して、気づいたこと

公開が待ち遠しすぎて観るまでは死ねないクリストファー・ノーラン監督の最新作「TENET テネット」。この公開に先駆けて、監督の過去作が全国公開されている。筆者の人生史に残る金字塔「ダークナイト」、そして先日「インセプション」を、劇場で鑑賞した。


「インセプション」の公開が2010年なので、初公開からすでに10年も経過していることになる。もうそんなに経つのかと思いながら、今回ははじめて4DXでの上映が組まれているとのこと!4DXって、座席がグラグラ揺れたり、風が出たり、水がかかったり、匂いが出たりするやつ。アトラクション料金で+1,000円もかかる。悩む。けれど、「インセプション」の代名詞でもあるアノ無重力シーンは、どう体感できるのか!?それだけを目当てに、奮発して4DXで観ることにした。これは自宅じゃあ得られない体験だからな!そしてどうせなら最上の設備で期待の持てるグランドシネマサンシャイン(池袋)へと足を運んだ。

グランドシネマサンシャインは、2019年にオープンした都内最大級の超大型シネコンだ。

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ク、クレイジーリッチとはまさにこのこと!!豪華絢爛!弥が上にも期待が高まる。そして148分間の<革命的映像体験>は幕を開けたのだった。
結論、4DXで観る価値は、、、

、、、正直、画面への没入感は削がれます。土砂降りのシーンで、座席上から2,3滴の水滴を落とされてもなぁ。。爆破のシーンで、爆風のかわりにフワフワ温風がそよいできてもなぁ。かえって興が冷める気もする。観客全員が期待したであろう、無重力のシーンも、、、うーーーん。。

上映前の「4DXデモンストレーション」の時が一番、設備の本領発揮されてたわ。上映中ずっとこんな調子で揺れ続けたら酔うわ!鑑賞どころじゃないわ!と思ったけれど、本編中のアトラクション感は、控えめでしたもの。

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<以下、若干のネタバレを含みます>

主人公コブ(レオナルド・ディカプリオ)は妻殺しの容疑をかけられ、海外に亡命している。唯一の願いは、母国へ戻り、「家へ帰る」こと。その家には、愛する2人の子供が待っている。

そんなコブが何度も思い出すのは、かつて亡命を決めた日の、自宅での光景だ。

庭で子供2人が遊んでいる。向こう側を向いていて、顔は見えない。最後に一目、子供たちの顔を見たいと願うのに、誰かに呼ばれた子供たちは向こうへ行ってしまい、出国の手筈を整えた男に急かされる様に、コブはそのまま家を後にする。子供たちの顔を見られなかった後悔が、終始コブに付きまとう。

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10年ぶりに鑑賞して、印象に残ったのは、この設定なのだった。


そう、この10年で筆者も父親となり、以前では理解し得なかったこの父親の、心情の機敏に、ウルっときてしまったのだ。
(そしてこの2人の子供の後ろ姿は、写真家ユージン・スミスの代表作「楽園への歩み」と重なって見えたのだった)


わが家の日常を想う。
朝、妻子が車に乗って出かける際。
「もしかしたらもう会えないかもしれない」と、じつは毎朝思う。
同じく自分が出かけるときも、「もう帰ってこれないかもしれない」と毎回思う。いつからだろうか。コロナ禍以降、顕著な気がする。

毎日をめそめそ生きている訳じゃないんだけどね。
不確実な現代の「よるべなさ」をどこかで感じているのかもしれないし、以前より自分自身が、刹那主義になってきたのかもしれない。

ひとり出かけるときには、妻と子供の顔をちゃんと見て、出かけたい。ひいては、一緒に時間を過ごしている時だって、ちゃんと顔を見て話をしたいなと思う。後ろ姿で「ながら」に会話するのではなく。寝顔も、何気ない日常の光景も、すべてを慈しみたい。

こういう感情の変化って、何なんだろうなあ。10年歳を重ねた分、考え方が経年変化したのか。

まさか、革命的映像体験をうたう「インセプション」をスクリーンで鑑賞した結果、家族への愛着を強く再確認させられるだなんて、思ってもみなかったんだけどな。



<了>



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