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自慢の相棒ねこ

小学5年生のとき、家にやってきた猫が先月旅立った。19歳6ヶ月だった。
母がコタローと名付けようとしたが、きりりとした端正な顔立ちとあまりにかけ離れていたので猛反対したのを覚えている。
家にやってきた瞬間からやんちゃな男の子で、じゃれてる流れで腕に噛みつきながら超高速で蹴り蹴り。なので命名キック。
とにかくどんな瞬間もハンサムで、鈴を転がすような声が可愛い。
一人っ子の私にとって、兄弟のような、親友のような、師匠のようなとにかくかけがえのない存在になった。

△お腹を空かせて迎えにくる

部活の練習で4時半に起きていた頃、受験勉強で早起きしなければいけない朝、仕事に行きたくなくて布団からなかなか出られない時も、いつもアラームと同時に起こしにきてくれる目覚まし猫。
抱っこは嫌いだし、ブラシをするとも怒るし、後輩猫がやってきた時は牙を剥き出して威嚇。幾度となく脱走を繰り返す暴れん坊。
だけど私が悲しくて泣いているときはそっとそばに近寄ってきてくれる。
ただ近くにいてくれるだけでその存在に何度救われたかわからない。

△お風呂場で水遊びするのが趣味

2年半前に目が見えなくなっても、それをものともせず階段を上り下りし、ベランダで風を感じる姿に、ああなんて強い子なんだろうと生きる希望をもらった。
気高く、ちょっと厄介な性格でもあったが、歳を重ねるごとに穏やかな表情に。
最初はあんなに牽制していた後輩猫たちにも次第に柔らかく接するようになり先輩風を吹かせていた。

△初めて後輩猫と対面した日

大好きな祖母が去年亡くなり、骨になって家に戻ってきた時は、なにかを察したのか真っ先に駆け寄ってきて目が見えないのに背伸びして骨袋の匂いを嗅ぎ、しばらくそばに。
その姿を見て全身がぎゅっと熱くなった。
私は祖母の仏壇の前で、キックが今日も元気にご飯を食べて何事もなく過ごせるようと祈るのが日課になった。

△朝起こしに来て顔を叩いたり首の上に座って寝たり

さすがにご長寿なので、だんだんと足元がおぼつかなくなり、寝ている時間が増え、顔つきもどことなくおじいちゃんに。ご飯は美味しそうに食べるが少しずつ痩せてきた。
3月頭、急に歩けなくなりさらに細くなった。私も寝床をリビングに移し何かあった時いつでも動けるように備えた。
あんなに抱っこが嫌いだったのに、腕の中でも大人しく眠るようになった。

いよいよ呼吸の仕方が変わってきた早朝、仕事を休みたいと連絡。猫の具合が悪いという理由で快く願いを聞いてもらえる時代と職場で良かったと思った。
今日もずっとそばにいるからね、と話しかけてすぐ、キックは私の腕の中で息を引き取った。ちゃんと家族がみんなそばにいるときをわかって旅立つ時を決めたのだろう。賢い子だね。
運良く友人から丁寧な葬儀屋さんを教えてもらえてその日のうちに火葬まで執り行うことができた。
おじいちゃんとは思えないほどしっかりとした骨で、特に喉仏は素晴らしく綺麗だった。本当にどこまでもハンサム。

ただやはり気持ちが追いつかない。
いつも視界の片隅にいたのに、どこを見てもいない。朝も起こしに来てくれない。お風呂場を早く開けてと催促する声もしない。
ちゅーるのCMが流れるだけで大号泣。
何を食べても味がしない。何も美味しくないので、普段好まないカップラーメンを買った。
一応いい大人なので辛うじて仕事には行くが、休みの日は何も気力が起きない。
スマホを開くと必ず現れるキックの姿を見ては胸が締め付けられる。
クリクリした瞳、ピンと立った大きな耳、マフラーと手袋をつけているように首元と手足だけ白い毛、ぷにぷにピンクの肉球、甘えた声。ふわりとした柔らかくて温かい愛しい存在がもうここにはいない。
ひと月経ってもずっと心にぽっかり穴があいたまま。私の時はキックが亡くなったところで止まってしまったようだ。

長い文章は苦手で、1,000字以上言葉を綴るのは大学のレポート以来なのではと疑うくらいだが、つぶやきでも複数枚写真の投稿でも気持ちをぶつけることはできないと思い文字に起こしてみることにした。

△この距離感も許すようになる成長ぶり👏

今日は重い腰を上げて桜を見に行った。自分が立ち止まっている間に季節が変わっていることを知る。
この悲しみはいつまでも続いていくかもしれないけれど、長生きしてくれた分思い出がたくさんある。いっぱい遊んで、おしゃべりもして、色々なことを教えてくれたし、毎日振り返ってもいいんだと思う。
これからもキックはずっと私の相棒で愛してやまない存在。
久しぶりにご飯を作り美味しく食べることができた。
ようやく半歩くらい進めたのかもしれない。
たまには夢に出てきてね!
今までありがとう。これからも大好きだよ!!!

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